ハーメルンのバイオリン弾き ~シェルクンチク~

ハーメルンのバイオリン弾き ~シェルクンチク~

渡辺道明の代表作『ハーメルンのバイオリン弾き』の続編。大魔法使いになる事を夢見るシェル・クンチクが、妖精のピロロや親友のグレートと共に、スフォルツエンド魔法学校で学びながら、自分の運命を変えていく姿を描いたファンタジー漫画。「ヤングガンガン」に2008年から2011年にかけて連載された作品。

正式名称
ハーメルンのバイオリン弾き ~シェルクンチク~
ふりがな
はーめるんのばいおりんひき しぇるくんちく
作者
ジャンル
ファンタジー
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あらすじ

スフォルツエンド魔法学校入学試験(第1巻)

かつて魔族の支配によって人間が絶望の日々を過ごしていた時代、魔曲をあやつる勇者ハーメルとその仲間たちが大魔王ケストラーと戦い、魔族を封印する事に成功する。しかし、魔族は完全に消えたわけではなかった。シェル・クンチクは幼い頃に魔族に襲われた事があり、その時にスフォルツエンド魔法兵団の団長であるクラーリィ・ネッドに命を救われた。以降、シェルはクラーリィに憧れ、大魔法使いになる事を夢見るようになった。 そして10年という時を経て、妖精のピロロと共にスフォルツエンドへと辿り着く。そこでシェルは、途中の列車の中で出会ったグレートと共に、スフォルツエンド魔法学校の入学試験を受ける事になる。試験の内容は、10人で一つの水晶を奪い合って手に入れる事。シェルのグループの中には、グレートも含まれており、最終的に戦いはシェルとグレートの一騎打ちとなる。終始戦いを優位に進めるグレートだったが、入学を目指すシェルの熱意と執着心に根負けし、彼に勝ちを譲って水晶を手渡す。だがこの時、先に水晶に触ったとして、グレートが勝者の扱いとなってしまう。グレートが不当な裁定だと審判にしてスフォルツエンド魔法学校の教頭であるパーカスに食って掛かる中、スフォルツエンド魔法学校の理事長となっていたクラーリィはグレートとシェルを呼び出し、二人に合格を告げるのだった。

勇者の血統(第1巻~第2巻)

シェル・クンチクグレートは、スフォルツエンド魔法学校に無事に入学を果たす事となった。彼らのクラスメイトには呪術師のゴスペルや剣士のティナー・サックス・ボーン、厳つい甲冑をまとった美人姉妹のヴィオーネ・ストリングスブラーチェ・ストリングスが在籍。さらには入学試験でグレートに敗れたグスタフ・カールも、グレートの魔曲に抵抗した精神を見込まれ合格していた。 スフォルツエンド魔法学校は、魔法を勉強するためだけの学校ではなく、スフォルツエンド魔法兵団を育成する機関でもあった。この事実を知ってさらに胸を躍らせるシェルは、クラスメイトたちと微妙な対立を経て友情を築き、日々修練を積んでいく。そんな中、シェルは大魔王ケストラーの血を引くという、グレートの出生の秘密を知る事となる。

魔法学校授業開始とグレートの暴走(第2巻~第3巻)

グレート方舟の巨獣を服従させる光景を目にしたクラスメイトは、彼と距離を置くようになった。さらに、クラスメイトのティナー・サックス・ボーンが魔族の血に深い恨みを持つ事も判明する。やがてティナーの口からグレートが大魔王ケストラーの孫にあたるという真実が広められると、グレートは理性を失って暴走。魔族となったグレートにティナーが攻撃を仕掛けるが、まるで歯が立たない。このまますべてを破壊しては、またグレートが一人孤独になってしまうと考えたシェル・クンチクは、ボロボロになりながらも彼を止めようと試みる。その姿に母親フルートの姿を重ねたグレートは力を失い、人間の姿に戻るのだった。だが、そこに正体不明の男が現れ、グレートから魔族の血を抜き取り逃亡。パーカスはこれを追跡するが、国境ぎりぎりのところで待っていたハーモニーの攻撃を受け、行方不明になってしまう。 一方、人間に戻ったグレートは治療室で処置を受け、シェルはピロロによって傷を治す。必死に自分を守ってくれたシェルの命がけの行動と、彼の「運命を変える」という言葉に感化されたグレートは、自分の血と戦い、運命を変える事を決意する。

シェル・クンチクの正体(第3巻~第4巻)

グレートの暴走事件から1週間後が経ち、授業が再開されると、シェル・クンチクに魔法力がない事が発覚。退学処分も目前となり、シェルはリュートに相談をする。そこでリュートは、シェルには古代魔法の方が合うのではないかという結論に辿り着く。リュートのアドバイスを受け、努力の末に古代魔法の使い方を覚えたシェルは、見事に魔法を使う事に成功。こうしてシェルは学校に残る事ができたが、彼が古代魔法を使う事に反対するピロロはシェルのもとから姿を消してしまう。同時にリュートは、シェルの体に疑問を持つようになる。 かつてシェルは、15歳になった時、「成人の儀式」を受けるために薔薇の棘の宮殿へと赴いた。だが、そこではバロックノクターンによって妖精を強制的に体内に送り込み、妖精武闘の適性があるかどうかを調べる生体実験が行われていた。シェルの村は、実は10年以上もの長いあいだ、この実験のサンプルとされていたのである。ここでシェルは人形の体となり妖精兵器にされるが、最終的には妖精武闘への耐性がないと見なされ、打ち捨てられたという過去があった。

スフォルツエンド夏合宿(第4巻~第6巻)

スフォルツエンド魔法学校ピチカー島という無人島で夏合宿を行う事になった。その内容は、生徒たちが二人一組になってサバイバルゲームを行うというものだった。参加者40人の内、最後まで勝ち残った10人は聖十字架騎士団に入団する事ができると聞き、生徒たちは目の色を変える。シェル・クンチクグレートとペアを組み、次々と襲い掛かって来る生徒との戦闘を勝ち抜いていく。そのさなか、グレートはシェルのつぎはぎだらけの体を目の当たりにする。さらに帰って来たピロロからシェルの過去を聞かされ、シェルが「自分の運命を変える」と言い続けた意味を理解し、強く共感するのだった。 その合宿の戦いの途中、グローリア帝国妖精兵器となったロベルトゴスペルを殺して彼に成り代わっていた事が発覚。さらにロベルトは自らの体に魔族の血を注入し力を高めて凶暴化し、シェルたちを追い詰めていく。絶体絶命のピンチの中、グレートとシェルはブラーチェ・ストリングスとその姉のヴィオーネ・ストリングスの支援を受け、からくも勝利をおさめる。 一方その頃、魔族の血を求める者の存在を危険視したクラーリィ・ネッドは、狙われる可能性があるハーメルフルートのもとへと向かっていた。彼がスタカット村にたどり着いた時には、予想通りバロックや妖精兵器のハーモニーと、ハーメルの戦闘が繰り広げられていた。クラーリィの横やりを受けたバロックたちは撤退するが、その際に、自分たちの目的がグローリア帝国の復活にある事を言い残すのだった。

グローリア帝国の襲撃とハープシコードの復活(第6巻~第8巻)

夏合宿から数日後、バロックが言った「グローリア帝国の復活」という言葉から、クラーリィ・ネッドは一連の騒動の真相に辿り着いた。クラーリィはシェル・クンチクを呼び出すと、バロックらグローリア帝国の幹部に何をされて来たのかを聞き出す。一方のシェルは、クラーリィの口から自分のほかにも妖精兵器として使われている人物がいる事を告げられると、怒りと悲しみを露わにする。シェルが大魔法使いになりたいと思った一番の理由は、グローリア帝国の道具にされている村の人たちを救い、大事な友達であるハーモニーを助けるためだったからだ。 間もなくして、バロックとノクターンは、ハーモニーら妖精兵器を連れてスフォルツエンド魔法学校を襲撃。シェルはハーモニーとの再会を果たすが、彼女はバロックのもとで妖精兵器となり、感情を失っていた。スフォルツエンド魔法学校は総出で応戦してバロックらを一時後退させる事に成功するものの、実はこれは陽動であり、彼らの真の目的は理事長室に保管されていたハープシコードの右足を奪う事であった。その目論見は成功し、最後の欠けたパーツである右足を取り戻したハープシコードは復活を果たす。そして彼は強大な妖精武闘スフォルツエンド全土に大打撃を与え、その場から姿を消すのだった。

シェルの旅立ち(第8巻)

ハープシコード、そしてグローリア帝国の復活により、その直接的な標的となったスフォルツエンドは他国から非難され、二国間の問題に関与しない事を宣言されてしまう。こうしてスフォルツエンドは孤立状態となった。そんな中、シェル・クンチクハーモニーを助けるため、グローリア帝国へ行く事を決意する。ピロロはこれに反対するが、グレートティナー・サックス・ボーンヴィオーネ・ストリングスブラーチェ・ストリングスはシェルに同行する事を決める。だがまずは、先のグローリア帝国の襲撃によって両断されてしまったシェルの胴体を治す事が先決となった。そこでクラーリィ・ネッドはシェルたちに、まずは20年前に自分の腕に義手をつけてくれた人物に会うようにと告げる。そして、帰って来たら直々に魔法を教える事を約束し、クラーリィはシェルたちをグローリア帝国へ送り出すのだった。

登場人物・キャラクター

シェル・クンチク (しぇるくんちく)

スフォルツエンド魔法学校に入学した少年。ブロンドの髪にネコ耳のようにとがった耳の帽子をかぶっている。腰のポシェットにはいつも布切り狭と糸巻きが入っており、妖精のピロロもその中に入って行動を共にしている。かつて両親と生き別れ、一人になってしまった時に一つ年下の少女ハーモニーに助けられ、彼女を親のように慕い共に暮らしていた。 のちに魔族に襲われた際、クラーリィ・ネッドに命を救われた事から、彼のような大魔法使いになりたいと夢見るようになった。しかし15歳になってすぐ、成人の儀式と偽った人体実験により、強制的に妖精武闘を使えるようにされたうえ、体を人形に作り変えられてしまう。以降、人形という性質から何かと体が壊れやすくなったが、その都度ピロロによって治されている。 不遇の人生だったからこそ運命を変えようと努力しており、迫害を受けた過去を持つグレートに親近感を抱き、交友を深めていく。強敵と戦う時には、グレートの使う魔曲に応じ、彼のマリオネットとなる。また、入浴や着替えの場面を誰も見た事がなく、実は女の子ではないかという噂が流れ始めると、シェル・クンチクに密かな恋心を寄せるブラーチェ・ストリングスやグスタフ・カールの心を揺さぶった。

ピロロ

シェル・クンチクに付き添う花の妖精。桃色のウェーブの髪にエルフ耳、蝶の羽を生やしているとても小さな女の子。シェルの腰のポシェットに、布切り鋏と糸巻きと共に入っている。妖精武闘にも使われる妖精の一人。シェルが傷つく事があれば糸で体を縫い、鱗粉をかけて治している。シェルと仲がいいため、魔曲を使って彼の体を酷使するグレートとは喧嘩をする事もある。 妖精を生贄にして妖精兵器を作ろうとするバロックやノクターンをはじめとしたグローリア帝国の行いに、強い怒りを覚えている。

グレート

スフォルツエンド魔法学校に入学した青年。金髪で、十字架のついた眼帯をした片目を隠すほどに前髪が長く、耳の上には魔族である事を表す山羊の角を生やし、いつもヴァイオリンを持っている。ハーメルとフルートの末の息子で、魔族の血を受け継いでいるために周囲から迫害を受け、他人に心を開く事ができずにいた。感情がコントロールできなくなれば魔族の血が勝り、暴走を始める事もある。 しかし、それでも自分を救おうとするシェル・クンチクに対し、次第に心を開いていくようになる。また父親同様に性格がねじ曲がっており、シェルに対しては一生下僕でいないと魔法によって燃えてしまうという血判状にサインをさせ、事あるごとに魔曲によってシェルの体を酷使している。 ちなみに、シェルが女の子かもしれないという噂を広めた張本人。

クラーリィ・ネッド (くらーりぃねっど)

スフォルツエンド魔法兵団の団長であり、スフォルツエンド魔法学校の理事長。女王フルートが不在であるため、スフォルツエンドの政治の最高権力者でもあり、世界の治安維持なども担っている。真っすぐで長い金色の髪を毛先の方で束ねた長身の男性で、時折眼鏡をかける事もある。かなり年配ではあるが、魔法によって若さを保っている。 冷静沈着で戦闘力も高く、高度な魔法を使う事ができる。世界の治安維持の一環として、魔族の被害に遭っている地域に自ら出向いてはそこで暮らす人々を救っている。シェル・クンチクもそうしてクラーリィ・ネッドに助けられた一人だが、シェル自身は自分を助けた魔法使いがクラーリィであった事には気づいていない。また過去の大戦の最中、ハープシーコードと対面した事もあり、その時から妖精武闘の事を知っていた。 シェルをスフォルツエンド魔法学校に入学させ、ピロロを監視する事にしたのもそれが理由である。過去の大戦時に戦友であったハーメルとは折り合いが悪く、彼が国の税金で遊び呆けている事を知るたびに大喧嘩に発展している。

パーカス

スフォルツエンド魔法学校の教頭およびクラーリィ・ネッドの補佐を務めている壮年男性。細身の体格で髪型はオールバック、目にはモノクル眼鏡をつけている。黒い妖精が現れた時には国境付近まであとを追ったものの、そこでハーモニーに深手を負わされ、行方不明になってしまう。

ホーン・パイプ (ほーんぱいぷ)

スフォルツエンド魔法学校の男性教師で、シェル・クンチクやグレートのクラス担任。また聖十字架騎士団の顧問も務めている。老齢ながら筋肉質の体格で、いつもタンクトップを着ている。額には十字架が埋め込まれており、口ひげを長く伸ばしている。過去の大戦で味方が全滅しそうになった時に、押し寄せる魔族を一人で食い止めたり、数多くの偉業を持つ大魔法使い。 方舟で巨獣を仕留めたシェルに大きな期待を寄せていたものの、授業では一切魔法を使う事ができなかったために憤りを感じるようになる。

リュート

スフォルツエンド魔法学校に在籍し、聖十字架騎士団のトップも務めている青年。黒い短髪で、前髪を左右に分けている。ハーメルとフルートの息子であり、グレートの兄。サイとケストの弟にあたる。優しく聡明な性格の持ち主で魔曲も少なからず使う事ができるが、小さい頃から黒魔術を好み、フルートやクラーリィ・ネッドがリュートの魔法で命の危機にさらされた事もある。 また、グレートの心の傷をよく知る人物でもある。グレートと仲よくしてくれるシェル・クンチクに対して大きな信頼を寄せる。

ティナー・サックス・ボーン (てぃなーさっくすぼーん)

スフォルツエンド魔法学校に在籍する青年男子。髪が非常に長いが、制服を着ている時には後ろで三つ編みにしてまとめている。剣の国の王子で、手に持つ黒い剣からは三匹の魔犬が現れる。母親は過去の大戦の最中に魔族の血が入り込んでしまったために、時折魔族化して暴走をしてしまう。その姿を見て育ったティナ―・サックス・ボーンは魔族の血を憎み、大魔王ケストラーの血を引くグレートに対して強い敵意を向ける。 ちなみに、ティナ―の母親はクラーリィ・ネッドの妹であり、父親はハーメルやフルートと共に世界を救った勇者の一人である。

ヴィオーネ・ストリングス (ゔぃおーねすとりんぐす)

スフォルツエンド魔法学校に在籍する女子で、ブラーチェ・ストリングスの姉。ロングヘアで、グラマラスな体型をしている。一方で、大きなハンマーを使っての攻撃を得意とする怪力の持ち主でもある。妹のブラーチェがシェル・クンチクに密かに恋心を抱いている事を知り、気さくに応援をする。

ブラーチェ・ストリングス (ぶらーちぇすとりんぐす)

スフォルツエンド魔法学校に在籍する女子で、ヴィオーネ・ストリングスの妹。髪は短く桃色で、見た目はほっそりとしているが、大きなハンマーを使っての攻撃を得意とする怪力の持ち主。必死に自分の運命に向き合うシェル・クンチクに心惹かれるようになる。それ以来、妄想が度を越すと恥ずかしさのあまり周囲の壁を壊してしまう事もある。

グスタフ・カール (ぐすたふかーる)

スフォルツエンド魔法学校に在籍する青年男子。普段は全身鎧で身を包み顔も見えないが、兜を取ると髪をカールさせ鋭い目をした美形。魔法学校入学試験の時にシェル・クンチクやグレートと知り合い、試験時にグレートに魔曲を聞かされてからというもの、やたらと脱ぎたがる癖がついてしまった。またシェルが女の子ではないかという噂が流れた時には、グラマラスな体を妄想し、シェルに惹かれていく。

ゴスペル

スフォルツエンド魔法学校に在籍する男性。覆面によって顔を隠しており、年齢は不詳。呪術師で、人の頭部の骨を使った奇妙な技を使う。しかし、ピチカー島での夏合宿を前に、妖精兵器と化したロベルトに殺された。

ハーモニー

シェル・クンチクの親代わりをしていた少女。髪は黒くて短く、頭の両サイドには十字架の髪飾りをつけている。シェルやロベルトよりも一つ年下だが、非常にしっかりとした女性。シェルが薔薇の棘の宮殿に行き、成人の儀式を受けたあとも帰ってこない事で安否が心配になると一人で宮殿に向かい、そこでバロックに捕縛され、シェルやロベルトと同様に妖精武闘の実験材料にされた。 ここで体を人形に作り変えられ、背中から蝶の羽を生やした、空を飛べる妖精兵器となった。これと同時に感情も失い、のちにシェルをはじめ、パーカスやクラーリィ・ネッドとも対峙。傷ついても痛がる素振りなど一切見せずに攻撃を続けていく。

ロベルト

シェル・クンチクが育った村の少年。リーゼントの髪型をしている。薔薇の棘の宮殿でバロックやノクターンらの人体実験によって妖精を体内に大量に注ぎこまれたが、妖精武闘には耐えられないと判断されて破棄された。のちに身体をシェル同様に作り変えられ、グレートの持つ魔族の血を注入された事によって、妖精兵器と化した。 シェルに近づくため、ゴスペルを殺して彼に成りすました。

ハープシコード

かつてグローリア帝国で戦闘総帥を務めた壮年男性。背が高く細身で、長髪をオールバックにして後ろに流している。過去の大戦では大魔王ケストラーの攻撃を受けて足だけを残して消滅したが、バロックとノクターンの研究により残された左足から再生し、完全体となるためにクラーリィ・ネッドが所持している右足を求めてスフォルツエンドへと向かう。 足を手に入れたあとは、シェル・クンチク以上の威力を持つ妖精武闘を全土に放ち、スフォルツエンドだけでなく世界に恐怖を与えた。

バロック

グローリア帝国の幹部。髪は短く外にカールしていて、道化のような恰好をしている。妖精兵器を作るために、シェル・クンチクやロベルトなど、15歳になった少年少女を成人の儀式と称して薔薇の棘の宮殿へと連れて来る役目を担っていた。そのほかにも、魔族の血を集めるためにハーメルを襲ったり、ハープシコードを復活させるのに必要な足を手に入れるために、スフォルツエンドに対して陽動攻撃を仕掛けるなどの任を負う。

ノクターン

グローリア帝国の幹部の研究者。黒くうねった長髪に、鼻の高い仮面をつけていている。薔薇の棘の迷宮で妖精武闘の耐性がある子供を見つけ出しては、体を人形に作り変えて妖精兵器にしている。また妖精を用いる研究をし続けた結果、体の一部から全身を再生させる技術を開発。一度はシェル・クンチクに撃破されるも、その技術を用いてちぎれた腕一本から再生した。 さらに、グローリア帝国の戦闘総帥であるハープシコードを、残された左足から再生させて復活させる。

サイ

クラーリィ・ネッド直属の親衛隊であり、グレート、リュート、ケストの兄。金色の短い髪と、背中から天使の羽が生えているのが特徴。運動力が抜群で、大鎌を使っての攻撃を得意とする。

ケスト

クラーリィ・ネッド直属の親衛隊であり、グレートとリュートの兄。うねるような金色の髪をしていて、大魔王ケストラーに顔がよく似ている。類まれな戦闘能力を持つが、本当は小心者で心優しい性格の持ち主であり、乙女チックな一面もある。大事に育てていたハムスターがグレートが与えた毒餌によって死んでしまった事を思い出すたびひどく悲しみ、墓に花壇を作って定期的に手入れをする。

ハーメル

グレートやリュートたちの父親。巨大なバイオリンで魔曲を奏でる事ができる。そのたびにフルートをマリオネットにして戦わせたり、猿回しとして見世物にしていた。大魔王ケストラーの血を引いているため魔族化してしまう事があり、スフォルツエンドでは恐怖の存在として扱われる。これを回避するためにフルートと共にスタカット村で暮らしている。 かつては勇者と呼ばれた人物だが、実は非常に性格が歪んでおり、スフォルツエンドの市民の税金でパチンコ三昧の生活をしている。

フルート

グレートやリュートたちの母親。赤いおさげ髪の女性。スフォルツエンドの女王でもあるが、夫であるハーメルが魔族化した時に魔法で暴走を止めるため、スフォルツエンドの外にあるスタカット村でひっそりと暮らしている。しかし、ハーメルや子供たちがさまざまなトラブルを起こすために気苦労が多い。

大魔王ケストラー (だいまおうけすとらー)

かつて世界に恐怖を与えた魔族の王。金色のウェーブヘアに山羊の角を生やし、尖った耳を持つ壮年の男性。ハーメルの父親であり、グレートの祖父にあたる。過去の大戦で封印されたが、ハーメルやグレートにその血が受け継がれている。

集団・組織

スフォルツエンド魔法兵団 (すふぉるつえんどまほうへいだん)

クラーリィ・ネッドが率いる、スフォルツエンドを守るための兵団。所属するのは魔法能力値の高い人物ばかりで、これを育成するためにあるのがスフォルツエンド魔法学校である。

聖十字架騎士団 (くーくるせいだーず)

スフォルツエンド魔法学校に在籍する生徒の中でも魔法能力値が高く、成績が優秀な人材だけが入る事ができる兵団。スフォルツエンド魔法兵団入隊の最有力候補者の集まりであり、リュートがこの兵団のトップを務める。

場所

スフォルツエンド

女王フルートが治める魔法大国。現在は女王が不在のため、クラーリィ・ネッドが代わって治めている。大魔王ケストラー率いる魔族と人類の大戦を勝利に導いた国として知られる。国内には聖十字架騎士団を養成する機関であるスフォルツエンド魔法学校が設立されている。

スフォルツエンド魔法学校 (すふぉるつえんどまほうがっこう)

スフォルツエンド内に存在する魔法学校。魔法能力の高い人間を育成し、聖十字架騎士団を養成する機関でもある。理事長はクラーリィ・ネッド、教頭はパーカスが務めており、教師にはホーン・パイプなどがいる。

グローリア帝国 (ぐろーりあていこく)

大魔王ケストラーとの大戦をいち早く提案したものの、滅ぼされた小国。一部の幹部たちが生き残っており、「世界を救ったのはスフォルツエンドだ」という世界に対して復讐をするために再興する。中でも幹部のバロックと研究者ノクターンは、元戦闘総帥であるハープシコードを復活させると、強大な妖精武闘によって国としての力を取り戻す事に成功。 その結果、グローリア帝国は世界を脅かす存在となる。また、妖精兵器を作るためにシェル・クンチクが住んでいた村の住人を実験台に使っていた。

薔薇の棘の宮殿 (ばらのとげのきゅうでん)

シェル・クンチクの故郷の村にある宮殿。15歳を超えた少年が成人の儀式をするために訪れる場所だといわれていた。しかし本当は、妖精武闘の耐性があるかどうかを調べたり、妖精兵器を作るために、グローリア帝国が作り上げた研究施設である。

スタカット村 (すたかっとむら)

スフォルツエンドの外にある小さな村。グレートやリュートらの子供たちの故郷であり、女王フルートと勇者ハーメルがグレートやリュート、サイ、ケスト以外の四人の子供と共に、今もひっそりと暮らしている場所でもある。

方舟 (はこぶね)

スフォルツエンド魔法学校にある施設の一つ。絶滅した魔獣や神獣、巨獣を復活させて飼育や管理、研究をする事を目的に作られている。この方舟で管理される巨獣たちは頑丈な鎖で拘束されている。

ピチカー島 (ぴちかーとう)

スフォルツエンド魔法学校の夏合宿の舞台となった島。人はいないが、肉食獣や毒を持った生物が多く生息している場所である。シェル・クンチクやグレートら魔法学校の生徒は、このピチカー島で生き残りをかけた戦いを繰り広げていく。

その他キーワード

魔曲 (まきょく)

グレートやハーメルが使う、楽器を演奏する事で発動する魔法で、人の心や体をあやつる事ができる。これによりシェル・クンチクやフルートはマリオネットとなって敵に強力な一撃を与えたりするが、その分、あやつられた人間の体も大きなダメージを負う。

妖精武闘 (すぴりっとあーつ)

シェル・クンチクやハープシコードが使う事ができるできる古代魔法。妖精の力を媒体にして魔法を使う事ができたり、妖精自体を生贄として技を繰り出す。使う魔法が高度であればあるほど、多く妖精の力が必要となる。

妖精兵器

バロックやノクターンがグローリア帝国再興のために作り出した改造人間。シェル・クンチクやハーモニー、ロベルトがこれにあたる。まずは妖精を体内に送り込んで妖精武闘の耐性があるかどうかを確認し、耐性がある者は頭と一部の臓器以外を除いて体を人形に作り変えられたり、場合によっては記憶や感情も消されたうえで、文字通り兵器としてグローリア帝国に使われる。

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