貴族のヒロインが港町に降り立つ
本作は、20世紀初頭の南国にある架空の港町「燈港」を舞台にした異国ロマン滞在記。都会生まれで都会育ちの令嬢であるアゼリア・ブラックネルは、遠縁で元家庭教師のエドガーに会うため、長い船旅を経て燈港に降り立ち、怪しげな美術商のオーガスト・カーライルと出会う。少々世間知らずのアゼリアが、異国情緒たっぷりな燈港で体験する恋愛模様や日常生活が、ラブコメディやヒューマンドラマを交えて展開される。また、アゼリアたちが燈港で奇妙な事件に遭遇したり、エドガーの真実が明らかになったりするなど、ミステリー要素も楽しめる。
怪しげな美術商×勝気なお嬢様
エドガーを捜すため、燈港にやって来たアゼリアだが、アゼリアのもとに「遊びにおいで」という手紙が届いた時にはエドガーはすでに亡くなっており、しかも手紙を出したのはエドガーとは別人だと判明する。法的制度の整っていない異国で、エドガーの死の真相を探るアゼリアをサポートするのは、オーガストという、紳士的ながらも怪しげな青年だった。当初は燈港の常識やルールもわからず、アゼリアはこの港町にやって来たことを後悔する。しかし、故郷ではおてんばで叔母に叱られてばかりの彼女は、オーガストから燈港の魅力を教わりながら、のびのびとした日々を過ごすことになる。
燈港滞在中に距離を縮めていく
エドガーの死を悟ったアゼリアは、彼が生前に愛した燈港の真の魅力を知るため、夏だけの旅行だった予定を変更し、燈港に滞在することを決意する。オーガストのもとに身を寄せるようになったアゼリアは、オーガストやその周囲の人々との交流を深めながら、南国の陽光、港や市場のざわめき、幻想的な灯籠流しをはじめとした燈港の文化に触れ、その魅力を理解する。ようやく燈港に慣れてきたアゼリアだったが、周囲でさまざまな騒動や事件が発生し、その影にはオーガストを付け狙う、ある人物の悪意が見え隠れしていた。当初から謎多き人物として描かれていたオーガストの過去が明らかになるとともに、徐々に距離を縮めていくアゼリアと彼の恋愛模様も見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
アゼリア・ブラックネル
西洋の名家・ブラックネル家に生まれた貴族の女性。金髪のロングヘアをリボンで一つにまとめている。幼少期に母親を亡くし、代わりに家を取り仕切るようになった叔母に厳しく育てられた。勝気で凛とした雰囲気をまとった美女だが、少々おてんばで世間知らずなところがある。昔から兄のように慕っていた遠縁で元家庭教師の男性・エドガーから手紙を受け取り、メイドのドロシーと共に燈港を訪れる。燈港ではならず者に言いがかりをつけられるが、オーガスト・カーライルに助けられる。
オーガスト・カーライル
燈港で美術品店「金糸雀堂」を営む謎の青年。濃い茶髪のショートヘアで、眼鏡をかけている。額に大きな傷跡があり、ふだんは帽子で隠している。つねに紳士的に振る舞っているが、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。燈港の人々には「カイ」という愛称で呼ばれていることが多い。燈港でならず者に騙されそうになっていたアゼリア・ブラックネルを助けたのをきっかけに、エドガーを捜しているアゼリアに協力するようになる。アゼリアとは出身国が同じで、幼少期に彼女に会ったことがある。表向きは美術商だが、優れた語学力を生かして燈港のトラブルを穏便に解決しており、非常に顔が広く、情報収集力にも長けている。
場所
燈港 (とうらん)
東西の文化と人々が交わる、東洋の交易都市。世界各国の人々があこがれを抱く夢の都で、西洋貴族を中心に多数の観光客が訪れているほか、商人や留学生で賑わっている。灯籠流しをはじめ、東洋文化から受け継いだ行事も定期的に開催されている。しかし、そんな夢の都では旅行者を狙った詐欺が横行し、異なる国同士のトラブルも発生している。
書誌情報
燈港メリーローズ 全3巻 白泉社〈花とゆめコミックススペシャル〉
第1巻
(2011-02-18発行、 978-4592198420)
第2巻
(2011-09-20発行、 978-4592198277)
第3巻
(2012-02-20発行、 978-4592198284)