死役所

死役所

臨時職員として市役所に勤務経験のある作者、あずみきしのデビュー作にして代表作。彼岸と此岸の狭間、天国や地獄へ行く前に死者達が訪れる「シ役所」と呼ばれる施設が舞台。現代世相に対する鋭い風刺を効かせつつ、死者達や職員達の織り成す人生模様が描かれる、オカルティックな一話完結型の現代ドラマ。新潮社「月刊コミック@バンチ」2013年11月号から連載を開始し、同誌が誌名変更した「月刊コミックバンチ」で2024年5月号まで連載。同誌がリニューアルした「コミックバンチKai」に引き継がれ、2024年4月26日から連載。2019年10月に実写ドラマ化され、テレビ東京系列にて放送。主人公のシ村を松岡昌宏が演じる。

正式名称
死役所
ふりがな
しやくしょ
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
バンチコミックス(新潮社)
巻数
既刊26巻
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あらすじ

第1巻

いじめに遭って自殺した子供がシ役所にやって来た。あとを追うようにしていじめの主犯の子供もやって来るが、事情を調べると彼は、自殺した子供の父親に殺されたのだという。シ役所で手続きを済ませたいじめっ子は、殺された身でありながら地獄行きとなる。自殺した子供はそれを見て、成仏する決意をするのだった。(エピソード「自殺ですね?」)

他人をかばって事故死した若い女性の工員が、シ役所での手続きにおいて、特例として天国行きの優先権を得る事のできる「挺身申請書」を提出する事を許された。だが彼女は他人をかばって死んだ事を後悔しており、その申請はしたくないと言い出す。(エピソード「命にかえても」)

虐待を受け、冬場にベランダに放置されて凍死した女の子がシ役所にやって来た。総合案内のシ村が他殺課に案内するが、彼女は自分の死因は他殺ではないと主張し、けなげに母親の事をかばおうとする。(エピソード「あしたのあたし」)

ある男が、働きたくないというだけの理由で大量殺人を犯し、死刑になった。死刑囚として死んだ者は、シ役所の職員になる資格を有しており、男には職員になるか、冥土の道に行くかの選択肢が与えられる事となった。怠惰な性根のその男は、働きたくないからと、冥土の道へ行く事を選択。彼との別れ際、シ村は珍しくいつも浮かべている笑みを崩し「永久に彷徨ってろ」と冷酷な言葉を投げ掛ける。(エピソード「働きたくない」)

第2巻

シ役所の職員、ハヤシの好きな漫画の作者が、シ役所にやって来た。彼は事故で視力を失った事で漫画家としての活動の道が断たれており、自殺か事故か際どい死亡状況で、漫画家本人も自分が自殺したのか、それとも事故で死んだのかよくわかっていなかった。しかし、シ役所ではこれを事故と断定して処理。同時に現世でも、漫画家の仕事仲間達は、彼は自殺などするような人間ではなかったと、その遺徳を讚えていた。(エピソード「腐ったアヒル」)

妻に先立たれ、隣人達とうまく付き合えない男が孤独死して、シ役所にやって来た。本人は、それなりに隣人達と付き合っていたので、誰かが自分を発見してくれるだろうと語っていたが、実際にはアパートに横たわるその亡骸は、誰にも発見されぬままウジが湧いていた。(エピソード「男やもめ」)

シ役所の他殺課の職員であるイシ間には、とある過去があった。大事に養育していた姪を暴漢に強姦されたイシ間は、鍬を振り上げて犯人達を殺害して死刑となり、シ役所にやって来たのである。(エピソード「石間徳治」)

初デートの最中に交通事故で亡くなった少女が、無残な姿でシ役所にやって来た。年若くして死んだ少女に、シ役所の人々も同情的だったが、何より本人の動揺が深刻な状態であった。特に少女は、好きな人の前に自身の無残な亡骸を晒す事になった事に対し、ひどく狼狽していた。(エピソード「初デート」)

第3巻

死病を患っている駆け出しの漫才師とその相方は、出世のためのチャンスを摑もうとしていた。だが晴れ舞台の直前、男は体調を悪化させて入院する事となった。晴れ舞台には何とか車椅子で駆けつけて舞台に臨んだものの、結局彼はその後亡くなってしまうが、残された相方は成功への道を歩み始める。そして、亡くなった漫才師は、晴れ晴れした表情で成仏していくのだった。(エピソード「カニの生き方」)

ながらスマホで歩いていて、階段から転落して死亡した少女がシ役所にやって来た。実はその死は、友人がからかって声を掛け、足を踏み外させた事によるものであったが、死亡した少女が真相を知る事はついになかった。(エピソード「前を見て」)

急性アルコール中毒で死亡した三樹ミチルが、自分の死を他殺として処理してくれなければ成仏しないとだだをこね、シ役所に居座っていた。そしてミチルは、シ村の能面のような顔の裏にある素顔に興味を持ち始める。(エピソード「成仏しません」)

第4巻

シ村が死刑囚として拘置所にいた頃の刑務官が、現世で死亡してシ役所にやって来た。刑務官は、シ村がシ役所にいるという事実に驚愕の表情を見せる。そして彼は三樹ミチルに、拘置所時代のシ村の奇妙な印象を語る。(エピソード「吊るす者 吊るされる者」)

浮気と麻薬に溺れた果てに破滅し、事故死した主婦がシ役所にやって来た。彼女に対し、ミチルは真相が発覚しないまま死ねて満足か、と厳しい言葉を浴びせかける。(エピソード「堕ちる」)

自分の父親を殺した犯人に、出所後、逆恨みで殺害された若い男性がシ役所にやって来た。ちょうどその頃、シ役所の職員達がみな元死刑囚である事を知ったミチルは、人を殺す事の意味について苦悩する。(エピソード「人を殺す理由」)

ある時、ミチルはシ村が冤罪により死刑になった事を知る。シ村の哀れな人生を知ったミチルは涙を流し、シ村に別れの挨拶をして成仏していく。(エピソード「シ村さんの過去」)

第5巻

ハヤシはもともとお爺ちゃん子であった。しかし成長したハヤシは、その祖父が亡くなった時、実は彼が祖父ではなく、息子の嫁に手を出した男、つまりハヤシ自身の父親であった事を知る。その事実を知らされたハヤシの恋人は、ハヤシの存在を疎んじるようになり、ほかの相手と通じるようになってしまう。その事実を知り、ハヤシは妻と間男とそのあいだに生まれた子供を殺害する。(エピソード「林晴也」)

さえない男がシ役所にやって来た。彼は動画配信を趣味にしていたのだが、自分が「これから死ぬ」という実況動画をネタにした事によって、しばらくのあいだ世間から注目を集めるのだった。(エピソード「命の放送」)

ヒーローごっこをするのが大好きな子供が、子猫を助けようとして川に落ち、亡くなった。残された友人は彼の死を受けて、自分達もヒーローのようになりたいと決意を固める。(エピソード「ヒーローごっこ」)

第6巻

「彫刻さん」と呼ばれるホームレスの男がいた。彼は地蔵を彫る才能に優れていたが、世間に認められる事はないまま、水の事故で亡くなった。彼を社会復帰させようと奮闘していた現世の役場の職員達の手によって死後、壁に彫り残された地蔵達は、文化財として遺される事になる。(エピソード「彫刻さん」)

手羽先をいつも食べている少女が、「鶏でも捌くように」友人の少女を殺害、解体した。シ役所にやって来た被害者の少女は、なぜ自分は殺されたのか、彼女の動機がさっぱりわからないと語る。(エピソード「手羽先」)

ニシ川が生前に殺した相手の家族は、マスコミに追い掛け回されて苦悩していたが、ニシ川が処刑されたというニュースを知ってようやく安堵していた。それと対照的に、その後シ役所の職員となったニシ川は、自分の過去についてあまり苦悩していなかったが、シ村が自分達と違って殺人歴を持たない事実を知り、彼の過去に興味を抱く。(エピソード「愛する人」)

第7巻

カルト新興宗教団体、加護の会に洗脳されたまま、事故死した青年がシ役所にやって来た。実は生前に加護の会とかかわりがあったシ村は、その青年に異様なまでの関心を示し、その会の現状について根掘り葉掘り聞こうとする。(エピソード「加護の会」)

火事で死んだ男がシ役所にやって来た。彼は、自分の過失のせいで遺族に迷惑をかけると苦悩していたが、実は火事の原因はその男ではなく、隣室からの出火であった。だが、罪悪感に苦しむのも復讐心に苦しむのも似たようなものだろうという事で、職員達は誰も彼に真実を告げなかった。(エピソード「気遣い」)

久しぶりの新入職員としてハシ本がシ役所にやって来て、他殺課に配属される事になった。そんな中、同僚からパワハラを受けて激高したハシ本は、カッターナイフを振りかざすが、同僚にカッターナイフを取り上げられ、自分の首を切られてしまう。そこでハシ本は、死者であるため死なない代わりに、新たな傷痕は今後消える事がない事を知る。(エピソード「新入職員」)

第8巻

不妊治療を受けていた夫婦が、どうにか妊娠に成功するものの、結局は流産してしまう。そして、死産となったその子供だけがシ役所の死産課にやって来る。(エピソード「母」)

風俗嬢を強姦しようとして逆に殴り殺された男が、シ役所にやって来た。その所業から、シ役所中の者にありとあらゆる罵詈譫謗を浴びた彼は、うなだれながら成仏していく。(エピソード「愛を買う」)

インフルエンザで死亡した子供がシ役所にやって来た。お人好しのイシ間は、子供を一人で行かせるのは忍びないと、自分も同伴すると言い出す。すでに成仏のための辞令が出ていた事もあり、イシ間はその子供と共に成仏する事を選ぶのだった。(エピソード「理想の家族」)

イシ間は生前、強姦事件の報復のため殺人事件を起こしたが、当初は被害者である姪にはその事実を告げていなかった。だが、姪が強姦事件で深く苦悩している事を知り、刑に処される前に、犯人達は自分がこの手にかけたと打ち明ける。そんな事実を知るシ役所の職員達は、時を経てついに成仏する事になったイシ間を祝福しながら送り出す。(エピソード「お気を付けて」)

第9巻

介護職員の女性が、自分の母親が認知症になったため、職を退いて自宅介護を始めた。だが、精神的に追い詰められた彼女は、無理心中してしまう。実は、認知症の母親はずっと「自分を殺してくれ」と願い続けており、シ役所ではその事件は他殺ではなく嘱託殺人として処理されるのだった。(エピソード「託す」)

病で倒れた女性が自分の娘に、とある有名なミュージシャンが父親である事を伝えた。もともとミュージシャンは娘を認知していなかったが、事が明るみに出たために子供を引き取る事を宣言。やがて、病の女性はシ役所に姿を現したが、ハヤシは彼女に対し、無責任な言動なのではないかと詰め寄る。(エピソード「遺すべきもの」)

仕事のストレスで、突発的に自殺してしまった青年がシ役所にやって来た。詳しく調べれば自殺しなければならないほどの事情はどこにもなく、きっかけはほんの少しのボタンの掛け違いであった。些細な出来事が招いた悲劇的な結末に、職員達も悲しみをあらわにする。(エピソード「自己判断」)

ある女性が脳溢血で死んでしまう。それ自体は珍しい事ではないが、実は女性にはひきこもりの息子がいた。その息子は家から出る事がまったくできず、ただ死を待つばかりの身となってしまう。(エピソード「隠しごと」)

登場人物・キャラクター

シ村 (しむら)

シ役所の職員の一人で、総合案内を務める。若い男性のような姿をしている。生前の本名は「市村正道」。つねに奇異な笑みを張り付けたような顔をしていて、滅多に素の表情を見せる事はない。誰に対しても慇懃無礼に振る舞う。死因は死刑であったが、実は職員達の中でシ村だけは冤罪によって処刑された死刑囚であり、生前に殺人を犯してはいない。 そんな事情のため望めば成仏する事もできるが、自らの意志でシ役所に残り続けている。

ニシ川 (にしかわ)

シ役所の職員の一人で、自殺課に所属している。若い女性のような姿をしている。生前の本名は「西川実和子」。仕事は有能だが、基本的にクールで、人付き合いの悪い毒舌家。生前は理髪師であったが、連続殺人事件を起こし、死刑に処されてシ役所の職員となった。

イシ間

シ役所の職員の一人で、他殺課に所属している。中年男性のような姿をしている。生前の本名は「石間徳治」。義理人情に厚く、涙もろい。生前、大事にかわいがっていた姪を強姦した犯人を殺害した罪で、死刑に処されてシ役所の職員となった。のちに「任期満了の辞令」が届き、成仏した。

ハヤシ

シ役所の職員の一人で、生活事故死課に所属している。若い男性のような姿をしている。生前の本名は「林春也」。趣味はシ役所にやって来た死者達が持っている漫画を集める事。幼なじみであった妻に不倫され、また妻とのあいだの子供も間男とのものであった事が判明。ハヤシは激昂して妻と間男とその子を殺害、死刑に処されてシ役所の職員となった。

三樹 ミチル (みき みちる)

シ役所にやって来た若い女性の死者。死因は急性アルコール中毒による事故死だが、死亡時にいっしょに飲み会に参加していた友人を逆恨みしており、自分は殺されたのだから殺人として処理しろ、と言い張ってシ役所の職員達を困らせた。冥土の道行きになる直前までシ役所にいたが、シ村がシ役所の職員となった真の経緯を知って、憐れみを抱いた事が心変わりのきっかけとなり、無事に成仏した。

場所

シ役所 (しやくしょ)

死者達が赴く場所。来訪者はここで手続きをする事で、天国もしくは地獄へ行く事ができる。見た目や雰囲気は現実世界の市役所とそっくりである。それぞれの死因によって受付課は異なり、自殺課や他殺課など、さまざまな部署に分かれている。死刑課という部署もあるが、死刑執行によりやって来る死者は滅多にいないため専任の者はおらず、必要な時はほかの課の職員が受け持ちする。 シ役所の職員達は全員が元死刑囚の死者だが、職員達も何らかの条件を満たす事で成仏する場合もある。この場においては現世の様子を知る事はできず、また、それぞれの死者達が天国に行くのか地獄に行くのかは、職員達も知らない。

冥土の道 (めいどのみち)

シ役所にやって来てから四十九日間、必要な手続きを済ませなかった者達が行く事になる場所。天国や地獄とはまた別で、真っ暗で何もない場所であり、冥土の道に行く事になった人間は、永遠にここで彷徨い続ける事になる。

書誌情報

死役所 26巻 新潮社〈バンチコミックス〉

第1巻

(2014-04-09発行、 978-4107717412)

第2巻

(2014-09-09発行、 978-4107717719)

第4巻

(2015-09-09発行、 978-4107718426)

第6巻

(2016-07-09発行、 978-4107719041)

第9巻

(2017-08-09発行、 978-4107720023)

第14巻

(2019-10-09発行、 978-4107722232)

第21巻

(2022-07-07発行、 978-4107725172)

第22巻

(2022-12-08発行、 978-4107725523)

第23巻

(2023-05-09発行、 978-4107726001)

第24巻

(2023-10-06発行、 978-4107726582)

第25巻

(2024-04-09発行、 978-4107727060)

第26巻

(2024-09-09発行、 978-4107727510)

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