雑兵たちの日常をリアルに描く
本作の舞台となるのは、戦国時代の信濃国。小笠原軍と武田軍の戦いの中、雑兵である作兵衛とその弟分、豆助、武田軍に追われて作兵衛に助けられる武家の姫、つるたちの姿を描く。背景となる「塩尻峠の戦い」などは史実通り。小笠原長時や武田晴信(信玄)、馬場信春といった歴史上の実在人物が登場するが、メインとなる作兵衛たちはオリジナルキャラクターである。天下統一の野望や野心に一切興味がなく、金目の物の窃盗や支給される飯を目当てに戦に参加する雑兵たちの日常を、雑兵の詳細な実情を記した『雑兵物語』などの歴史資料をもとにリアルに描いている点が特徴である。
当時の庶民が食べていた料理が続々登場
本作最大の魅力は、当時の庶民や雑兵が食べていた料理が、リアルに描かれている点である。例えば、敗走中に食べるものがなくなった作兵衛は、落ち武者の死骸から「芋がら縄」を奪う。これは戦に出る兵士が通常の縄としての用途の他に、野戦食として携帯していたもの。里芋の茎を味噌汁で煮詰めて乾かして作っているため、刻んで煮て戻せば即席の味噌汁が出来上がる。他にも携帯保存食の干飯(ほしいい)、魚と野菜などを集めて煮込んだ「あつめ汁」、厩番に分けてもらった馬の飼料の煮豆を発酵して作る「納豆」など、珍しい食材や食べ物が次々と登場する。
「いかに飯を得るか」が物語の重要なテーマ
「WEB ザテレビジョン」掲載(2025年9月18日)の作者インタビューによれば、本作創作のきっかけは、新しく戦国時代物の連載を立ち上げる際、担当編集から「ご飯もの」を提案されたことだという。こだわった点としては、雑兵たちが「華々しい戦国武将たちとは合戦に対しての考え方が全く違うところ」である。彼らにとって「合戦は飯を食べに行く場所」「手柄を立てるより略奪する場所」である。また、飯についても「おいしい」という観点ではなく「いかに飯を得るか」が物語の重要なテーマになっているという。
登場人物・キャラクター
作兵衛 (さくべえ)
信濃国の村に住む料理好きの雑兵。25歳ぐらいの青年。田地を持たず、村の雑用や用心棒を生業とするが、小笠原家から戦の招集があれば、飯の支給や金品の略奪を目当てに真っ先に駆けつける。「塩尻峠の戦い」で敗走中に、武田軍に追われる武士の娘、つるを助け、村で共同生活を送ることになる。
つる
諏訪の矢島家に仕えていた武家の姫。年齢は15歳。武田軍に攻め込まれ家族全員を殺されてしまう。武田軍の追っ手に追われていたところを、作兵衛に救出され、使用人として作兵衛の家で暮らすことになる。一通りの学問と教養を備えた才女だが、ドジで不器用で食い意地が張っている。また、庶民の生活に関してはまったく知識がない。
書誌情報
雑兵めし物語 4巻 竹書房〈バンブーコミックス〉
第1巻
(2022-07-29発行、978-4801978058)
第2巻
(2023-05-29発行、978-4801980600)
第3巻
(2025-01-29発行、978-4801985483)
第4巻
(2025-10-29発行、978-4801988071)







