死霊を巡るダークファンタジー
本作の舞台は現代日本だが、人の魂を食らう「死霊」と呼ばれる悪霊たちが存在し、「死霊術士(ネクロマンサー)」と呼ばれる術士たちが、人知れず死霊を駆除しているという世界観が特徴。物語の冒頭では、宇埜薫の平凡な日常が描かれるが、死霊が見えるようになったことでその世界が一変する。祖母の宇埜梅子が謎の死霊に襲われたのをきっかけに、ベテラン死霊術士の天涅耀司に誘われ、薫は死霊術士の世界へ足を踏み入れることとなる。
「死霊術士」は死霊でもって死霊を制す
死霊術士とは、魔術を込めた指輪を使用して術者自身の持つ死霊をあやつることで、人を襲う死霊を駆除する者たちのことを指す。死霊術士たちは野良の死霊のうち、人を襲う危険な死霊を駆除しており、その多くが死霊術会という組織に所属している。両親を亡くして以来、祖母の梅子と二人で暮らす薫は、梅子が死霊に襲われたのをきっかけに死霊術士の耀司と知り合う。そんな中、薫は死霊に襲われた梅子を守ろうとして、幼少期に父親からもらった指輪に封印されていた死霊を目覚めさせる。これを機に、薫は耀司のもとでアルバイトを始めることになり、ほかの死霊術士たちとも交流を深め、さまざまな死霊との過酷な戦いに身を投じていく。
家族思いの少年の成長物語
謎多き死霊術士の耀司は、薫の父親である樹の仕事仲間だった。人々を邪悪な死霊から守っている耀司へのあこがれ、そして薫自身も祖母を守りたいという思いから、薫は死霊術士としての力を着々と身につけていく。そんな中、薫は耀司を通じて出会った倉敷翠の修行を受けていたが、強力な死霊が出現して新たな戦いが始まる。樹の死の原因となった「龍」と呼ばれる天才死霊術士との対立や、死霊術バトルを重ねることで薫が成長していく姿も見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
宇埜 薫 (うの かおる)
祖母の宇埜梅子と二人暮らしをしている高校生男子。金髪をショートヘアにしている。母親は物心ついた時にはいなくなり、父親の宇埜樹は宇埜薫自身の右手の人差し指にはめている指輪を残していなくなった。おばあちゃんっ子で、唯一の家族となった梅子のことを誰よりも大切に思っている。梅子が死霊に襲われた事件を機に、天涅耀司が営む事務所のアルバイトを始め、家族を守るために死霊術士を目指すことになる。幼少期に父親から指輪を受け取っており、この指輪に封じられた「血ヲ啜リ肉叢ヲ尽クストモ」、通称「シシ」を引き継いでいる。
天涅 耀司 (あまね ようじ)
天涅霊媒事務所の代表を務める死霊術士の男性。紺色の髪をロングヘアにしており、左目の下と口元にホクロがある。小説家を副業としているが、忌憚のない発言でSNSがよく炎上している。死霊術士集団「饗苑(きょうえん)」の元メンバーであり、同じくメンバーだった宇埜薫の父親・宇埜樹とは仕事仲間で仲がよかった。このため、薫のことは以前から知っており、樹が遺した指輪を持つ薫に接触し、死霊術士の世界に引き込んだ。「血垂り(チタリ)」という少女の姿をした死霊をあやつる。天才死霊術士の天涅龍司を父に持つ。