異修羅 新魔王戦争

世界を震撼させた魔王が何者かに殺されるが、魔王を倒した勇者が名乗り出なかったため、御前試合「六合上覧(りくごうじょうらん)」を開催することが決定。そして、16人の勇者候補の中から勝ち残ったただ一人が「本物の勇者」と認められることとなった。ある者は刀一本で巨大な機魔(ゴーレム)を切り伏せる異世界の最強剣士、ある者はあらゆる伝説を踏破した鳥竜(ワイバーン)の英雄、ある者はたった一言ですべて支配するエルフ。ありとあらゆる種族や能力、戦闘手段を極めた「修羅」と呼ばれる、最強の猛者たちによるバトルロワイヤルが幕を開けることとなる。

この世界は王族を除く登場人物のすべてが二つ名を持っている。二つ名はその人物の特性を表していることが多く、鏃(やじり)を飛ばす詞術を得意とする「遠い鉤爪のユノ」や、あらゆるものを盗み出す「鵲(かささぎ)のダカイ」といった具合である。二つ名は人間以外の種族も例外なく持っており、鳥竜(ワイバーン)の「星馳せアルス」や、根獣(マンドレイク)の「海たるヒグアレ」など、人間に近しい存在かどうかも関係していない。また、二つ名はこの世界の社会的な手続きにおいても必要とされるため、「彼方」という異世界からの客人である「柳の剣のソウジロウ」も、後付けではあるものの二つ名が付けられている。

本作は御前試合「六合上覧」が開かれる前の物語として、中央国家「黄都」とそれに反抗する「リチア新公国」による争いが描かれる。かつて黄都の地方都市であったリチア新公国は「誉めのタレン」が率いて独立し、戦争の機会をうかがっていた。「六合上覧」を開催する妨げとなっているこの企てを阻止するため、黄都はタレンの暗殺を画策する。そして、リチア新公国が抱える最強の「修羅」たちと、刺客たちによる戦闘が始まる。この戦いは「六合上覧」に参戦する修羅たちの群像劇で、各陣営や人物たちへの感情移入がしやすくなっている。