警察が弱体化し、マフィアが支配する世界
本作の舞台となっているのは、軍拡競争に明け暮れていた各国が、「禁兵器法(プロフィヴィジョン)」を制定し、自ら軍備・武装を解除してから500年が経過した世界。全世界を管轄する国際警察は、汚職や非武装化で弱体化しており、各地域はマフィアが支配しているのが実態である。マフィアは「みかじめ料」をもらうかわりに、外敵から地域を守るという役割を果たしているのだ。なお、マフィア同士の争いや縄張りの重複を避けるために、「州協会(クーポラ)」があり、協会を統括する「最高幹部会(コミッショナー)」のもと、多くの組織が参加している。15年前、最高幹部会の地位にあり、時の支配者だった「魔王(ゴッドファーザー)」ドンが暗殺されたことで、現在は覇権争いが激化している。そんな裏社会の関心事は「魔王の後釜に座るのは誰か?」「魔王の隠し子は本当に存在するのか?」という二つであった。
まだ見ぬ母を探して旅立つネロ
ショーパブ「クレイジーラビッツ」のオーナーママに拾われて育った少年ネロは、いつか本当の両親を探すために一生懸命パブで働いていた。そんなネロのもとに、プッチという亡霊が現れた。プッチによれば、ネロの父は、15年前に暗殺された魔王、ドン・パゾリーニだという。長きに渡り世を支配してきたパゾリーニ家は崩壊したが、魔王の妻と生まれたばかりの子は別々に生き延びた。様々な情報をたどってやっと見つけたのが、魔王の隠し子、ネロだったのだ。やがて、ケタ外れの懸賞金がかけられたネロの存在がバレ、街はギャングだらけになり、「クレイジーラビッツ」も襲撃される。しかし、ネロはプッチの力を借りて無法者たちを一掃し、冒険の旅に出ることにする。プッチの目的はパゾリーニ家の再興だが、ネロはそんなことにこだわっておらず、まだ見ぬ母に会いたい一心であった。
呪具使い同士のバトルが魅力
プッチはパゾリーニ家に長く仕えていた亡霊で、現在は「ファンタズマ」と呼ばれる、死者が宿る呪具として存在している。ファンタズマは、生前に武勇をなした者の魂を、得物(プッチの場合はバット)に封じ込めた裏社会の闇の道具。プッチが憑依(ひょうい)することにより、ネロはバットを手にしたタキシードの男に変身し、超人的な力を発揮する。ネロと同様の「呪具(ファンタズマ)使い」は他にも登場する。例えば、フェリーニ家直属の殺し屋リリィは、拷問執行官のアンジェリカが宿るグローブが武器。また、同じくフェリーニ家の鑪忌多郎は、正体不明の殺し屋、トールマンが宿る日本刀・惨哭丸を操る。これら、ユニークな呪具使い同士のバトルも、本作の魅力の一つである。
登場人物・キャラクター
ネロ・パゾリーニ
「魔王」ドンの隠し子で15歳の少年。父が暗殺された際、ショーパブ「クレイジーラビッツ」のオーナーママに預けられて育つ。パゾリーニ家再興を目論む、呪具(ファンタズマ)のプッチとともに、母を探す旅に出る。プッチの憑依で、オールバックで顔面に傷を負ったタキシードの男に変身して戦う。ケタ外れの懸賞金がかけられており、名前も顔もわからない「ザ・ハッシュ」と記載された手配書が出回っている。
プッチ
パゾリーニ家に100年仕えた亡霊。生前は、腕利きの殺し屋「スカーフェイス・プッチ」として名を馳(は)せた。現在は愛用していたバットに封印された「ファンタズマ」という呪具として存在する。宙に浮く丸みを帯びた凧(たこ)のような容姿で、とんがった小さな耳と、先端がスペードの形をした尻尾が特徴。憑依することでネロに力を与える。
書誌情報
FANTASMA 全3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2013-10-04発行、 978-4088708843)
第2巻
(2014-02-04発行、 978-4088800134)
第3巻
(2014-07-04発行、 978-4088801445)