魔族と人類の戦いと稀人の存在
本作の舞台は、魔族と人類の戦いが1000年以上続いている、中世ヨーロッパ風の異世界である。魔王討伐を目的として、約500年間勇者一行による遠征が繰り返されているが、強力な魔族の前に歴代の勇者は全員戦死している。また、十数年の周期で稀人(まれびと)と呼ばれる転移者がゼロリスの森で発見されるのがこの世界の特徴。王国は、武闘家や自衛隊員、農夫、科学者といった稀人の技能を魔王討伐に利用したが、成果を上げることはできなかった。そんなある日、勇者一行を指導する賢者、ソフィアは、現代日本から転移してきた稀人の星乃と出会う。星乃の心理療法に希望を見出したソフィアは、彼女こそ魔王討伐の要と信じ、勇者一行のカウンセリングを依頼する。
異世界ファンタジー×心理カウンセリング
本作最大の特徴は、異世界ファンタジーと心理カウンセリングをかけ合わせているところにある。国民の期待を一身に背負う勇者一行は、仲間が死んでも笑顔を絶やすことは許されず、死を覚悟した戦いに臨まなければならない。回復魔法により身体の傷は治癒できるが、心の傷を癒すことはできない。心の病が認知されておらず治療薬も存在しないこの世界で、勇者たちは様々な心の病を抱えている。そんな彼らに現代的なカウンセリングでアプローチしていくのが星乃である。本作は、異世界転移や魔王軍との戦いを背景に、心理カウンセラーという職業にスポットを当てた異色作であり、心を病んだ人々の人間ドラマを描いた群像劇でもある。
現代のカウンセリング技法で異世界人に寄り添う
魔王軍四冥将の一角、シリウス討伐という偉業を成した勇者一行は、その代償として射手のカイルを失った。親友のカイルをパーティに誘った勇者のアルフレッドは、彼の死を自分のせいだと考えてしまう。星乃は、「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」という傾聴の三原則を徹底し、アルフレッドの自己洞察を手伝う。その結果、アルフレッドの涙は「仲間を死なせた後悔の涙」から「無二の親友を喪(うしな)った悲しみの涙」に変わる。本作は、臨床心理士の監修を受けている点が大きな特徴で、星乃は実際のカウンセリング技法を用い、双極性障害の聖職者、エルンストン、魔法使い、自閉症スペクトラム症のセラフィナに寄り添っていく。
登場人物・キャラクター
霜月 星乃 (しもつき ほしの)
現代日本から異世界転移してきた臨床心理士の女性。稀人として王国に保護されている。剣や魔法、特殊能力は一切使えない一般人。賢者、ソフィアの依頼を受け、勇者一行のメンタルケアを専門とするカウンセラーとして活動している。冷静な分析力と現代の心理学の知識を活かして、勇者たちの心に寄り添う。
ソフィア
1000年以上を生きる小柄なエルフ。賢者として勇者一行を指導する任務についており、星乃に勇者たちのカウンセリングを依頼する。200年をかけて大陸中の魔法を習得した後、僧侶として100年間治癒魔法を学ぶ。100年足らずを武闘や弓の修行に費やした後、さらに100年の間、剣を学んだ。まさに人類の叡智とも言える存在で、国中から尊敬されている有名人。人類初の魔王討伐隊のメンバーでもあった。
クレジット
- 原作
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八ツ波 樹
- 監修
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大知 愛(臨床心理士/公認心理師)








