マダムとミスター

マダムとミスター

恵まれない少女時代を過ごしながらも、常に前向きな若い未亡人のグレース・ジョンストンと、彼女の戸籍上の息子で冷静沈着な執事のグラハムの、事件あり笑いありの日常を描くコメディ作品。「花とゆめ」1993年21号から1998年2号にかけて、不定期に掲載された。コミックス第3巻には、少女時代のグレースが母親と暮らす様子を回想形式で描いた特別編「ニューイヤー」が収録されている。

正式名称
マダムとミスター
ふりがな
まだむとみすたー
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
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概要・あらすじ

若く美しい女性のグレース・ジョンストンは、子育てに興味の薄い仕事中心の母親と二人暮らしで、満たされない境遇で育った。しかしグレース自身は「生まれてきたからには楽しまなくては」との信念を持ち、常に前向きに過ごしている。そんなグレースは、金持ちで高齢の男性・ジョンストン氏のもとにメイドとして勤め始める。ジョンストン氏には養子縁組したグラハムという息子がいたが、グラハムは有能ながら堅物で、次期当主になったにも関わらず、ジョンストン氏に借りた学費の分は働くと言い張り、執事として仕事を続けていた。

一方、勤め始めて1か月のグレースに対し、ジョンストン氏は、自分を看取って欲しいと結婚を申し込む。「財産目当てですが、それでよければ」ときっぱり明言して嫁いだグレースと、そんな彼女に呆れながらも、旦那様の決断ならばと従うグラハム。

ジョンストン氏はそんな2人を見て、正反対の性格ながら、きっとうまくやっていけると笑顔を浮かべるのだった。そしてジョンストン氏は、それから1年も経たず、静かに息を引き取る。こうして遺された2人は、時に遺産目当ての陰謀に巻き込まれながらも、波乱万丈な日々を、ジョンストン氏の望み通りに仲良く過ごしていく。

登場人物・キャラクター

グレース・ジョンストン (ぐれーすじょんすとん)

若く美しい女性で、未婚の母親と二人暮らしをしている。栗色のストレートの髪を、背中の半ばくらいまで伸ばしている。資産家のジョンストン氏のもとに、財産目当てで嫁いだ。ジョンストン氏も財産目当てで構わないという。双方納得のうえでの打算的な結婚でありながら、円満に暮らしていた。精神的にタフな性格で、酒場で友人を傷付けた男性と殴り合いをするなど、納得できないことには決して妥協しない。 一方でうっかりしたところもあり、ジョンストン氏のもとでメイドとして働いていた際には、わずか1か月で高価な家具調度品を3つも壊している。惚れっぽいところがあり、それが原因でたびたびトラブルに巻き込まれては、戸籍上の息子にして屋敷の執事でもあるグラハムに助けられている。 グラハムに対しては、時に異性として意識することもあるが、それよりも深い家族愛的な信頼関係を築いている。

グラハム

代々執事を務める家系の青年。グラハム自身も執事の仕事に就いている。金髪で眼鏡をかけている。もともと父親の代からジョンストン氏の屋敷に仕えており、グラハムもそのままジョンストン氏に雇われた。高齢のジョンストン氏に気に入られ、彼のたっての願いで養子となったため、実際の本名は「ピーター・ジョンストン」。生真面目な性格で、次期当主の座にありながらも、借りた学費を返すとの名目で、ジョンストン氏が亡くなった後も頑固に執事として働き続けている。 屋敷内では養子縁組される前の名前である「グラハム」か、役職名で「バトラー」と呼ぶようにと、周囲に徹底している。ジョンストン氏と結婚し、すぐに未亡人となった戸籍上の母親・グレース・ジョンストンとは、何かと正反対な性格ながら、密かに気が合う一面もある。 趣味は屋敷の銀食器を磨くことと掃除。賭け事が好きな父親に仕込まれたため、ギャンブルに関しては相当の腕前の持ち主。かつて犬を飼っていたが、現在は犬アレルギーになっている。

ジョンストン氏 (じょんすとんし)

高齢の資産家の男性。オールバックの髪型で、口ひげと豊かなあごひげを生やしている。フルネームは「ジム・ジョンストン」。年配だが茶目っ気がある恋多き人物で、メイドとして雇い入れたグレース・ジョンストンの前向きな性格を気に入る。遺産目当てときっぱり言い切る彼女に対し、それでもかまわないと結婚した。グレースからは「じいさま」、戸籍上の息子であり執事のグラハムからは「旦那様」と呼ばれている。 結婚後1年でこの世を去る。

ピエール・F・ラスネイル

霊能者の青年。ウェービーな長い黒髪を、胸元まで伸ばしている。現在、テレビでも話題の霊能者として人気を集めており、霊視を依頼しても半年待ちというほどの状態にある。屋敷内に、亡くなった夫のジョンストン氏の幽霊がいる気がすると、グレース・ジョンストンから依頼を受け、泊まりがけで除霊を行うこととなった。しかし、実はジョンストン氏の遠縁にあたるロイド夫人から、グレースの恐怖を煽って彼女が屋敷から逃げ出すように仕向けるよう頼まれていた。

ロイド夫人 (ろいどふじん)

ジョンストン氏の母方の従姉妹の娘。年配の女性。遠縁にあたるが、未亡人となったグレース・ジョンストンにジョンストン氏の遺産を放棄させようと、霊能者のピエール・F・ラスネイルと結託。グレースを屋敷から追い出そうと目論む。また、ジョンストン氏の孫であるジェレミーローレンスを探し出し、ジョンストン氏の養子であるグラハムが相続した遺産も放棄させようと画策した。 グレースとグラハムを追い出せば、ロイド夫人自身に相続権が回ってくると思っており、二度も2人を罠に嵌めようとする。しかし、グラハムにやり返されて無一文になってしまう。

ジョン・シーモア (じょんしーもあ)

金髪の若い男性。競馬場で知り合ったグレース・ジョンストンに、冒険家として世界を飛び回っていると自己紹介をした。実はジョンストン氏の遺産が目当て。宝さがしを名目に、人気のない砂漠にグレースを連れ出し、彼女を謀殺して妹のパトリシアに成り代わらせようとしていたが、グラハムに計画を見破られてしまう。

パトリシア

金髪の若い女性。常にサングラスをかけており、その理由は、以前交通事故に遭った時の傷が目元に残っているため、と語っている。実は兄のジョン・シーモアと共謀して、グレース・ジョンストンに成り代わろうと画策している。サングラスの真相は、グレースそっくりに整形した顔を隠すためであった。

フレディ・ライト (ふれでぃらいと)

小柄だが、爽やかな雰囲気を持つイケメン青年。実際は女性で、本名は「フレデリカ・ライト」。グレース・ジョンストンが、ブリーダーになって金もうけしようと買って来た犬のトレーナーとして、グラハムが雇い入れた。グレースとは高校時代の同窓生で、卒業してから2年間一緒に暮らしていた。そのルームシェアは、グレースが一方的に出て行くことで解消した。 当時からグレースを愛しているが、グレースはフレディ・ライトをあくまで友人としか思っておらず、彼女の好意を拒み続けている。グラハムには真面目で仕事熱心な良い人物だと評され、屋敷のメイドたちにも、わずか数日で優しい人だと好感を抱かれるほど魅力的な人物。結局、グレース以外の誰もフレディ・ライトが女性だとは気づかないままだった。

ジェーン

グレース・ジョンストンが以前の職場で知りあった友人。肩にかからない位の短めのウェービーヘアにしている若い女性。未婚のまま恋人のマークの子を身ごもり、当初はジェーン自身は出産を望んでいた。だがマークが薬物中毒者で定職も持っていなかったため、未婚の母を持ちその苦労を知っているグレースに相談を持ちかけた。最終的には出産を思い留まり、グレースに中絶費用を用立ててもらうこととなった。

マーク

ウェービーで長めな髪型の若い男性。麻薬所持による逮捕歴がある。恋人のジェーンを妊娠させただけでなく、グレース・ジョンストンがジェーンのために工面した中絶費用も飲み代にしてしまった。だらしなく甲斐性のない人物。

ビューモント夫人 (びゅーもんとふじん)

高齢ながら、今も美しさを保っている女性。フルネームは「アン・ビューモント」。顎のあたりまでの長さの豊かでウェービーな金髪に、しっかり化粧をした派手な見た目が特徴。かつてジョンストン氏にプロポーズされたが、同時期に求婚された貴族のビューモント卿を選んだ。のちにメイド出の若い娘がジョンストン氏の妻になったと知り、グレース・ジョンストンを上流階級の集まりに招いて、育ちの違いを笑いものにしようと企てる。 しかし、自慢の絵画コレクションの解説を完璧に披露してみせたグレースに、逆にやり込められてしまう。

ジェレミー ローレンス

ケンブリッジ大学に在学中の男子。逞しい体格のラグビー選手。ジョンストン氏の孫だという触れ込みで、ロイド夫人がグラハムとグレース・ジョンストンのもとに連れて来た。ジェレミーローレンスの祖母とジョンストン氏が交際していた証拠となる、ジョンストン氏直筆の手紙と小切手を持っている。ジェレミー自身は15歳の時に両親を交通事故で亡くし、以降は叔父の家で育ったため、ジョンストン氏との関係は知らずにいた。 ロイド夫人により、母親がジョンストン氏の娘であるという事実を知らされることとなった。初対面のグレースに、悪役プロレスラーと評されたほどの強面の持ち主。亡くなった母親の墓前に、ジョンストン氏の写真を見せに行くなど、性格は優しい。

ベンジャミン

グラハムの母方の従姉弟の青年。かつて幼い頃、グラハムがなくしてしまったコートを一緒に探した過去がある。両親が離婚して以来、グラハムは父親と暮らししていたため、ベンジャミンとは幼い頃に会ったきり疎遠になっていた。グラハムの母親が病気で入院中という情報をもたらし、グラハムが20年以上ぶりに母親と対面する機会を作る。

クレア ギルス

ジャーナリストの若い女性。スキャンダル情報を嗅ぎ付けては相手を恐喝し、大金を得ている。髪を耳の下あたりで切りそろえて後ろに流した、きりっとした印象の持ち主。グレース・ジョンストンとは、お互い初めて入った店でテーブルが一緒になり、カードゲームをした。その賭け金として、執事のグラハムを1か月借り受ける権利を得た。 1か月の間、出版準備で忙しいと、グラハムに来客応対などを頼む。しかし、その出版予定の本は、グレースの恩人の醜聞を載せた暴露本で、グレースはグラハムを送り込むことにより、なんとかして醜聞をクレアギルスから奪おうとの意図があった。この間、グラハムは、強請(ゆすり)などやめるようクレアに再三忠告したが、結局それが聞き入れられることはなかった。

ミセス ドノバン

グレース・ジョンストンの暮らす屋敷の隣に住む年配の女性。住んでいる家は借家で、その持ち主はジョンストン家。庭で鶏を飼っており、産んだ卵をジョンストン家に納めて代金をもらっている。グラハムが市場の一般的な金額より高く買い取っていることを知ったグレースが、偽善だと意見したため、一時2人の関係が険悪になった。話し好きの独居老人で、自慢の孫のことを語るのが好き。

セシル・オーウェル (せしるおーうぇる)

グラハムの異父妹の女子大学生。金髪のロングヘアを後ろに流して額を出した髪型をしている。貧乏な大学院生のギルバート・ハリスと学生結婚した。ところが、ギルバートの親友のアーノルド・ベーカーが、かつてギルバートと同性ながら交際しており、その関係がまだ続いているという話を聞いて、挙式後すぐに離婚を考え始めている。 もともとギルバートとの結婚に賛成していなかったグラハムは、セシル・オーウェルの離婚に積極的に協力することとなる。

ギルバート・ハリス (ぎるばーとはりす)

セシル・オーウェルの夫。大学院生の黒髪の青年。友人間では「ギル」と呼ばれている。親友のアーノルド・ベーカーが、同性ながらギルバート・ハリスと交際しており、その関係がまだ続いていると、セシルに仄めかした。そのため、結婚したばかりにも関わらず、早くも離婚の危機に瀕している。アーノルドとは半年前までルームメイトだったが、彼が出て行ったため、そのアパートでセシルとの新生活を始める予定だった。 ところが、セシルにアーノルドとの関係を詰問され、口論の果てについセシルを殴ってしまった。その結果、セシルはギルバートの家を出てしまう。妻を言葉で納得させられない不器用な面もあるが、友人を信頼しているからこそ優柔不断な態度を取ってしまうような、実直な人柄の人物。

アーノルド・ベーカー (あーのるどべーかー)

ギルバート・ハリスの友人の青年。友人間では「アーニー」と呼ばれている。短髪のウェービーヘアをしている。就職先もきちんと決めている、しっかりした人物。お調子者な一面はあるが、それでも「人を困らせるような悪ふざけはしない」と、ギルバートには信頼されている。もともとギルバートとはルームメイトだったが、半年前に「彼女と暮らす」と部屋を出て行った。

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