付喪神と人間の溺愛物語
本作で描かれる恋愛シチュエーションは溺愛婚で、結婚に至るまでの期間も短く、結婚してから二人の関係が大きく進展する。大弓の付喪神である白銀の栗沢翠に対する感情は最初から溺愛であり、強引な一面がありつつも、つねに翠を最優先に行動している。そのため作中においても度々「白銀は嫁に甘い」と表現されている。これまで目立たないように孤独に生きてきた翠は、その溺愛の中で女性としての美しさを開花させていく。
暗い蔵の中での再会
翠と白銀の初めての出会いは、翠が小学校に上がる前に入った工房「琥珀堂」の蔵の中。重い穢れによって消滅しそうになっていた白銀に翠が触れたことで、一時的に穢れが祓われたのが馴れ初めとなっている。翠の持つ「浄化」の力の強さに感動した白銀は翠を嫁にすると宣言するが、琥珀堂の主人は翠がもののけの世界に足を踏み入れないように、蔵から遠ざけてきた。しかし翠が22歳のある日、琥珀堂の蔵の中で白銀と再会してしまう。
二人の結婚生活は期限付き
生涯の伴侶となる覚悟を決めて白銀に嫁入りした翠だったが、実は嫁として必要とされる期間は、白銀の穢れが浄化されて尽くされるまでという条件付きのものだった。それでも白銀は翠を溺愛し、翠もまた白銀を夫として愛しみ、絆を深めていく。やがて翠は白銀の本当の妻になりたいと願い始めるが、もののけや神にとって約束事や契約がどれほど大切なものかを理解しているため、願いを口に出すことは叶わない。結婚生活に期限があるという約定が、二人の恋愛の大きな障壁となっていく。
登場人物・キャラクター
栗沢 翠 (くりさわ みどり)
とある会社に勤務する女性。人ならざる者が見える体質なため、幼い頃から本心を隠して孤独に過ごしてきた。他者を不快にさせたり好奇心を煽ったりしないようにするため、なるべく目立たず感情を表に出さないようにしている。しかし、白銀の花嫁に迎えられてからは表情が豊かになっていく。白銀への嫁入りには戸惑いもあったが、白銀が栗沢翠自身を大切に思っていることを知ってからは、白銀の妻として自覚を持って気丈に振る舞っている。白銀の旧知である鵺を従者にして以来、身内で唯一白銀の正体を教えている妹・栗沢朱莉の守護を命じている。多くのもののけからは「嫁御寮」と呼ばれている。
白銀 (しろがね)
大弓の付喪神の男性。長い銀髪をうなじでまとめている。古道具の修繕を請け負っている工房「琥珀堂」の蔵に保管されていた。白銀の信者やその土地を守るため、容赦なく外敵を討ち滅ぼすという性質から、身の内に穢れを溜めてしまう欠点を持つ。最後に白銀の本体を祀っていた家を守る行為によって強い穢れに蝕まれ、浄化を必要としていた。幼い頃、栗沢翠が白銀に触れただけで穢れを浄化したことに驚き、花嫁にすることを決める。現世に対して好奇心旺盛で、すぐにパソコンやスマートフォンを使いこなすようになった。かつては神社で祀られていたこともあり、「弓神」とも呼ばれている。
書誌情報
蜜夜婚~付喪神の嫁御寮~ 8巻 小学館〈フラワーコミックス α〉
第1巻
(2016-01-08発行、 978-4091381187)
第2巻
(2016-06-10発行、 978-4091383556)
第3巻
(2016-11-10発行、 978-4091387677)
第4巻
(2017-05-10発行、 978-4091392756)
第5巻
(2017-11-10発行、 978-4091396709)
第6巻
(2018-05-10発行、 978-4091398420)
第7巻
(2019-06-10発行、 978-4098704682)
第8巻
(2019-07-10発行、 978-4098704699)