死ぬほど愛して

澪と真人は、誰もが羨むほど仲睦まじい夫婦。しかし、近所で発生した「女性記者殺人事件」をきっかけに、澪の周囲で不可解な出来事が頻発するようになる。夫の真人宛に届いた謎の小包や、外出時に誰かの視線を感じるなど、澪は不安な日々を送っていた。さらに、自宅マンションの隣室には怪しい男性、石黒が引っ越してくる。そんな中、真人は澪を気遣う優しい言葉をかける一方で、予定にはない夜の街への外出や虚偽の出張など、不可解な行動が目立つようになる。決定的な証拠はないものの、澪は夫の裏の顔を疑い始める。

澪は離婚歴があり、元夫からの激しいDVが原因で別れることを決意した。人生に絶望し、自ら命を絶とうとしたところを、偶然通りかかった真人に救われる。この出会いをきっかけに、二人は交際を始め、やがて結婚に至る。澪にとって、真人は命の恩人であり、何よりも大切な存在となった。彼の優しさに応えたいと願う澪は、真人の不審な行動に対しても疑うことができず、彼の言葉を信じようとする。一方、真人は周囲から見ると、家事も仕事も完璧にこなすイケメンの愛妻家だが、その実態は目的のためには手段を選ばない冷酷な連続殺人鬼だった。彼の経歴もすべて虚偽であり、過去には震災で助けを求めた実の父親を見殺しにしたことさえある。最近発生した女性記者殺人事件の犯人でもあり、その罪を澪が働くパティスリーの店長に押し付けようと画策している。夫を信じたいと願う純粋な澪と、裏の顔を持つ真人。そんな二人の歪んだ日常が、緊張感の中で展開されていく。

女性記者殺人事件のあと、神城家の隣室に石黒が引っ越してくる。当初は澪を監視しているようなそぶりを見せるが、実は彼は「週刊玉石」の記者だった。殺害された女性記者の南沢夕陽も同じく「週刊玉石」の記者であり、真人の亡き前妻の親友でもあった。親友の死に疑念を抱いた南沢は独自に取材を進め、真人として生活している男は偽物であり、前妻と結婚した真人の正体は、過去に死亡記録のある金倉俊紀という、まったく別の男性であることを突き止めていた。しかし、真相に辿り着いた南沢は真人の標的となり、殺害されてしまう。石黒は、かわいがっていた後輩の南沢の遺志を継ぎ、独自に真人の動向を監視するようになる。そして、夫の真人への不安を募らせる澪にとって、石黒は次第に心の支えとなっていく。