累々戦記

理不尽や不条理を嫌う朝風弥宵は、風紀委員の副委員長として、誰に対しても厳格な態度で臨んでいた。しかし、そんな弥宵は、新たに転入してきた涅森蒼葉の自由奔放さに翻弄される。ある日、弥宵は「異界の窩（あな）」に迷い込み、そこで蒼葉が女子高校生を異形の存在から救い出す姿を目撃する。目の前で繰り広げられる常識を超えた出来事に、弥宵は言葉を失い、同時に自分の力ではどうすることもできない現実に直面し、強い無力感に襲われる。その直後、弥宵は「異糸（イト）」に侵食され、異形の存在と化した教師・冬野に襲われる。変わり果てた冬野の姿に戸惑いながらも、弥宵は彼女を正気に戻そうとする。するとそこに蒼葉が現れ、冬野を人間に戻す。弥宵は、蒼葉が人知を超えた力を持つ「剥離師」であることを知り、彼と共に人々が「累（かさね）」にならないように護衛し、累になった人間を元に戻す剥離師として活動することになる。

世界の裏側には、意思を持つ別世界「異界」が存在する。異界は根のような物体を用いて現世とつながる通路「異界の窩」を開き、そこから人の心の影に寄生する分身体「異糸」を送り込む。異糸に取り憑かれた人間は、かつて人間だった頃のトラウマや不満をあらわにする異形の存在「累」となり、他者を襲い始める。その危険性から、異界を知る者たちはその存在を強く警戒している。現在、守部市では住民が次々と異糸に侵食され、累が大量発生する異常事態が発生しているが、その現象の背後には一人の男がかかわっていることが明らかになる。

「剥離師」とは、累となってしまった人間を元の状態に戻す役割を担う特殊能力者である。彼らは異界や異糸を視認し、空間に干渉する「顕界術」や、手から異形と人間を切り離す刃を生み出す「枳太刀」といった能力をあやつる。また、異形に対して効果的な弾丸を放つ「空穿」などの武器も駆使し、累から人々をひそかに守っている。剥離師の多くは「影ノ徒」と呼ばれる組織に所属し、組織からの支援を受けつつ、その動向を管理されている。だが、組織内は一枚岩ではなく、剥離師同士の対立や抗争が絶えない。