日本酒がイケメンに擬人化したヒューマンコメディ
本作は日本酒と酒造りをテーマにしており、祖父の金蔵から受け継いだ酒屋を営む主人公の吟と、実在する日本酒を擬人化したキャラクターたちが登場する。各エピソードでは異なる客が登場し、吟が一歩己をはじめとする個性豊かな日本酒たちと共に客をもてなす様子が、1話完結のショートストーリー形式で展開される。客の悩みや気分に合わせた日本酒の解説も盛り込まれており、その過程で吟や日本酒たちと祖父との思い出も掘り下げられ、温かみのあるヒューマンドラマとしても楽しめる。タイトルの「あらばしり」は、もろみを搾った際に最初に流れ出る、日本酒の濃厚で希少な部分「荒走り」に由来している。
祖父の遺言と日本酒銘柄を名乗る三人
祖父の金蔵の遺言を受け取った吟は、彼が暮らしていた自宅兼酒屋を訪れ、幼い頃に金蔵と過ごした思い出に思いを馳せていた。吟の母親が金蔵とケンカして以来、吟は大好きだった祖父と疎遠になり、ほとんど会うことがなかった。自分一人で広大な屋敷の維持や酒屋の経営は困難だと考えた吟は、弁護士に相談したうえで売却を決意する。しかし翌朝、吟の目の前に現れたのは、金蔵が愛した日本酒の銘柄を名乗る三人のイケメンだった。彼らはそれぞれ「一歩己」「赤武」「加茂錦」と名乗り、金蔵の孫である吟のことも以前から知っていると語る。当初は単なる居候だと思い込み、彼らの言葉を信じなかった吟だったが、弁護士には彼らの姿が見えていないことに気づき、彼らが人ならざる存在であることを確信する。
金蔵の遺志を継ぐ吟の挑戦
実は、金蔵には日本酒を人の姿に変える不思議な力があり、その力は孫の吟にも受け継がれていた。吟は店を手放すことをやめ、人の姿となった日本酒たちと共に店を続けていくことにした。吟自身は酒の知識に乏しかったが、一歩己たちのサポートを受けながら、訪れる客を心を込めてもてなしていた。ある日、雑誌編集者の鶴田ゆりが客として店を訪れる。彼女は仕事に対する意欲はあるものの、企画がなかなか通らず空回りしている現状に落ち込んでいた。そんな彼女を励ますために、一歩己が名乗り出る。彼は「一歩己」という銘柄に込められた思いや由来を語りながら、ゆりの心を温かく励ましていく。すっかり元気を取り戻したゆりを見送ったあと、吟たちは金蔵の遺影に静かに手を合わせるのだった。
登場人物・キャラクター
伊藤 吟 (いとう ぎん)
東京で日本酒専門の酒屋を営んでいた金蔵の孫である青年。広大な屋敷に併設された酒屋を祖父から受け継いだ。成り行きで経営を任されたものの、日本酒に関する知識はまだ乏しい。幼い頃は祖父を慕う“おじいちゃん子”だったが、母親と祖父がとケンカして以来疎遠になり、最期の時にも立ち会えなかった。金蔵に似た優しく思いやりのある性格で、祖父から日本酒を人間の姿に変えるという特殊な力を受け継いでいる。「一歩己」をはじめとする日本酒たちと心を通わせながら、訪れる客を温かくもてなしている。
一歩己 (いぶき)
福島県古殿町の自然豊かな環境にある「豊国酒造」で造られる日本酒。吟と金蔵の力によって人の姿を得たキャラクターとして登場する。外見はショートヘアの穏やかな青年で、温厚な性格ながらも真っ直ぐで強い芯を持っている。「赤武」「加茂錦」と共に、金蔵を亡くしたばかりの吟が最初に出会った日本酒の一人であり、疎遠になっていた吟に代わって仲間と共に金蔵の最期を看取(みと)った。亡くなった今もなお、金蔵を慕い続けている。
クレジット
- 原案
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橘 ケンチ , 平沼 紀久
書誌情報
あらばしり 2巻 講談社〈ワイドKC〉
第2巻
(2023-03-09発行、978-4065294109)
あらばしり 1巻 講談社〈プレミアムKC〉
第1巻
(2021-08-06発行、978-4065240335)







