分譲マンションを舞台にした高校生五人の群像ラブストーリー
本作は、とある分譲マンションに暮らす高校生の美羽、基秋、真田・利津・アロワ、高鳥あおい、庄司悟の五人を中心に描かれる群像ラブストーリー。エピソードごとに五人それぞれの視点が切り替わり、日常や複雑な人間関係を軸に、家族とのかかわりや幼少期の過去が丁寧に掘り下げられていく。彼らの心に秘められた秘密や本音が徐々に明らかになる構成が、物語に深みをもたらしている。五人は全員が誰かに恋心を抱いているが、その思いは叶わぬ片思いであるため、つねに複雑で鬱屈した感情を抱えている。やがてその感情は嫉妬や劣等感へと変わり、歪(ゆが)んだ人間関係を生み出していく。時には思わぬすれ違いや事件に発展することもあり、緊張感あふれる展開を楽しむことができる。
幼なじみ五人の複雑な恋愛模様
同じ分譲マンションに複数の家族が引っ越してきて以来、同年代の五人の少年少女たちはこのマンションで共に育った。やがて高校生になった彼らは、同じ高校に通う幼なじみでありながら、成長と共にその関係性に微妙な変化が生まれていた。そんなある日、基秋の父親は、一人息子の基秋が隣室に住む美羽からキスされている場面を目撃してしまう。美羽は基秋に対して真剣な恋心を抱いていたが、基秋にとってそのキスは幼なじみとしての親しみの表現に過ぎず、彼の思いは年上の女性である河野綾芽に向けられていた。美羽は基秋の気持ちを察しつつも、あえて気づかないふりをしながら、一途(いちず)で切ない思いを抱き続ける。
閉ざされた世界で交錯する思い
同じ分譲マンションで育った幼なじみには、外国の血を引く利津、ギャルのあおい、そして野球少年の悟がいた。その中でも、中性的で美しい容姿を持ち、母親に女装を強いられてきた利津は、自分が男であることを見抜いてくれた美羽に特別な感情を抱いていた。しかし、美羽が基秋と交際を始めたことを知ると、利津は自暴自棄になり、あおいや悟らこれまで親しくしてきた仲間たちと距離を置き始める。さらには、このマンションという狭い世界の人間関係をリセットしようと、周囲を激しくかき乱していく。その後、あおいは悟と交際を始めるものの、その愛情は曖昧なままで、彼女は以前から気になっていた利津に接近する。一方、基秋が忘れられずにいた綾芽が戻ってきたことで、幼なじみの五人の関係は大人たちの思惑や都合に翻弄され、ますます複雑さを増していく。
登場人物・キャラクター
筧 美羽 (かけい みわ)
分譲マンションの406号室に住む女子高校生。幼い頃、同じマンションに引っ越してきた基秋が寂しそうにしているのを感じ取り、彼を励ましたり、何度かキスを交わしたりしたこともあった。そのため、成長してからも基秋とキスをすることがあるが、幼少期に抱いていた友情や親近感とは異なり、美羽の思いは彼への一途な恋愛感情へと変わっている。しかし、基秋が年上の綾芽に片思いしていることに気づいており、幼なじみ以上の関係にはなれないとあきらめの気持ちを抱く一方で、彼への思いを断ち切れずに葛藤している。
辻内 基秋 (つじうち もとあき)
分譲マンションの405号室に住む男子高校生。美術部に所属しており、特に風景画を得意としている。幼い頃に母親を亡くし、父親と共にこのマンションへ引っ越してきた。隣室には美羽が住んでおり、引っ越してきた当初、寂しそうにしていた自分を何度も励ましてくれた。親しみを込めて何度かキスをされたこともあったが、基秋自身は今も美羽に対して幼なじみや家族以上の感情を抱いておらず、彼女の恋心にも気づいていない。また、かつて同じマンションに住んでいた年上の女性で、バイオリンが得意な綾芽のことを忘れられずにいる。
書誌情報
鈍色の箱の中で 全7巻 LINE Digital Frontier〈LINEコミックス〉
第1巻
(2020-02-01発行、978-4866970189)
第7巻
(2020-12-01発行、978-4866971216)








