女子アナウンサーを志望する女性の数奇な運命
女子大学生のあずさは、女子アナウンサーを目指し、テレビ局の入社試験を手当たり次第に受けまくっていた。だが、それはあまりにも狭き門で、連戦連敗を繰り返す中、ひょんなことからケーブルテレビ局「鉄道テレビ」に、見習いのアナウンサーとして採用されることとなる。鉄道にはまったく興味がないあずさだったが、入社時に映像ディレクターを務める神宮前と交わした会話から、人々の鉄道への思い入れの強さに触れたことで、自らの鉄道に対するイメージに、わずかな変化をもたらす。そして仕事のかたわら、鉄道オタクの社員らの英才教育によって鉄道への思い入れをさらに強めていく。のちに鉄道テレビがピンチに陥った際、あずさ自身はその仕事ぶりを認められて民放キー局「はやぶさテレビ」に勧誘されるが、あずさは鉄道テレビでの仕事を選択し、会社を救うために奔走。以降も仲間たちと共に、鉄道オタク女子、すなわち「鉄子」への道を邁進していく。
鉄道テレビは鉄道オタクの巣窟
鉄道テレビは鉄道専門の局ということもあり、社員はいずれも筋金入りの鉄道オタク。あずさの教育係で撮影班の浜は撮り鉄、編集担当の熱田は界隈では「神」とも評される音鉄、鉄道テレビの創業メンバーで、妻子がいながらもいつも会社に連泊している神宮前はブルートレイン「あけぼの」を自らの青春と語るほどの乗り鉄。そんな三人を筆頭に、あずさはとにかく濃い鉄道オタクに囲まれて日々を過ごすことになる。もともと素直でまじめな性格のあずさは、彼らはもちろん、取材先で出会う鉄道を愛する人々と触れ合ううちに、スポンジが水を吸収するように鉄道の知識を身につけ、アナウンサーとしても成長していく。また、民放キー局「はやぶさテレビ」で鉄道番組「鉄道ジャンク」のレポーターを務める人気女子アナ「イガプン」こと井川さくらや、大学時代にミスコンで競った、実は時刻表オタクの安中榛名など、数々のライバルの存在も、あずさの成長を手助けすることとなる。
実在の鉄道や人物が登場
本作に登場する鉄道は京急電鉄や三岐鉄道、岳南電車をはじめ、すべて実在するもの。作中ではそれらの鉄道に関する細かい情報が語られており、さまざまな知識を学ぶことができる。また、鉄道オタク界隈で名の知られた人物も数多く登場し、物語の盛り上げに一役買っている。ただし、本作は現実を基にしたフィクションとなっており、これらの人物は物語の都合上、多くの場合女性化して登場する。
登場人物・キャラクター
二郷 あずさ (にごう あずさ)
アナウンサーを目指す女子大学生。年齢は22歳。愛知県猿投町(現在の豊田市の一部)出身。茶髪をショートボブにした美人で、大学ではミスキャンパスに輝いた経歴を持つ。手当たり次第にアナウンサー試験を受けているが、キー局はもちろん、地方局ですら引っかからずに日本全国30局の試験を落ちまくっている。そんな中、テレビ業界には違いないだろうとケーブルテレビ局「鉄道テレビ」に面接に行ったところ、二つ返事で採用される。ちなみに合格したのは、局長が「かわいいので自分の2号さんにしたい」という理由から。もともと鉄道にはまったく興味はなかったが、鉄道を愛する仲間たちとの触れ合いや、鉄道好きに特化した鉄道テレビでの仕事を通して鉄道の知識を学び、押しも押されぬ鉄道女子、すなわち「鉄子」になっていく。
浜 かいじ (はま かいじ)
ケーブルテレビ局「鉄道テレビ」で働く青年。鉄道の写真を撮るのが大好きな撮り鉄だが、時刻表オタクとしての一面も持つ。終電に遅れそうになっていたあずさを助けたことをきっかけに知り合い、その後、鉄道テレビに面接に訪れたあずさと再会。撮影班のため、レポーターを務めるあずさといっしょに番組撮影に行くことが多く、鉄道の知識がまったくない彼女のお守り役を担うこととなった。あずさといっしょに番組を作っていくうちに、鉄道オタクとしてはもちろん、アナウンサーとしても頭角を現していく彼女のことを気にかけ、彼女に飛躍するチャンスを作ってあげたいと考えるようになる。実は、かつて民放キー局「はやぶさテレビ」で働いており、現在は鉄道番組としてその名を知られるようになった「鉄道ジャンク」の番組起ち上げ期から携わっていた経歴がある。
クレジット
- 企画
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やまもり 文雄
書誌情報
鉄子の育て方 全3巻 講談社〈ヤンマガKCスペシャル〉
第1巻
(2014-07-23発行、 978-4063824933)
第2巻
(2015-01-06発行、 978-4063825541)
第3巻
(2015-07-06発行、 978-4063826326)