相続探偵

本作は、故人の遺産を正しく相続するための調査とサポートを専門とする探偵事務所を舞台にしている。所長の灰江は、洞察力と法律知識に優れ、助手の三富令子は医学知識と身体能力に秀でている。また、元警視庁科捜研の協力者である朝永秀樹は、IT技術や鑑定技術に精通している。この三人がそれぞれの専門分野を活かし、調査を行うことで、遺産相続を円滑に進めていく。事務所は小規模ながら、その実績は素晴らしく、多くの遺族が彼らの調査によって救われている。

灰江相続調査事務所には、鎌倉の名家に生まれながら夫の不貞によって人生が狂わされた城丸葉月や、大学時代に高額な研究費を貸した恩師の伊代島彰の急逝により、その相続人である息子たちに翻弄される赤羽桂など、さまざまな事情を抱えた依頼者が訪れる。依頼者たちは、遺産を残した故人との深い絆で結ばれており、自らが遺産を相続すること以上に、故人の意思を尊重することを優先している。灰江をはじめとする事務所のメンバーもその信念に深く共感しており、依頼者と故人の双方にとって最善の結果を生み出すために、日々尽力している。

灰江が取り扱う相続問題は、遺族間の対立や故人の人間関係など、さまざまな要因が複雑に絡み合っている。中には、遺言書の偽造や改ざん、法律の抜け穴を利用して故人の遺志に反する遺産分配を企む狡猾な者も存在する。灰江は、こうした悪人に遺産が渡ることを「遺産が泣く」と表現し、不審な状況を察知した際には徹底的な調査を行い、悪意に満ちた策略を阻止するために全力を尽くす。また、単行本のおまけページでは、遺産相続に関する法律が詳しく解説されており、灰江が悪人を追い詰める展開に説得力を持たせている。