水溜まりに浮かぶ島

水溜まりに浮かぶ島

『僕だけがいない街』などで知られる三部けいの代表作の一つ。現代の関東地方を舞台に、雷に打たれて体が入れ替わった小学生の明神湊と殺し屋の黒松が、それぞれの問題を解決するために奔走する、入れ替わりヒューマンサスペンス。犯罪者となって警察やヤクザに追われながらも妹の明神渚を必死に守ろうと行動する湊と、過去のすべてを消し去るために湊の人生の乗っ取りを企む黒松、そんな二人を取り巻く関係者たちの心境や思惑がリアルに描かれる。講談社「イブニング」2019年24号から2021年20号にかけて掲載の作品。

正式名称
水溜まりに浮かぶ島
ふりがな
みずたまりにうかぶしま
作者
ジャンル
サスペンス
レーベル
イブニングKC(講談社)
巻数
既刊5巻
関連商品
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心優しい小学生と殺し屋の体が入れ替わる

明神湊と妹の渚は、育児放棄気味の母親・七波の帰りを待ちわびながら日々を過ごしていた。そんな中、渚の誕生日の前日に久しぶりに母親が現れ、家族三人で遊園地に遊びに行くことになる。湊はいつものように優しい様子の母親に安堵するが、不審な提案と言動を取る母親に再び不安を募らせる。七波に言われるまま、渚とともに観覧車に乗り込んだ湊は、その場で雷に打たれてしまう。その衝撃で意識を失った湊が目を覚ますと、目の前には黒松に殺害された六月の死体と、黒松の体になった自分自身の姿が窓に映る。こうして、面識もないまま入れ替わった湊と黒松は、突然の出来事に混乱しつつも、事態を打開するために動き出す。

凶悪犯となった主人公の逃亡生活

観覧車の中で殺し屋の黒松と入れ替わった湊は、目の前に女性の遺体がある状況にパニックに陥るが、このままでは確実に警察に捕まると判断し、その場から逃げ去る。しかし、自分の体が殺し屋の黒松のものであることから、渚に危害が及ぶ可能性があることを危惧し、警察から逃げながらも渚を守ろうとする。そんな中、湊は黒松の素性を知る比呂瀬から半ば強制的に殺しを依頼されたり、黒松に敵意を抱くヤクザに狙われたりと、立て続けにトラブルに巻き込まれる。警察にも追われることになって絶体絶命となった湊だったが、持ち前の知恵や洞察力を働かせながら黒松の屈強な肉体、そして彼が隠し持っていた資金を頼りに危機を乗り越えていく。

裏社会で暗躍する男たち

殺し屋の黒松は、湊と体が入れ替わる前に多くの人間を葬ってきたことから、裏社会の人間たちからも恨みを買っている。さらに池袋でヤクザの事務所から多額の現金を奪ったことで、警察からもヤクザからも追われる立場となり、黒松の体になった湊を追い込んでいく。そんな中、黒松や六月に強盗を斡旋した椿が警察官で、さらに湊や渚を知っていることが判明する。自らをだました椿を苦々しく思う黒松は、周囲の状況を操作することで椿と湊の共倒れをもくろむ。

登場人物・キャラクター

明神 湊 (みょうじん みなと)

とある小学校に通っている5年生の男子。母親の明神七波から育児放棄に近い扱いを受けており、幼い妹の明神渚を誰よりも大切にしている。滅多に家に帰ってこないが、たまに家に戻ってきたときは二人に優しい母親を嫌いになり切れずにいる。優しくまじめな性格で、頭脳明晰のためにクラスメートたちからも慕われていた。渚の誕生日の前日に久しぶりに母親と再会し、遊園地の観覧車に乗っていた際に雷に打たれて気を失い、目を覚ますと見知らぬ女性の死体と、強盗犯の黒松と体が入れ替わった自分がいた。入れ替わった当初は、自らの体の持ち主が殺人犯であることに恐怖と焦りを覚えるが、自分が殺人犯であることを自覚し、渚に危機がせまることを危惧している。その後、警察やヤクザの追及をかわしながら、逃避行の中で知り合ったルミや城ケ崎天一郎の助けを借りながら渚を守るために奔走する。

黒松 (くろまつ)

殺し屋として裏社会で暗躍する青年。本名は「柚名冬志」だが、現在はその名前を知る者はいない。殺人の依頼を受けた際は、相手の首をへし折ることから「首折り」と呼ばれて恐れられている。そんな中、観覧車で同じ犯罪にかかわっていた六月を殺害するが、雷に打たれて明神湊と体が入れ替わってしまう。冷酷非情で、自分がかかわる人間が不幸になることは仕方がないと考えており、ある種の諦観を抱いている。そのため、他者を利用して使い捨てることにもなんの抵抗もない。また、依頼や障害排除のためなら平気で人を殺害するが、能動的に誰かを殺したいというわけではない。幼い頃から虐待を受け、愛されないまま成長したことから、黒松自身の人生をほぼ無意味なものだと考えていた。しかし、湊と入れ替わったことで人生を変えるチャンスと捉え、湊として生活を続けることをもくろむ。そんな中、自らを陥れた椿が警察官だと知り、彼の存在に危機感を覚えるようになる。

書誌情報

水溜まりに浮かぶ島 5巻 講談社〈イブニングKC〉

第1巻

(2020-03-23発行、 978-4065188583)

第2巻

(2020-10-23発行、 978-4065208496)

第3巻

(2021-03-23発行、 978-4065226001)

第4巻

(2021-07-21発行、 978-4065240465)

第5巻

(2021-11-22発行、 978-4065258880)

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