異世界ちゃんこ 横綱目前に召喚されたんだが

本作の大きな魅力は、モンスターを食材として使用したちゃんこのレシピが詳細に描かれている点にある。モンスターの下処理はもちろん、いっしょに調理される異世界の植物についても細かく設定されており、ほとんどが架空の食材であるにもかかわらず、魅力的に表現されている。また、高良山が所有する固有アイテム「ちゃんこ横綱」は、変幻自在の調味料であり、醤油や味噌、バターなど、さまざまな調味料として使用できる。味が想像しやすい馴染みのある食材が加わることで、香りや風味の説明が分かりやすく解説され、読者はその魅力をより一層感じ取ることができる工夫が施されている。

本作は料理の魅力だけでなく、高良山を取り巻く人間関係も見どころの一つとなっている。エリーセは魚型モンスターの毒針の影響で高良山に子作りをせまるなど、初めから積極的に彼に関与していたが、ノアール大陸に渡った際にガイドの女性、カリーンがパーティに加わることで、イーリスも高良山に対してほのかな恋心を抱き始める。カリーンの胸を見て赤面する高良山に嫉妬する姿など、彼女たちの感情豊かな一面が描かれる。エリーセとイーリスの片思い、高良山の何気ない行動に一喜一憂する彼女たちのかわいらしい姿は、モンスターとの激しいバトルや美味しそうな料理の描写とは異なる魅力を物語に加えている。

高良山が元の世界に戻るためには、時の女神、クローナの助けが不可欠とされている。しかし、クローナは元々力が弱く、さらに自らが創り出した世界樹が異質なモンスターに食い荒らされたため、女神としての姿を保つことができず、月狼(マーンウルフ)に変貌してしまう。高良山のちゃんこによって魔力の回復が期待できると知ったクローナも仲間に加わり、一行はより具体的に元の世界に戻る方法を探し始める。その過程で、国家の王位継承争いに巻き込まれるなど、彼らの冒険はますます刺激的なものとなっていく。