木洩れ日のひと

ある夜、大人気アイドルグループ「hue-go」のメンバー、真弘はバイクに轢かれ、そのまま昏睡状態に陥ってしまう。加害者は参議院議員の父を持つ女子校生の皓子。部屋に閉じこめられ、母に自殺を迫られた皓子は、死ぬ前に真弘の唯一の家族である祖母、マチに謝りにいく。しかし、マチは道路に飛び出したのは真弘であり、皓子を責めるつもりはないという。帰り際に「まだ生きていたい」という皓子の言葉で状況を察したマチは、「慰謝料も損害賠償も請求しない代わりに皓子を預かりたい」と彼女の両親に申し出る。以来、皓子はマチに守られながら、献身的に真弘の世話を毎日続ける。それから10年後、真弘は奇跡的に意識を取り戻すが、その時すでにマチは亡くなっていた。皓子は引き続き、事故の後遺症で歩けない真弘の世話をすることになり、家族でも恋人でも友人でもない二人は、同居生活を続けることになる。

皓子の家は代々続く政治家一家で、女は家のために自分を捨てることが当然という前時代的な家柄である。皓子は今まで母の言いなりで生きてきたが、初めて親に逆らい罪悪感を背負いながら、一生懸命真弘の世話を続けてきた。一方、真弘は目覚めて初めて目にしたのが皓子であり、事故のことはあまり覚えていない。グループのメンバーの一人から皓子の献身ぶりを聞き、逆に彼女の人生を無駄にしたのではと気遣う。そして、皓子に婚約者がいることを知った真弘は、彼女の幸せを考えて家を出るように勧める。その言葉に従い、親の決めた婚約者と見合いをした皓子だったが、真弘の傍にいたいという感情に突き動かされ、見合いの途中ダッシュで真弘の家に帰ってくる。それを見た真弘もまた、嬉しさを隠しきれずにいた。二人は被害者と加害者であるにも関わらず、一緒に生活することを選んだのだ。

アイドルグループ「hue-go」は活動を休止していたが、真弘が目覚めたことで秘密裏に復活計画がスタートする。15か月後の年越しライブに向け、リハビリに励む真弘をはじめ、他の四人のメンバーも動き始める。そんな中、真弘は事故当日のことや、それ以前の人間関係について記憶が曖昧になっており、何度も同じ悪夢に悩まされていた。メンバーの一人、金子は、真弘の事故が単純なものではなく、同じくメンバーの紅野が関係しているのではと疑っていた。また、hue-goのファンブログには、真弘の事故に不審な点が多く、仕組まれたものではないかという疑問も記されていた。本作は、皓子と真弘の恋愛を軸にした物語だが、芸能界の光と闇、複雑な人間関係を描いたサスペンスドラマでもある。