超常現象絡みの事件を追うバディもの
市警察の刑事3課に所属するネコ科の亜人、アナンは、ある日1課の捜査に駆り出され、不審な焼死体と向き合うことになる。発火時の映像は防犯カメラに残っており、タバコが原因の表面フラッシュ現象による着衣発火事故にしか見えないが、遺体は、燃料や燃料促進剤などを用いないと発生しないほど炭化していた。大きな矛盾に納得がいかないアナンが事故認定の書類作成をためらっていた時、マグリブ国家警察(NPM)特殊犯罪対策室の捜査官、カナイが市警察を訪ねてくる。似たような焼死事件が他に2件あったことを知ったアナンは、カナイと行動を共にし、後に国家警察特殊犯罪対策室にスカウトされることになる。本作はアナンとカナイが、超常現象絡みの事件を追う姿を描いたバディものである。
本作の世界観とNPMという組織
本作で描かれる時代は、巨大な隕石の落下により地球環境が滅茶苦茶になり、西暦が終わった後の世界。ただし、亜人と人間が共存する以外は、現代社会と大きな変わりはない。また、舞台となっているのはマグリブ国家のシャルワンヌ市。現実では北西アフリカを指す地域の名称である「マグリブ」が一つの国家となっている他、アメリカ合衆国と似た「西アメリカ共和国」が登場するなど、微妙に現代とは異なる世界観が特徴である。NPMは、州をまたぐ犯罪や自治体警察の裁量を超えた特定犯罪に対応するための組織で、下部に超常現象の捜査を担当する特殊犯罪対策部がある。対策部は専門分野別に捜査1課から6課に分かれているが、アナンたちが所属する特殊犯罪対策室は、そこから外れた部署で専門分野を持たない左遷先と言われている。
超常現象の裏にある重厚な人間ドラマ
本作は、作者がSNSで発表した処女作『アルシャッドの娘』(第一話「炎」に該当)を商業連載化した作品である。「ダ・ヴィンチWeb」に掲載されたインタビューによれば、「以前からこつこつ創作にトライしてはいた」という作者は、友人が漫画で賞をとったことを機にスイッチが入り、『アルシャッドの娘』を描き上げたという。また、第1巻のあとがきには、『X-ファイル』をきっかけにはまった海外ドラマで、自分の中に作劇の基礎が形成され、その結果本作が生まれたことが明記されている。本作の重要な要素は『X-ファイル』同様、捜査官の男女二人が解き明かしていく超常現象だが、もう一つの大きな魅力は、能力者が犯罪に至る背景が描かれた重厚な人間ドラマにある。
登場人物・キャラクター
アナン・デューア
ネコ科の亜人である若い女性。猫耳としっぽが特徴。市警察の刑事3課に所属していたが、発火原因と火力が釣り合わない不審な焼死事件をきっかけに、マグリブ国家警察(NPM)特殊犯罪対策室に所属、カナイとコンビを組むことになる。論理的に物事を考えることができ、法医学的な知識もある。
カナイ・サレム
マグリブ国家警察(NPM)特殊犯罪対策室の捜査官の男性。長身と白髪、丸いサングラスが特徴。しっかりとした青年に見えるがじつは未成年である。超能力の可能性を受け入れる柔軟性を持ったアナンを評価し、市警察をクビになったアナンをNPM特殊犯罪対策室に誘う。小さなモノを動かす低出力と3メートルの球形状の空間をえぐる高出力という2段階の出力を持つ異能力の持ち主。
書誌情報
現象X 超常現象捜査録 2巻 KADOKAWA〈ハルタコミックス〉
第1巻
(2025-06-13発行、978-4047381124)
第2巻
(2025-12-15発行、978-4047385665)








