熱海のリアルな日常を描く
本作は熱海市内が舞台となっており、金目綿花奈の仕事ぶりをとおして熱海で暮らす人々の等身大の暮らしが丁寧に描かれている。実在する「熱海銀座商店街」をはじめ、JR熱海駅前や銭湯「山田湯」「中島水産市民市場」など、人気観光地だけでなく、地元の人しか知らないようなスポットも登場する。作中で描かれたさまざな場所は聖地化され、聖地巡礼として多くのファンが訪れている。
ヒロインの素顔の魅力にせまる
金目は誠実な性格で、一見するとしっかり者に見える。しかしお酒を飲んで前後不覚になったり、あられもない恰好を男子高校生に見られたりと、意外にも天然気味で、そんなところもまた彼女の大きな魅力となっている。何事にも一生懸命で、クリーニングに対する真摯な姿勢は、仕事を心から愛していることがよく伝わってくる。熱海の住人と交流を深めていく様子もほほましく、時に頰を上気させて大好きな温泉を楽しむ姿が描かれ、健康的な色気がほのぼのとした日常風景のアクセントとなっている。金目は2年より前の記憶を失っているが、日々の生活の中でクリーニングに関する謎に触れて記憶を取り戻していく様子も、物語の一つの軸となっている。
クリーニングの専門的知識が楽しめる
金目は2年より前の記憶を失っているが、クリーニングに関する記憶だけは残っている。時には今の自分が経験していないことを、クリーニング作業中にまるで過去の自分が経験したかのように思い出し、それが彼女の仕事に対する姿勢と丁寧な仕事ぶりにつながっている。金目の専門的なクリーニングの技術はもちろんのこと、お客さんの洋服が思い出とともに宝物であり続けるよう、誰よりも大切に洋服を扱うさまは心温まる。また、詳細に描かれたクリーニングに関するマメ知識や技術も知ることができる。
登場人物・キャラクター
金目 綿花奈 (きんめ わかな)
熱海で小さなクリーニング店「キンメクリーニング」を営んでいる女性。2年より前の記憶を失っており、自分に関する記憶はいっさいないが、唯一クリーニングにかかわることだけは記憶に残っている。店を一人で切り盛りしながら、自宅への集配も行っているため、いつも忙しい日々を送っている。記憶を失っているため、お客さんの洋服が思い出とともに宝物であってほしいとの思いから、「地域に根差したまごころサービス」をモットーに仕事を続けている。「金目にお任せください」が決め台詞。店の名前が入った大きな配達用バッグがトレードマークになっている。明朗快活な性格で、つねに明るく人当たりがいい。仕事が終わったあとの温泉を何よりも楽しみにしている。失った記憶にかかわる場所や物事に触れると、突然不可解な行動を取ることがあるが、本人にその自覚はない。
石持 毬祥 (いしもち きゅうしょう)
熱海で暮らす高校生の男子。実家が民宿旅館「いしもち」を営んでおり、時折食堂を一人で切り盛りすることがある。あまり感情を表に出すことがなく、朴念仁ながら小学生の頃から女子に人気がある。夏祭りの夜、金目綿花奈とお面越しに口が触れ合うというアクシデントがあり、それ以来なんとなく金目を意識するようになった。もともと母親が金目が営む「キンメクリーニング」の常連客で、母親の代わりに品物を引き取りに行くこともある。金目が2年より前の記憶を失っていることは、彼女自身の口から聞いて知っている。家族や親しい人からは「キュウ」と呼ばれている。
書誌情報
綺麗にしてもらえますか。 10巻 スクウェア・エニックス〈ヤングガンガンコミックス〉
第1巻
(2018-03-24発行、 978-4757556744)
第9巻
(2022-11-25発行、 978-4757582705)
第10巻
(2023-08-25発行、 978-4757587366)