のの湯

のの湯

車夫として人力車を引く女性の鮫島野乃は、風呂なしながら銭湯に入り放題という特典のあるアパート、湯毛荘に住むことになった。東京浅草を舞台に、専門学校生の湯毛岫子や留学生のアリッサ・リベラと三人で共同生活しながら、大好きな銭湯を巡る日々を送る野乃の姿を描く、ハートフル下町ストーリー。各エピソードの最後には、作中に登場した実在の銭湯を紹介するコラム「のの's 銭湯memo」も収録されている。「もっと!」Vol.5からVol.7にかけてと、「コミックmotto!」で掲載されたのち、「Championタップ!」2015年1月から掲載の作品。

正式名称
のの湯
ふりがな
ののゆ
作者
ジャンル
その他ゲーム・趣味・実用
 
日常
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

東京の浅草で人力車の車夫を務めている鮫島野乃は、女性でありながらもお客さんを乗せ、合計200キロにもなる人力車をものともせずに、汗だくになりながら下町を走り回る日々を送っている。そんな野乃は銭湯が大好き。仕事終わりに銭湯へ行き、汗を流すのを日課としている野乃は、この日も蛇骨湯を訪れた。周りを気にすることなく、素っ裸になってすべてを洗い流し、全身すっきりした野乃の目に飛び込んできたのは、家賃4万円、トイレと台所は共同の風呂なしアパート「湯毛荘」の入居者募集のチラシだった。そこに銭湯入り放題の文字を見つけた野乃は、チラシを握りしめ、乾かし途中の濡れ髪もそのままに銭湯をあとにして相手先に連絡を入れた。後日、内覧に行って入居が決まった野乃は、管理人の千夜子に挨拶を済ませると、ひょんなことから千夜子の孫の湯毛岫子のアルバイトを手伝いに行くことになる。当の岫子は、犬の散歩のアルバイトを請け負っていたが、人手が足りずに立ち往生していた。その現場に到着した野乃は、岫子から逃げ出した犬をいきなり追いかけることになってしまう。結果、犬は無事確保したものの、犬もろとも勢い余って水たまりで転倒した野乃は、全身泥だらけになってしまう。飼い主からお叱りを受けたあと、野乃は自分が湯毛荘の入居希望者であることを明かすと、岫子を誘って、大黒湯を訪れる。初対面でいきなり裸の付き合いをすることになった岫子は若干引きつつも、押しが強めの野乃に嫌悪感を抱くこともなく、二人は銭湯談議に花を咲かせる。

第2巻

銭湯大好き女子の鮫島野乃は、銭湯入り放題という特典付きの風呂無しアパート「湯毛荘」で暮らし始め、同居人の湯毛岫子アリッサ・リベラと三人で、楽しく銭湯巡りをする日々を送っていた。そんなある日、久松湯を訪れていた三人が、恋愛話に花を咲かせていると、岫子の誕生日が先週だったことが判明する。今年は本気で彼氏を作ろうと宣言する岫子とアリッサに、野乃はお祝いを兼ねて自分が引く人力車で浅草コースを巡ってみないかと提案すると、二人は即答で快諾する。後日、野乃が引く人力車に乗りこんだ岫子とアリッサは、雷門や東京スカイツリー、すみだ水族館などベタな観光地から、路地裏の穴場スポットまで、丸1日かけて東京の下町を堪能する。その途中、車夫仲間の榊汰助から野乃にかかってきた電話に出た岫子は、汰助の話から自腹を切って人力車を長時間貸切ることによる車夫のリスクの大きさを聞かされ、その金額が安アパート家賃ひと月分くらいに相当することを知る。自分だったら友達は絶対に乗せないと語る汰助は、同時に、よほど仲がいいんだなと三人の関係に感心。話を続けようとすると、岫子は衝撃のあまり電話を途中で切ってしまう。その後、野乃と岫子、アリッサは三人らしくいつもの調子でシメの銭湯、薬師湯へと向かう。岫子は1日分の体力を使い果たした野乃を見て、複雑な面持ちになり、ついごめんねと声を掛けると野乃は自分の人力車に友達を乗せて走るのが夢だったと語り、岫子にありがとうとお礼を言う。岫子は、誕生日のお祝いをしてくれた野乃にお礼を言わなければならなかったのに、先にお礼を言われてしまったことで、野乃に素直にお礼を言えなくなってしまい、へそを曲げてしまうが、これをきっかけに三人は絆を深めていく。

第3巻

恋バナが苦手な鮫島野乃は、不器用な湯毛岫子、自分に正直なアリッサ・リベラと共に風呂なしアパート「湯毛荘」で暮らしていた。タイプがまったく違う三人は、小さなことでぶつかり合うこともしばしば。それでもいっしょに銭湯のお湯に浸かればすぐに仲直りする、そんな不思議に気の合う関係だった。そんなある日、岫子が合コン相手の男性とデートの約束をしたことが判明。約束は来週末だが、その前に下見に行っておきたいと岫子が話すため、三人はデートの下見に吉祥寺を訪れることになった。案内役は、意外にも吉祥寺に何度か行ったことがあるという野乃。野乃は、人力車のお得意様が吉祥寺に住んでおり、何度か食事を御馳走になったことがあったのだ。そんな野乃率いる一行は、吉祥寺に到着。デート当日の予定を加味し、まず公園に行くことにした三人は、さっそく野乃イチオシの手漕ぎボートに乗ることにした。あまりにもベタすぎる展開に今後が不安になる岫子だったが、その不安はまさに的中。小さなボートに三人が乗り込み、初めてボートに乗るという野乃がオールを握る。車夫を務める野乃なら器用にこなしそうに思えたが、ボートは漕いでも漕いでもぐるぐる回ってしまい、意外にも悪戦苦闘。交代を申し出たアリッサがボートで立ち上がり、転覆しそうになるなどハプニング続きで、岫子は辟易する。なんとかボートが前進するようになったのは、15分経過した頃だった。その後、小腹がすいた三人は、ネットで見つけたかわいいスイーツのお店を探し、歩き回るが、野乃が地図を見ながら探しても見つからず、結局道を間違えていることに気づく。調べ直し、改めてお店に向かおうとした矢先、野乃が何かを見つけて走り出す。それは、銭湯「弁天湯」だった。

メディアミックス

TVドラマ

2019年4月14日から6月23日にかけて、本作『のの湯』のTVドラマ版『のの湯』が、BS12トゥエルビで放送され、dTVチャンネル、ひかりTVなどでも放送されている。キャストは、鮫島野乃役を奈緒が、湯毛岫子役を都丸紗也華が、アリッサ・リベラ役を高橋ユウが演じている。

登場人物・キャラクター

鮫島 野乃 (さめじま のの)

浅草で車夫を務める女性。くるくる天然パーマのベリーショートヘアで、快活ながらおしゃれと恋話はちょっと苦手。客を乗せ人力車を引くという力仕事に勤しんでいるため、日々筋トレは欠かさず、いつも汗だく。そのため、仕事のあとに入るお風呂が大好き。特に銭湯が大好きで、都内の銭湯に詳しく、強い思い入れを持っている。スマートフォンではなく未だにガラケーを愛用しており、銭湯の営業時間を毎日のアラームに設定している。身につけるものは実用的なものを好む実用主義者だが、実はかわいいものも好き。食事にも重きを置いているため、三食きちんと食べられないと精神的に落ち込む。ある時、引っ越し先を探していたところ、銭湯の蛇骨湯に貼ってあった湯毛荘の入居者募集の張り紙を発見。入居者は銭湯に入り放題という記載を見て、速攻で申し込んだ。それ以来、管理人の千夜子にはよくしてもらっており、家族のような関係を築いている。部屋は湯毛岫子のとなりに位置する。岫子とは初対面時から銭湯に縁があり、入居後には同じく入居者のアリッサ・リベラも加わり、裸の付き合いが増えた。リンスが面倒で、リンスインシャンプーを愛用しているほか、気を抜くとどこでも服を脱ぎっぱなしにするなど、ちょっとずぼらなところがある。実は見合いを進めようとする父親と大喧嘩をして、地元を出て東京にやってきた。お金もなかったため、練馬に住む野乃の兄の家で1年ほど居候をしていたが、新居を決めて突然出て行ってからは連絡を取っていない状況になっている。牡牛座生まれで、血液型はA型。

湯毛 岫子 (ゆげ くきこ)

トリマーの専門学校に通っている女性。千夜子の孫で、年齢は20歳。湯毛荘の2階に一部屋借りて下宿している。幼い頃から浅草で風呂なしの家に住んでいたため、銭湯通いが日常となっている。ファッションや髪型にはちょっとしたこだわりがあり、基本的にモノトーンの服を身につけている。髪は左半分だけが金髪という特徴的なカラーリングを施しているほか、シャンプーとリンスは美容院のものを愛用している。潔癖症のきらいがあるが、動物は大好き。一人っ子で、生真面目でマメなところがあり、照れ屋で素直になれない性格をしている。幼い頃から人に心を開かないタイプにもかかわらず、意外と世話好きなところもあるが、湯毛岫子自身はそれを自覚していない。鮫島野乃とは、初対面時から銭湯に縁があり、その後湯毛荘に入居してきた野乃と部屋がとなり同士になり、さらに幼い頃から仲がよかった湯毛荘の住人のアリッサ・リベラも加わって、三人いっしょに銭湯に行く機会が増えた。裸の付き合いが多くなったことで、野乃とも親しくなっていく。現在彼氏募集中。好みの男性像ははっきりしないが、自分よりも細身で色白でおしゃれっぽく、自己主張と主体性がない男性が嫌なタイプで、デートの時すぐにどこに行きたいか聞いて来る男性には嫌悪感すら抱いている。最近、野乃の車夫仲間である榊汰助のことが気になっている。岫子のママとは気が合わず、性格のキツい母親と口げんかになることも少なくないが、その分、父親の進一とは非常に仲がいい。野乃からは、出会った時から「くーちゃん」と呼ばれている。動物病院での実習や、犬の散歩のアルバイトをしている。貧血を起こしやすい体質。かに座生まれで、血液型はA型。

アリッサ・リベラ

カリフォルニアから東洋文化を学ぶために来日している留学生の女子。ラテン系アメリカ人で、年齢は20歳。肌が浅黒く、175センチ以上ある身長と抜群のプロポーションを持つ美人。幼い頃から年に1回程度の頻度で、1か月くらいは日本に滞在しており、そのあいだ2週間だけ日本の小学校に通っていたため、日本語はペラペラ。湯毛岫子とは小学校の時からの付き合いで、帰国後もメールでのやり取りを続けていた。アーティストだった祖父と千夜子が古い知り合いだったため、湯毛荘の2階に一部屋借りて下宿することになった。部屋は岫子のとなりに位置している。片づけるのが苦手なため、部屋はいつも散らかっている。没頭すると周りの音が聞こえなくなるほど集中してしまうところがある。バスタイムはプライベートの時間であり、大勢でいっしょに入ることには抵抗を感じている。そのため銭湯には苦手意識があり、これまでは基本的に大学のシャワー室で済ませるようにしていた。しかし、学校の先輩に見つかって以来、日本文化の一つである大衆浴場を嫌がることは、日本文化を学ぶ志に反していると責められるようになった。ある時、銭湯に入れない理由を軽視されたうえに日本文化を学ぶ姿勢まで否定されたため、強引に銭湯に連れて行こうとする先輩に人力車の上で平手打ちをしてしまった。それを引いていたのが鮫島野乃だったため、彼女との初対面は衝撃的なものとなってしまった。しかし、互いが同じ湯毛荘に住む下宿仲間と知ったあと、銭湯に入る特訓をしたい気持ちがあると語ったため、野乃と岫子と共に銭湯に行くようになる。最初は裸になることができずタオル着用が必須で、色のついたお湯など、中が見えない状態でないと湯船につかることもできなかったが、次第に銭湯に慣れていき、野乃や岫子との関係も深まって銭湯を楽しめるようになる。いて座生まれで、血液型はO型。本人曰く、12歳以降彼氏はいなかったことがないらしい。

千夜子 (ちよこ)

湯毛岫子の祖母。湯毛荘の管理人を務めている。いつもハイヒールを着用して年齢を感じさせない、若々しくオシャレなスタイルを誇る。パチンコが趣味で、酒と和菓子屋の亀十のどら焼きが大好物。家政婦の畑中ツルや鮫島野乃、湯毛岫子、アリッサ・リベラと共にお酒を飲みに行ったり、銭湯にも行くことがある。見た目とは違って、意外と時間にはルーズ。

畑中 ツル

湯毛荘で家政婦を務める女性。年齢は62歳。この道30年のベテランで、洗濯掃除や日々の食事の用意を行っており、湯毛荘は彼女にとって第二の我が家のような場所。ぽっちゃりした体型で、温かい雰囲気を漂わせている。千夜子や鮫島野乃、湯毛岫子、アリッサ・リベラと共にお酒を飲みに行ったり、銭湯にも行くことがある。千夜子とは、海外旅行にもいっしょに行った。甘いものが大好き。

榊 汰助 (さかき たすけ)

浅草で車夫を務める男性。鮫島野乃とは仕事仲間で仲がいいが、実は密かに思いを寄せている。友達に人力車を一日貸し切りでプレゼントした野乃を手伝ったり気遣っていたが、その後電話をかけた際、野乃の代わりに電話に出た湯毛岫子に、車夫が自腹を切って長時間貸し切りになることのリスクについて語った。のちに新居に引っ越した際は、野乃や岫子、アリッサ・リベラを呼んで焼き肉パーティを開催した。意外にも料理を作ったり、客に気遣いができるところを見せた。今は世界一周旅行のため貯金することが目標で、節約のために日々自炊を心がけている。年の離れた兄と姉がおり、女性の扱いは慣れている。

進一 (しんいち)

湯毛岫子の父親。ヒゲ面で眼鏡をかけており、いつもにこにこと笑顔を浮かべた温和な性格をしている。岫子とは、アルバムCDの貸し借りをしたり、ライン交換をしたりと非常に仲がいい。妻の岫子のママとの関係は良好。気の強い妻には逆らうことができないが、周囲には仲のいい夫婦で通っている。

岫子のママ (くきこのまま)

湯毛岫子の母親で、進一の妻。着物の販売員を務めており、敏腕との呼び声が高い。モラルや時間について口うるさく、個性的なキツい性格をしている。特に実母である千夜子と岫子に当たりが強い。岫子に対しては、専門学校卒業後は金銭的援助はいっさいしないと突き放しており、犬を欲しがっている岫子には実家に帰ってきても絶対に犬は飼わないと断言している。そのためか、親子関係はあまりいい状態とはいえない。岫子の目鼻立ちが父親にそっくりなこと、髪が半分金髪なことや服装に至るまですべて気に入らない様子で、何かと言い合いになりがち。

野乃の兄 (のののあに)

鮫島野乃の兄。練馬に住んでいる。父親とケンカして東京に出てきた野乃を1年ほど自宅に居候させていた。その後、新居を決めた野乃が突然家を出て行き、そのまま連絡が途絶えていたため、心配していた。そんな中、湯毛荘に直接電話したことで、ようやくコンタクトを取ることに成功して2か月ぶりに野乃と会うことができた。

場所

湯毛荘 (ゆげそう)

浅草駅近くにある古い木造2階建て住宅。玄関の入ってすぐのところには、「Iwant湯」と書かれた書が飾られている。1階は大家のおばあちゃんが暮らしており、2階は3部屋ある個室を改装して下宿として貸し出している。入居者の家賃は月額4万円。ただし、トイレは共同で風呂はないため、入居者には毎月無料で都内共通入浴券を30枚贈呈しており、実質銭湯入り放題を謳っている。また家賃に8000円上乗せすると、平日朝と夕食の1日2食、家政婦の畑中ツル手作りの食事が提供される。

クレジット

原案協力

久住 昌之

SHARE
EC
Amazon
logo