夢を絶たれたプロ野球選手が、スポーツドクターに転身
プロ野球チーム「中日本アイアンズ」で活躍していた社は、ホームベース上のクロスプレーで中心性脊髄損傷を患い、野球を辞めざるを得なくなる。高校時代にも肘を何度も壊してピッチャーを断念した社は、今度こそ選手生命の終わりを覚悟するが、スポーツに情熱を注ぐことをあきらめきれなかった。それから9年後。スポーツドクターに転身した社は、高校時代からの戦友であるアスレティックトレーナーの上前津と共に「野並診療所」を開業し、スポーツ選手に寄り添う医者として第二の人生を歩み始める。
外科病院「野並診療所」の仲間たち
野並診療所に勤務する医師たちは、腕は確かだが一風変わったこだわりを持っている。外科医の新瑞さなは、「アスリートは自分の心と身体が壊れるまで戦い続けるため、人生が壊れる前に引導を渡すべき」という考えを持ち、過剰診療を行うことを危惧している。高校時代、社とバッテリーを組んでいたアスレティックトレーナーの上前津は、効率を重視するあまり奇抜なアイデアに走りがちで、医療の方向性を巡って社と対立することも少なくない。彼らは社の情熱に触れることでアスリートたちと真摯に向き合い、外科の側面からだけでなく、時にはメンタル面からもサポートし、心身のコンディションを整えていく。
さまざまな事情を抱えるアスリートたち
野並診療所には、ケガによって精神的にダメージを負ったアスリートたちが多く訪れる。アスリートの中には、手術を受けて現役に復帰する選手もいるが、命にかかわる損傷をケアするのが精いっぱいな選手もいる。高校野球選手の柴田旭は、肘の靱帯(じんたい)に深刻なダメージを抱えているが、周囲の期待に応えるために痛みに耐え、野球を続けていた。バスケットボール選手の白沢巽は、大動脈弁輪拡張症と急性大動脈剝離を併発し、命こそ助かったものの選手生命が絶たれ、バスケができなくなるなら死んだ方がマシだと取り乱す。社は、アスリートたちの健康管理やケガの診断・治療・予防だけではなく、彼らの心に寄り添いながら、自らの体験を交えてアスリートとしてどうあるべきかをアドバイスする。
登場人物・キャラクター
野並 社 (のなみ やしろ)
外科病院「野並診療所」の院長を務める男性。学生時代から野球に打ち込んでいたが、学生時代に肩を痛めてピッチャーをあきらめた過去がある。のちにプロ野球チーム「中日本アイアンズ」で活躍するものの、試合中の事故で首に大ケガを負ったことで引退を余儀なくされた。天才的な医療技術とスポーツを愛する情熱を秘め、スポーツドクターを志した理由を「世界をアツくするため」と公言している。アスリートを「戦士」と表現し、スポーツドクターができることは彼らの戦いを見守り、その身体と心をケアすることだと考えている。身体や心を壊したアスリートたちに厳しくも優しく接し、彼らの人生を成功に導いている。なお、プロ野球時代の首のケガは現在も完治しておらず、悪化すれば最悪命を失う危うい状態にある。
新瑞 さな (あらたま さな)
整形外科医を務める女性。当初は桜通大学付属病院に勤務していたが、のちに野並診療所に活動拠点を移す。アスリートの命と未来を第一に考えており、彼らにスポーツを辞める引導を渡すことも躊躇(ちゅうちょ)しない。自分の技術を高めるため努力を惜しまない勤勉さを持つが、「スポーツ外科医の仕事は、アスリートの夢を壊して飯を食うこと」という持論を語る現実主義者でもある。また、優れた技術を持つ相手に対して苦手意識や、コンプレックスを抱えがち。さな自身と真逆の考えを持つ社のことを当初は敬遠していたが、さまざまなアスリートを救った実績と、驚異的な技術に対抗心を抱くようになる。
クレジット
- 原作
書誌情報
ドクターゼロス 〜スポーツ外科医・野並社の情熱〜 9巻 集英社〈ヤングジャンプコミックス〉
第4巻
(2022-08-19発行、 978-4088923963)
第5巻
(2022-11-17発行、 978-4088924878)
第6巻
(2023-02-17発行、 978-4088926025)
第7巻
(2023-05-19発行、 978-4088926865)
第8巻
(2023-08-18発行、 978-4088927879)
第9巻
(2023-10-19発行、 978-4088928609)