父を焼く

父を焼く

『どんぐりの家』『赤狩り THE RED RAT IN HOLLYWOOD』他で知られる山本おさむの連載作品。舞台は現代の日本。55歳の三上義明は、独り立ちする娘を見送った後、23年前に亡くなった父の義雄を思い出す。突然孤独死した父を火葬する過程で、義明の胸に去来する複雑な思いを描き、親子の絆に迫ったヒューマンドラマ。小学館「ビッグコミックオリジナル」2022年第10号から第17号まで連載。第9回「さいとう・たかを賞」を受賞。

正式名称
父を焼く
ふりがな
ちちをやく
原作者
宮部 喜光
漫画
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
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親子の絆に迫る重厚な人間ドラマ

「老い」の門口に立った55歳の義明は、就職のために家を出た娘を見送った後、亡き父に思いを馳せる。23年前、父の義雄が亡くなったという連絡を受けた義明は、埼玉県から岩手に向かう。2年前に母が亡くなり一人暮らしをしていた義雄は、死後10日ほど経った状態で発見された。父が亡くなった寝床には無数の蝿がたかり、包帯が巻かれた遺体にはウジが湧いていた。父を孤独死させてしまった義明は、苦しく切ない思いを抱く。そして、通夜を終え火葬場に向かう中、母から聞いた父の生い立ちや、酒に溺れた父と糖尿病を患う母との貧しい三人暮らしを回想する。本作は、悲しみと悔恨の果てに親子の絆を再確認する主人公の姿を描いた、重厚な人間ドラマである。

原作者の実体験を描いたリアルな作品

読売オンライン「本よみうり堂」(2026年2月9日) によれば、本作は、山本おさむの弟子筋にあたる宮部喜光の私小説的な手記を漫画化したものだという。宮部は、高校卒業後に上京し、様々な職を経て山本おさむのアシスタントを務めた人物。作中のエピソードはほとんど事実で「こういう思いは決して私一人だけのものではない。いつか世に発表できたらと考えていた。山本先生が背中を押してくれ、頑張って描きました」と語る。一方の山本も「フィクションはできるだけ排し、リアリティーを大切にした」と言い「ドラマ仕立てにしたら良さがなくなる」「蠅や蛆虫の場面などは、机上で考えてもなかなか出てこない」などと語っている。

登場人物・キャラクター

三上 義明 (みかみ よしあき)

埼玉県在住の55歳の男性。妻と娘がいる。出身は岩手県で、酒に溺れた父の義雄と母、フミの間に生まれ、貧しい幼少時代を送る。奨学金を利用して高校に通い、卒業後は上京して家電量販店に勤務する。職場の先輩だった女性と出会って結婚、娘を儲けた。33歳の時に父の訃報を受け、故郷に戻り諸々の手続きを行う。

三上 義雄 (みかみ よしお)

義明の父親。妻に先立たれ岩手県で生活保護を受けて一人暮らしをしていたが、大動脈瘤破裂のため74歳で亡くなる。戦時中は馬の獣医師をしていたが、終戦後は軍馬がいなくなり職を失う。ある事故のため、左目は失明、右目は弱視となった。酒に溺れる中、ホルモン屋の女給と結婚して娘を儲けるが、わずか1か月で風邪のために亡くしてしまう。義明が生まれた後も酒がやめられず、家族は貧困にあえぐことになる。

クレジット

原作

宮部 喜光

書誌情報

父を焼く 小学館〈ビッグ コミックス〉

(2022-10-28発行、978-4098615032)

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