プロレスファン必見の戦国武勇伝
本作は戦国時代末期を舞台にしているが、蝶野正洋や坂口征二、武藤敬司、橋本真也をはじめとするプロレス界の実在の人物をモデルにしたキャラクターが多数登場する。彼らは「白兵武者」と呼ばれる僧兵として戦場に出撃しており、戦国時代の激戦と現代のプロレス試合を彷彿させる迫力あるバトルが楽しめる。またコミックスの巻末には、本作の原案を担当した蝶野正洋へのインタビューが掲載され、本作への情熱や登場人物のモデルとなったプロレスラーの解説が熱く語られている。
素手で戦場を制する白兵武者
戦国時代の戦は、全身を鋼の具足に覆われた相手を刀のみで制することは困難で、確実なトドメを刺す前に「鎧組み打ち」と呼ばれる格闘戦で相手を戦闘不能に追い込むのがセオリーとされている。但馬国の力道禅真仁智寺では、鎧組み打ちを極限まで進化させた戦闘術が伝承されており、やがて刀を持たずに戦を行なう「白兵武者」が誕生する。平時の白兵武者は真仁智寺で修行に明け暮れ、戦が起こると守護大名である山名祐豊の要請に応じて戦場に駆け付ける。
但馬国の白兵武者と敵対する「鬼神衆魔界組」
「白兵武者」を擁する国は但馬国だけではなく、毛利元就が治める安芸国にも存在する。元就が率いる白兵武者たちは「鬼神」と呼ばれる存在への忠誠を誓っており、自らを「鬼神衆魔界組」と名乗っている。また、慈悲の心を持って戦う力道禅真仁智寺とは真逆で、憎しみや支配欲をはじめとした負の感情と「黒の理気導」と呼ばれる特殊な気をもって相手を無慈悲に撃滅する。中でも鬼神衆魔界組の頭目である阿修羅は、坂口征順を圧倒するほどの実力を誇る。そして、阿修羅に次ぐ実力を持つ羅刹は、蝶野正之進の渾身の蹴りを顔面に受けてもびくともしないほどの頑強な体軀で、人間に対する憎悪を原動力にして但馬国の白兵武者を圧倒する。のちに、阿修羅の正体が正之進の父親、蝶野神璽弄であることが判明する。
登場人物・キャラクター
蝶野 正之進 (ちょうの まさのしん)
但馬国の力道禅真仁智寺に所属する白兵武者の青年。並外れた腕力とスタミナを誇り、戦場では素手で数多の敵兵を打ち倒す。正々堂々とした勝負を好み、戦場であっても敵兵をなるべく殺さないように心がけている。実直な性格で、男気あふれているため女性に人気があるが、蝶野自身は女性に免疫がないため声をかけられただけで照れてしまう。父親の顔を知らず、物心ついた時は母親の八重と共に各国を放浪する生活を続けていた。やがて八重が病気で亡くなると、厳島で出会った嘉平とおたえ夫婦に拾われ、いっしょに暮らすようになる。そんな中、陶軍の襲撃によって二人が殺され、蝶野自身も襲われるが駆け付けた坂口に救われる。その後、真仁智寺で橋本真兵衛や武藤敬次郎と共に修行に励み、やがて但馬国を代表する白兵武者として活躍する。実在の人物、蝶野正洋がモデル。
坂口 征順 (さかぐち せいじゅん)
但馬国の力道禅真仁智寺に所属する白兵武者の男性。真仁智寺屈指の僧侶で、但馬国の守護大名である山名祐豊からも信頼されている。敵の刀を手甲でいとも簡単に受け止め、飛び膝蹴りやバックドロップなどの豪快なプロレス技を繰り出し、白兵武者の中でも抜きん出た実力を誇る。また、但馬国の有力者である豪族に対してもまったく臆することはなく、並外れた度量の大きさと視野の広さを兼ね備える。平時は僧侶として各所を巡り、有事の際は戦場の最前線に真っ先に駆け付け、敵を圧倒的な力で制圧する。厳島に赴いた際に蝶野を助け、真仁智寺で保護したため、蝶野からは実の父親のように慕われている。実在の人物、坂口征二がモデル。
クレジット
- 原案
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蝶野 正洋