五老海練磨と拝庭きょうだいの出会い
中学3年生の練磨は、幼い頃から母方の祖父に古武術「凪和心流」の稽古を受けていたが、4年前に突然祖父は姿をくらましてしまう。練磨は修行相手がいなくなったことで虚無感に襲われるが、そんな彼の前に、武芸家を名乗る朱琵が姿を現す。朱琵から圧倒的な剣技の差を見せつけられた練磨は、彼女を超えることを新たな目標に据え、さらに朱琵の誘いによって天門武芸十八般高校へと赴く。そこで、朱琵の双子のきょうだいである丈九朗との練習試合を行い、敗れるものの善戦する。強者たちとの戦いを望む練磨は、悪戦苦闘しながらも天門武芸十八般高校に合格を果たし、新しい生活の中で同級生や先輩たちと修行に励むことになる。
伝説の流派「凪和心流」
練磨が修行に励んでいる「凪和心流」は、江戸時代中期に「凪利芎」と呼ばれる武士によって開かれた古武術。利芎は両腕を失っている影響から、相手のつま先を踏みつけることでバランスを崩させる「地縫い」や、足の指で耳をつまんでそのまま投げる「蝸牛返し」など、脚を利用した体術および剣術を得意としている。凪和心流の修業の一つに、つねに素足で生活するというものがあり、これを長いあいだ欠かさず行うと足の裏の筋肉が土踏まずを覆うように発達する。これによって生み出される走力や瞬発力、足を手のように扱う器用さで、凪和心流の継承者たちは自分より身体能力に優れた武芸家たちにも引けを取らない実力を発揮する。
武芸の名門校「天門武芸十八般高校」
練磨が通う天門武芸十八般高校は、「天戸岳」と呼ばれる山脈の一角に建つ教育施設。剣術や槍(そう)術、弓術、忍術など、18種類に及ぶ日本を代表する「武芸十八般」を学ぶために設立された施設で、生徒たちはさまざまな流派の武芸を修めている。中でも、朱琵と丈九朗のきょうだいは、1年生の時点で校内屈指の成績を収めている。また、弓道の達人である望宮棗や針術のエキスパートの竜禅公実など、優れた資質を持つ者が毎年入学してくる。なお、文武両道を是としており、入学には実技のほかに学科試験も受ける必要がある。
登場人物・キャラクター
五老海 練磨 (いさみ ねるま)
天門武芸十八般高校に通う1年生の男子。学友たちからは「ネル」のあだ名で呼ばれている。幼い頃から母方の祖父に古武術「凪和心流」の教えを受けており、武士や忍者に関して強い興味を抱いている。祖父と共に田舎に暮らしていたため文明に疎く、電車に乗ったこともない。父方の祖父は超大手電子メーカー「ISAMI電算」の会長で、母親の柊月からあとを継ぐよう求められているが、勉学が苦手であることや、凪和心流の修業に心血を注ぎたいとの考えから、その申し出を拒絶し続けている。凪和心流の修業の一環として、つねに裸足で生活しており、その影響から天門武芸十八般高校の中でも屈指の脚力を誇る。武芸家としては朱琵や丈九朗には及ばないものの、彼らからも将来性を嘱望されている。
拝庭 朱琵 (はいば あけび)
天門武芸十八般高校に通う2年生の女子。丈九朗とは双子の関係だが、どちらが先に生まれたか不明で、互いに「自分が先に生まれた」と言い張っている。天門武芸十八般高校の中でもトップクラスの実力を誇る才女で、厳しい修業を積んでいた練磨が一目で敵わないと思い知らされた。丈九朗と共に「拝庭雲槍流」と呼ばれる流派を継承しており、朱琵自らが「丈九朗と真剣に戦えば、どちらかが死ぬ」と公言している。丈九朗とは双子であると同時に、武芸の頂点を競い合うライバルでもある。真の実力を隠していることに丈九朗から不満を抱かれているが、それ以外は良好な関係を築いている。
書誌情報
NERU-武芸道行- 全3巻 集英社〈ジャンプコミックス〉
第1巻
(2021-11-04発行、 978-4088828718)
第2巻
(2022-01-04発行、 978-4088830087)
第3巻
(2022-02-04発行、 978-4088830131)