ゆこさえ戦えば

高校1年生の女子、新王寺ゆこは、ある朝学校へ行く途中で、悪魔のギギラ・キングレイに憑依される。雷に撃たれたような衝撃にひっくり返るゆこだったが、すぐに立ち上がり何事もなかったかのように歩き出す。彼女の頭の中は、苦手な古文の授業のことでいっぱいなのだ。悪魔の姿を見てもまったく動じないゆこに、ギギラは焦る。そして、ゆこが「悪魔凱戦(ディアブロイル)」に選ばれたことを告げる。悪魔凱戦は、数世紀に一度行われる悪魔の催事で、総勢496体の悪魔が、それぞれ人間に宿り、能力を与えて闘い合うというもの。宿主を最後まで勝ち残らせた悪魔は最高の名誉を得ることになる。また、宿主である人間にも「どんな願いも叶えられる権利」が与えられるのだ。いかなる人間も「欲」には勝てない。当然、ゆこも目を輝かせて自分と一緒に戦うだろうと考えていたギギラだが、ゆこはまるで乗ってこない。「授業があるからいいや」と超マイペースなのだ。そして、授業が始まる直前、悪魔凱戦に参加する敵が現れた。しかし、ゆこが大事な授業をさぼることなどあり得なかった。「先に行ってて」と言われ、しかたなく一人で敵と対峙するギギラ。しかし、悪魔凱戦では、悪魔単体で力を使うことはできない。人間のエネルギーが必要なのだ。一方的にやられるギギラは、せめてゆこが、少しでも意識をこちらに向けてくれることを願う。遠く離れていても、二人はつながっているので、少しのエネルギーでも時間稼ぎぐらいにはなるかもしれないと考えたのだ。そんなギギラの思いをつゆとも知らず、授業に夢中のゆこ。いよいよギギラに止めが刺されようかというその時、授業は終わった。ゆこは、ふとギギラのことを考えた。すると、その思いがエネルギーに変わり、ギギラに届く。そして、ものすごい衝撃波が敵をふっとばしたのだ。ゆこは、常人の数倍のエネルギーを持つバケモノだった。しかし、ゆこには戦う気はまったくない。彼女には、日常を懸命に生きることがすべてなのだ。こうして戦わない少女と戦わせたい悪魔の凸凹コンビの日常が始まった。