VWが発展した近未来の日本が舞台
本作はバーチャル・リアリティが人類の生活に浸透した近未来の日本を舞台にしており、人々は現実の日本と仮想世界(VW)を行き来しながら生活している。人々にとって欠かせない娯楽となったVWの中でも人気上昇中の「64 TOKYO」は、「幻の昭和64年の東京」をイメージしたVWで、主人公の神太郎によって製作・管理されている。最近ようやく広告収入で黒字転換したことを喜んでいたジンタだったが、64 TOKYOで事件が発生し、それをきっかけに謎の人物と遭遇したり、VWと現実の世界で奇妙な出来事に巻き込まれるようになる。太郎が渋谷智也たちと協力しながら事件の真相を追求する姿や、VWを通しての出会いと恋愛模様が、サスペンスやSF要素を交えて展開される。
現実世界のあこがれの女性とVWで出会う
地味で冴(さ)えない神太郎は、コンビニでアルバイトをしながら、最新技術で作られた仮想世界(VW)「64 TOKYO」を製作・管理している。太郎がいつものようにアバター「ジンタ」を使用して、ジンタの妹で女子高生という設定のアバターを使用する智也とVWを堪能していたが、64 TOKYO内のカフェであこがれの女性、柊舞花と同姓同名で同じ容姿のアバターと出会う。さらには舞花につきまとう暴漢が現れ、暴力を振るう彼を、太郎はメスで胸を刺して消去してしまう。後日、64 TOKYOに現れた暴漢の正体が、現実世界で舞花の知り合いでもあるエックス線技師、西大輔だと判明し、さらには大輔が現実世界で殺害される通り魔事件が発生する。この二つの事件が偶然に起こったとは思えなかった太郎は、大輔の死の真相を探る中で、VWにまつわるさまざま謎と陰謀にせまっていく。
現実を蝕むVWでの事件
仮想世界(VW)「64 TOKYO」と現実世界で起こった事件を探る中で、神太郎は死亡したはずの大輔と同じ姿のアバターを使用する、謎の人物と出会う。大輔になりすます者は「悪魔」を名乗り、世界を救うためという意味深な言葉と共に、太郎に宣戦布告をする。太郎は、わずかな手掛かりと64 TOKYOの管理者としての権限を駆使し、大輔を殺した真犯人を探っていく。VWに関する謎は殺人事件だけでなく、現実世界の舞花そっくりのアバターも、太郎にとって重要な存在となる。太郎はアバターの舞花のことを「舞花ちゃん」と呼び、現実世界の舞花との関係性が不明なまま、VW内で逢瀬(おうせ)を重ねる。だが、そんな太郎をあざ笑うかのように、非現実であるはずのVWが現実を侵食するような出来事が、彼の周りで次々と発生していく。密接な関係に変容していく現実とVWに起こる未曽有の異変の真相や、太郎と二人の舞花が織り成す恋愛模様も見どころとなっている。
登場人物・キャラクター
神 太郎 (じん たろう)
帝都大学病院内のコンビニでアルバイトをしている冴えない青年。年齢は23歳。コンビニの常連客である研修医の舞花に、密かにあこがれを抱いている。実はアルバイトは副業であり、本業は仮想世界(VW)「64 TOKYO」の製作・管理者。愛称は「ジンタ」で、64 TOKYO内でもジンタと名乗っている。現実世界では小太りな体型で眼鏡をかけているが、64 TOKYOでは長身で体重も10キロ以上痩せたイケメンアバターを使用している。64 TOKYOでは幼なじみで帝都大学病院担当のMR、智也と行動を共にしているが、智也がジンタの妹で女子高生のアバターを使用しているため、過剰なスキンシップで振り回されている。64 TOKYOのカフェで、舞花と同姓同名で同じ容姿の謎の女性アバターと出会って恋に落ちる。
柊 舞花 (ひいらぎ まいか)
帝都大学病院の小児科研修医を務める女性。年齢は24歳。ストレートの黒髪をロングヘアにしている。太郎がアルバイトしているコンビニの常連客でもある。若くして飛び級で医大に進学するほどの頭脳を誇り、容姿端麗な美女。ジンタが創り出した仮想世界(VW)「64 TOKYO」のカフェに同姓同名で同じ容姿のアバターが存在するが、現実世界の舞花とは性格や服装が異なり、二人が同一人物であるかは不明。太郎たちからVWについて聞かれた際は、全然興味がないと答えていた。
その他キーワード
VW (ばーちゃるわーるど)
バーチャル・ワールド(仮想世界)の通称で、バーチャル・リアリティによって作られた仮想空間のこと。VWを製作・管理する者は「神さま」と呼ばれることがある。「BDI(ビディ)」というインターフェースを装着することで、人間の脳を直接VWへとつなげることができる。プレイヤーがVWにログインすると、現実とは異なる姿(アバター)で行動できるようになり、容姿はもちろん、性別や年齢も自由に選べる。太郎が創り出した「64 TOKYO」は昭和64年の日本をイメージしたVWで、当初はNPCばかりのマイナーVWだったが最近は人気が上昇し、ユーザーが増えつつある。
クレジット
- 原作