バイロケーターズ

16歳の天野崇彦は、過去に2度、雷に打たれたことがあった。1度目は小学校に上る前で、彼がまだ施設にいた頃、電柱に落ちた雷に感電した。2度目は、天野家に引き取られてすぐ、大きな木の下で義姉の天野和椛と一緒にいたときだった。落雷を感知した崇彦は、和椛を突き飛ばし、自分だけが雷を受けた。そのとき崇彦は幽体離脱して、自分の体を上から見ていた。いわゆる臨死体験である。その後崇彦は、病院のベッドで目を覚まし、一生歩けない身体になったことを聞かされた。それ以来、車椅子生活を送ることになった崇彦は、雷に打たれたトラウマから、一歩も外に出ない引きこもりとなった。そんなある日、七夕の夜だった。2階にある崇彦の部屋に入ってきた和椛が、「タカヒメミコトはどこだ」と尋ねた。いつもと違い、何かに取り憑（つ）かれたような様子の和椛。彼女が義姉ではないことを察した崇彦に、和椛の身体から出てきた化け物が襲いかかった。その瞬間、部屋の窓を割って飛び込んできた少女が、手にした刀で化け物を一刀両断にした。あっけにとられる崇彦に、少女が事情を説明する。彼女の名は貴媛みこと。幽体離脱をして悪霊を払う「離脱師」だという。和椛の魂はここになく、「禍原（マガハラ）」という悪霊に取り込まれたらしい。そんな話をしているあいだに、和椛が起き上がり、みことを抱えたかと思うと、窓から庭へと投げ落とした。和椛の身体に入っていた化け物は死んでいなかったのだ。崇彦は勇気を振り絞り、車椅子を動かして、ベランダの和椛（化け物）に向かっていった。すると、崇彦がベランダに出た瞬間、雷が彼の身体を貫いた。その衝撃で崇彦は再び幽体離脱する。幽体となった崇彦は、和椛の身体に入っていた化け物を思い切りぶん殴る。和椛の身体から抜け出して庭に落ちた化け物は、みことによって息の根を止められた。そして、和椛の身体を抱きかかえた崇彦の幽体は、そのまま彼女の身体に入ってしまう。雷に打たれた崇彦の身体は病院へと運ばれた。幽体として和椛に憑依（ひょうい）した崇彦は、彼女の魂を取り戻すため、みことと行動を共にすることを決意した。