魔王城の料理番 ～コワモテ魔族ばかりだけど、ホワイトな職場です～

主人公の岩船紬（ツムギ）は、不幸の連続でホームレスになった20歳の女性。ある日突然異世界に召喚されるが、違法召喚だったようで日本に送還されそうになる。しかし、ホームレスに戻りたくないツムギは必死でお願いをし、「異世界人だとバレなければ」という条件で、何とか魔王城食堂で働く許可を得た。異世界人はものすごく珍しい存在で、バレたら博物館に展示されるかもしれないのだ。食堂の厨房は、ガラの悪い魔族たちばかりで、非力な人間であるツムギは罵倒されながら激務をこなさなければならない。しかし、衣食住が保証されている女子寮はツムギにとって天国である。こうして魔王城の食堂に転職したツムギは、やがてその健気（けなげ）さと不思議で美味い料理で、魔族の同僚・上司と打ち解けていく。

本作に登場する食材や調味料は、じゃがいもや人参、塩、砂糖といったおなじみのものもあるが、異世界特有のものも多い。しかし、ツムギは異世界に来てから、「鑑定眼」のスキルを身につけており、未知の素材を見ると「説明パネル」が表示され、名前や調理法がわかるようになっていた。そこでツムギは、現代日本の調理知識と「説明パネル」を利用して、新しい料理を提案していく。スライムの死体からゼラチンを抽出し、スライムゼリーを完成させたり、お酢と卵、塩でマヨネーズを手作りし、野菜の食べ方を知らない魔族たちにポテトサラダを提供したりする。非力で役に立たないと思われていたツムギだが、徐々に魔族の同僚と上司たちに認められていく。

魔王城食堂の料理長、龍人族のゾルト・クロイツは、体力に劣る人間のツムギに対し、「故郷に帰れ」「虚弱ザコ」などと罵る怖い上司である。本当は、ツムギをいつも心配しているのだが、それを隠すように厳しく接している。しかし、ツムギの健気さについ「かわいい」と漏らしてしまうほど、しだいに彼女に惹（ひ）かれていく。ツムギは厨房で働くうちに、ゾルトの優しさやみんなのために頑張る姿勢を知り、尊敬の念を抱くようになる。そして、いい仕事をしたあとは、ゾルトに褒められるのを心待ちにする。本作は、そんな照れ屋のドS男子と健気な犬系女子のコンビを描いたラブコメディである。