恋するリップ・ティント

恋愛にあこがれる女子高校生のあこは、不慣れなリップメイクのせいで、同じ学校の先輩、遥巳のシャツにキスマークをつけてしまう。このハプニングをきっかけに、あこは遥巳と友達になろうと奮闘するが、筋金入りの女嫌いである遥巳は、まったく彼女を相手にしない。それでも、ひたむきに思いを伝え続けるあこの一途な姿に、遥巳は少しずつ心を開いていく。やがて念願叶って友達になったものの、あこの胸には初めての恋心が芽生えていた。この気持ちを伝えたら、すべてが終わってしまうのではないかと悩みながらも、あこの恋はますます加速していく。

あこは、明るく元気な性格の持ち主。メイクやファッションにはあまり詳しくなく、親友からプレゼントされたリップ・ティントの使い方すら分からないほど。思い込みが強い一面もあるが、自分の非に気づくと素直に謝る純粋さも持ち合わせている。一方、遥巳はあこの1学年上の先輩。実家が経営する美容室の宣伝動画がSNSで100万回以上再生され、本人の意志とは裏腹に「超絶イケメン」として注目を浴びるようになる。しかし、その人気ゆえに過激なファンに付きまとわれ、周囲の人々まで危険な目に遭った過去があり、他人と深くかかわることを避けている。特に女性に対しては冷たく、笑顔を見せることはほとんどない。そんな正反対の二人が距離を縮める中で、お互いの優しさや知られざる一面を知り、やがて特別な感情を育んでいく。

あこの1学年上の先輩、田村美里は、遥巳の熱烈なファン。しかし、遥巳に拒絶されることを恐れ、遠くから見つめることしかできずにいた。そんな中、あこが遥巳と友達になろうと奮闘する姿に嫉妬と苛立ちを募らせた美里は、彼女を呼び出して頭から水をかけるなどの嫌がらせを行う。だが、運動会で遥巳のためにひたむきに走るあこの姿を目にし、自分にはそこまでできないとあきらめの気持ちを抱くようになる。それ以降、美里はあこのよき理解者となり、勉強を教えたり恋の相談に乗ったりと、心強い味方へと変わっていく。一方、遥巳が心を許す数少ない親友の一人である甲崎天馬は、遥巳に近づこうとするあこを当初は迷惑なファンと見なし、冷たくあしらっていたが、彼女のまっすぐで一途な性格に触れるうちに、遥巳との恋を応援しつつも、次第にあこ自身に心惹かれていく。