廻天のアルバス

本作は、勇者のアルバスと平凡な僧侶の少女、フィオナ・ユミールが魔王討伐の旅を繰り広げるタイムループ・ファンタジー。世界の時間を巻き戻す魔法「廻天(リヴォルヴ)」を使えるアルバスは、魔王討伐の旅を何度も経験し、その記憶を引き継いでいる。彼は「ある理由」から、魔王を最速で討伐することを目指しており、旅の途中で無駄を省いたさまざまな行動が荒唐無稽かつコミカルに描かれる。必須イベントを効率的にこなし、まるでルールの抜け穴を探すかのように重要アイテムを手に入れていく様子は、現実のゲームにおけるRTA(リアルタイムアタック)のように楽しめる。また、アルバスは過去のループで親しくなった仲間や人々にその記憶を覚えられておらず、自分だけが思い出を抱えるという悲壮感が対比的に描かれ、物語に深い重みを与えている。

アルバスが使用する終極次元魔法「廻天(リヴォルヴ)」は、彼自身を「旅立ちの日」に戻すのではなく、世界の時間そのものを巻き戻して再構築する魔法である。かつて歴代の勇者たちもこの魔法を授かり、魔王に挑んで討伐してきた。しかし、強大な力を持つ魔王は、勇者に倒されても百数十年後に復活することを繰り返してきた。アルバスもまた魔王を倒すためにこの魔法を使っているが、ほかの勇者とは異なり、彼はすでに何度も魔王討伐に成功している。それにもかかわらず、アルバスは誰もが幸福な結末を迎える「完璧な未来」を求め、最適解の旅に挑戦し続けている。これには「ある目的」が大きくかかわっており、物語の重要な要素となっている。

アルバスの旅には、フィオナだけでなく、さまざまな仲間が加わる。どんな逆境も「試練」として笑い飛ばす、ポジティブな狂戦士のラウロ・リベリオ。魔法学院で「100年に一人の天才」と称されながらも、極度に金に執着する異端児のジーナ・グレイシス。貧民街で育ち、盗賊団の参謀を務めていた冷静沈着な盗賊のトコ・ルーシッド。アルバスはこれまでのループの中で、彼らを含む多くの仲間と共に旅をしてきたが、時間が巻き戻るたびにすべてを失ってきた。しかし、世界の時間を巻き戻す魔法「廻天(リヴォルヴ)」の不具合により、彼らは断片的に記憶を保持するようになり、これまでとは異なる行動を取り始める。そして、アルバスはかつての旅のように「ある目的」を果たすために仲間を集め始める。