野球場でいただきます

本作は、ひょんなことから知り合った二人の女性・坂本つばめと亀井もにかが、ファンとしてプロ野球に向き合う姿を描いた物語となっている。彼女たちはそれぞれひいきの球団を持ちながらも、プロ野球全般を愛し、何より球場飯を食べながら、敵味方を超えて楽しく観戦することを目的としている。本作では、球場に関する豆知識やプロ野球観戦のあるあるネタを交えながら、二人の姿がコミカルに、そして「食」に関しては豪快に描写されている。

本作は野球をテーマにした作品だが、野球というスポーツそのものよりも、球場で食べられる球場飯に焦点を当てたグルメ漫画となっている。登場する球場飯は、各球場で実際に食べることができる実在のメニューで、物語を楽しみながらプロ野球観戦時のグルメガイドとしても活用できる。なお球場や球団、球場飯に関する情報は、2020年から2023年にかけてのもので、サイト掲載時のものに基づいている。コロナ禍の影響もあり、現在とは異なる情報もあるが、本作で当時のプロ野球の雰囲気を楽しむのも一興だ。

子供の頃から家族にプロ野球ファンとしての英才教育を受けてきたつばめとは対照的に、もにかはたまたま友人からチケットを譲ってもらっただけの初心者ファン。そのため、これまでつねに自分を抑え、周囲に合わせて生きてきた亀井にとっては、時に熱心すぎるファンや、「プロ野球にかかわる人々」の言動が、心を痛める要因となってしまうこともある。一方のつばめは、そんな亀井を導きながら、初めてできた共通の趣味を持つ友人として、彼女に依存していく姿を見せる。互いに心の葛藤を抱えながら共に歩み、立ちはだかる壁を乗り越えていく二人の心温まる関係も、本作の見どころとなっている。