ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される

没落貴族であるシャデラン男爵家には、二人の娘がいた。明るく社交的でお姫様のような姉、アナスタジア・シャデランと、ずたぼろの服を着て、召使いのように扱われている妹のマリー・シャデランである。そんなマリーの18歳の誕生日、シャデラン男爵は借金をしてパーティーを開く。それは、マリーの誕生日を名目にした、アナスタジアのお披露目会であった。破綻寸前のシャデラン家を立て直すために、アナスタジアの良縁を探そうという計画である。誕生日にも関わらず、地味な灰色のワンピースで出席させられたマリーは、華やかなパーティーを離れて、ひとりぼっちで庭にいた。するとそこへ、パーティー会場を探す、イケメン男性が現れた。国内一の大富豪キュロス・グラナド伯爵である。キュロスの礼服を見たマリーは、それがイプサンドロス共和国のものだと見抜く。マリーは学校でイプサンドロスの言語を専攻していたのだ。イプス語を話すマリーの知性と容姿に惹（ひ）かれたキュロスは、彼女の手を取り「綺麗（きれい）だ」と告げる。しかし、驚いたマリーは逃げるようにその場を立ち去ってしまった。それから1か月後、キュロス・グラナド伯爵から、アナスタジア・シャデランにプロポーズの手紙が届く。シャデラン家は大喜びである。まもなく結婚が決まるが、アナスタジアはグラナド伯爵家に向かう途中、事故死してしまう。そこでシャデラン男爵は、姉の代わりに妹のマリーをキュロス・グラナド伯爵に嫁がせようと計画。その旨を手紙で送り、マリーを連れてグラナド伯爵家へと乗り込んだ。納得できないキュロスは怒り狂い、マリーを追い返すよう、従者に言いつける。しかし、実際にマリーの姿を見たキュロスは、驚きとともに彼女を迎え入れた。キュロスは、マリーの誕生パーティーで、主役のようだったアナスタジアを「マリー」だと思い込み、庭で出会ったマリーを「アナスタジア」だと勘違いしていた。キュロスが本当にプロポーズしたかったのは、マリーだったのだ。