マホロミ 時空建築幻視譚

マホロミ 時空建築幻視譚

高名な建築家を祖父に持ち、自身も横浜にある大学の建築科に進学した土神東也は、あるとき自分に取り壊される建物の記憶が見えるという特殊能力が宿っていることに気がつく。そんな東也が、同じ力を持ち、祖父とも深い関わりを持つ深沢真百合と建物の心残りを推理し晴らすために奔走するファンタジー漫画。

正式名称
マホロミ 時空建築幻視譚
ふりがな
まほろみ じくうけんちくげんしたん
作者
ジャンル
ファンタジー
関連商品
Amazon 楽天

概要・あらすじ

横浜にある大学の建築科に進学した土神東也は、横浜では有名な建築家であった祖父・土神拓西が設計し亡くなるまで住んでいた家で新生活を開始する。祖父と父親の折り合いが良くなかったため、拓西とほとんど会ったことがなかった東也は、そうと知らずに建築科を志望したが、のちに拓西が建築家でしかも高名だったことを知ることに。

東也の大学生活は、いささかの鬱屈を抱えた状態で始まることとなる。ある日、大学の同級生で友人の円海卯に誘われ、取り壊しを待つとある洋館を訪れることとなった東也。そこで彼が何の気なしに古びたドアノブに触れた瞬間、不思議な映像がうつしだされるのだった。一度は引き上げたものの、気になった東也は当日、ひとりで再び洋館へと赴くことに。

現地で自分が体験したことは何だったのかを考えていると、東也はひとりの少女と出会う。その日は誰何する声から逃れるため洋館を去った東也だったが、やはりどうしても気になり、すでに更地となった現地を訪れまたもや少女と出会う。なぜここに来たかを問う少女に対し、自分の経験したありのままを伝える東也

すると少女はおもむろに、自分と手をつなぐように求めるのだった。訝しがりながらも言われたとおりにすると、2日前に経験したものとは比べ物にならない鮮明さで、ひとりの女性が自分のしたためた手紙を机の引き出しにしまう様子が映し出される。映像は「建物の記憶」だと言う少女の言葉に半信半疑ながら廃材を調べると、映像通りの机が見つかり、引き出しから手紙も発見。

出せずじまいに終わった手紙を、建物がそのまま廃棄させたくなかったのだろうと推測した少女は、手紙をきちんと投函するといい、東也のもとを去っていった。夢うつつの心地がする東也だったが、のちにひょんなことから少女と再会。少女が、祖父の拓西と深く関わった人物だと知る。

以後、東也と少女は、取り壊しを控える建物の心残りを晴らすために手を携えるのだった。

登場人物・キャラクター

土神 東也 (にわ とうや)

横浜にある横浜学院大学の建築科に進学した男子大学生。実家は千葉にあるが、高名な建築家であった祖父・土神拓西が自分のために設計し生前暮らしていたレトロモダンな一軒家が横浜に遺されており、そこで一人暮らしを始める。ただ、父親と拓西が不仲だったため付き合いは皆無に等しく、拓西が建築家だったことは高校3年生になるまで知らなかった。 拓西の手がけた建築物に畏敬の念を抱く一方、大学やバイト先など出会う人に拓西が与えた影響が大きいことを知るにつれ、土神の名を荷が重いものと感じるようになる。あるとき、取り壊しを待つ古い洋館を訪れた際、自分に不思議な特殊能力が宿っていることを気付かされた。 その後、自分と同じ能力を持つ少女から、それが建物の記憶を映像として見る力だと教えられる。そしてふたりは協力して、自分たちが見た映像から建物の心残りを晴らすのだった。互いに名乗ることすらせず少女と別れた東也だったが、その後、ひょんなことから少女と再会。深沢真百合というこの少女に誘われる形で、別の取り壊しを待つ建物を訪れ、そこでもふたりは建物の心残りを見つけ出す。 また同時に、真百合が拓西と縁深い人物であることを知った。以後、さまざまな建物の記憶の映像を見て、真百合とともに謎を解き明かしていく東也。そうしていくうちに東也は真百合に惹かれていく。だが、あるとき真百合の住む家の記憶に触れたことで、真百合が拓西を一人の男性として慕っていたことを知ってしまう。 建築家である拓西へのコンプレックスもあいまって、東也は深く思い悩むように。そんな折、友人から拓西が手がけた建物が取り壊されることを聞かされ、その友人の紹介で現地を訪問した東也は、家主からある依頼をされる。 ときを同じくして真百合が彼女を冷遇していた祖父を看取るために実家に戻ることを知り、さらに自分から特殊能力が失われていることに気付く。雑念を払うように没頭するあまり一時は体調を崩すが、ひたむきに向き合うことにより依頼を見事に達成。同時に自分の中の気持ちに整理をつけることにも成功するのだった。空間把握能力に優れ、アルバイト先の建築事務所・アトリエ・モリエでは主に模型作りを担当する。

深沢 真百合 (ふかざわ まゆり)

深沢芙貴子の孫娘。容姿は若いころの芙貴子に瓜二つの楚々とした美人で、長い黒髪をたくわえる。母親が父親のわからない真百合を産んだのち自殺したことで、深沢家では疎まれて育つ。ただし唯一の例外である芙貴子からは可愛がられていた。芙貴子が生前、横浜にある自分の別荘を真百合の名義にしており、芙貴子が没すると真百合は深沢家を出て横浜に移り住み、仕立屋をして生計を立てる。 その後、土神拓西に家の補修を依頼したことがきっかけで、かつての想い人の孫娘として世話を焼かれるように。そうするうち真百合は拓西のことをひとりの男性として慕うようになる。そんな拓西も没し、ひとりでひっそりと暮らしていた。 幼いころは不思議な現象を感知する能力があったものの、長じてからは真百合自身も忘れていたところ、あるとき久しぶりに感知能力が復活。導かれるように取り壊しを待つ古い洋館を訪れ、そこでひとりの男性と出会う。自分と同じ力を持つ男性と協力することで、建物の心残りを晴らすことに成功。 互いに名乗ることもせず別れるが、のちにひょんなことから再会し、男性が拓西の孫・土神東也であることを知る。その後、建築科の学生で建築事務所でバイトもする東也が関わった古い建物の心残りの謎を、ふたりして解いていくことに。のちに深沢家当主である祖父が病に倒れたという知らせが入る。真百合のことを「深沢家の恥」とまで言った相手だったが、死の淵に立った祖父が自分を芙貴子と思い込み、すがるように手を握ってきたことでわだかまりが霧消。 祖父の最期のときまで付き添うことを決意する。

土神 拓西 (にわ たくし)

土神東也の祖父で故人。派手ではないが住む人のことを実直に考えた家を作る建築家として横浜では名声を博していた。力のほどは東也に遠く及ばないが、建物の記憶を見る特殊能力の持ち主。若きころ、療養のため夏になると横浜の別邸を訪れ、また自分と同じような能力を持つ深沢芙貴子(旧姓は不明)と互いに想い合うようになった。 だが、芙貴子には許嫁がおり、深沢家へと嫁いでゆく。拓西もまた別の女性と所帯を持つことになるが、終生芙貴子への気持ちは変わらなかった。一方、そうした想いは妻を苦しめることになり、息子からも反発されてしまう。結果、息子とは疎遠となり孫である東也とも、先立たれた妻の葬儀などを除くとほとんど会ったことはなかった。 その後、芙貴子の孫娘である深沢真百合が、かつて芙貴子が横浜滞在時に使っていた別邸で暮らすようになったことを知り、亡くなった芙貴子の代わりに真百合の面倒を見るように。だがそれほどの時を経ずして、拓西も他界する。

深沢 芙貴子 (ふかざわ ふきこ)

深沢真百合の祖母。病弱だった若きころ、療養のため夏になると横浜の別邸に滞在し、そこで建築家の土神拓西と出会い相思相愛の仲になる。だが、芙貴子は許嫁が居る身であり、拓西と結ばれることなく深沢家へと嫁いでいった。深沢家での生活は幸せなものではなく、娘の芙莉子は家を出ていき、のちに父親のわからない孫娘・真百合を連れて戻ってきた挙句に自殺。 深沢家の人間は真百合を冷遇するが、芙貴子のみは真百合のことを可愛がる。そうした日々のなかでもずっと拓西への想いは変わらなかった。自らの死期を悟ってからは、かつて拓西と出会った別邸を真百合に与えるため名義変更を行った上で、自分が死んだら深沢家を出て横浜で暮らすよう諭す。 そのわずか3か月後、他界。

地引 計馬 (じびき けいま)

土神東也がアルバイトとして働くようになった建築事務所・アトリエ モリエの所長を務める。もともとは有名建築家の事務所で働いていたが、のちに独立してアトリエ モリエを起ち上げた。建築家としての腕は良いが、不精な性格と商売気のなさで経営状態はつねにカツカツ。また独立に際しては当時の恋人・鳥浜岬が当然ついてきてくれるものと考えていたが思惑が外れ、職場に残った岬がのちに大きな賞を受賞したことに複雑な思いを抱えている。 事務所の実質はスタッフで事務員も兼ねる仲代雪子に任せきりで、また仲代から想いを寄せられているが、計馬本人はまったく気づいていない。建物の記憶が見える東也が、建物の心残りを晴らすため、普通に考えれば突拍子もないことを相談してくることがあるが、ときに不審がりながらも最終的には協力。 土神拓西のファンで、拓西の存在が重圧になっていることを東也が吐露した際には、厳しい言葉で叱咤した。

仲代 雪子 (なかだい ゆきこ)

地引計馬が営む建築事務所・アトリエ モリエのスタッフ兼事務員。気が強く真面目で堅い性格で、だらしなく商売気のない計馬に代わり、事務所のもろもろを一手に担っている。さらに激務の中、帰宅後に一級建築士の試験勉強も欠かさない努力家。いつも小言ばかりで一見そうは見えないが、長く計馬のことを慕っている。 事務所スタッフからの愛称はナカディー。

円海 卯 (みつうみ あきら)

横浜学院大学の建築科に通う女子大生で、土神東也の友人。小学校4年生のときにサマースクールで東也に出会い親しくなる。小学校を卒業し東也がサマースクールに行かなくなると関係が途絶えていたが、進学した大学で偶然再会。幼いころから建築マニアで、特に古い建築物に並々ならぬ執着を見せる。 東也を解体寸前の古い洋館に誘い、彼に特殊能力が宿っていることを気付かせるきっかけを作った。実家は剣道場を営んでいる。道着の修繕をはじめ、深沢真百合が営む仕立屋のお得意様で、偶然出会ったきり互いの名前を知らなかった東也と真百合を再会させた人物でもある。東也をほのかに意識しているが、いつしか東也が真百合に向ける想いに気づいてしまう。 寅弘・辰弘という2人の兄から溺愛されており、近づく男は剣道の達人でもある彼らから実力排除されている。

長塚 美樹 (ながつか みき)

土神東也がアルバイトをする建築事務所・アトリエ モリエのスタッフ。美樹という名前だが、男性である。就職活動に失敗したところを、アトリエ モリエの所長・地引計馬に拾われた。当初は働きながら建築士を目指していたが、次第に家具職人を志すようになる。 高名な建築家である土神拓西を持つことに対するプレッシャーを東也が口にすると、長く使われてきたアンティーク家具によく触れる経験から、優しく東也を励ました。

石蕗 巽 (つわぶき たつみ)

横浜学院大学建築科に通う学生で、土神東也たちの同期生である。円海卯と同じ高校に通っていた。代々資産家の家柄に育ち、自宅もいわゆるお屋敷。情緒を解さず実利的な性格で、古い建物には一切の価値を見出さない。直截な物言いをするため反感を買うことが多いが、裏表のない性格で、また迷い猫を助けようとするなど本質的には人がいい。 2年進級時、大学教授の父親の「庶民感覚を知れ」という方針で、一方的に横浜中の貧乏学生が集まる廃屋同然の学生寮で暮らすことに(なお、高校も同じ理由で父親が決めたが、石蕗本人はまったくなじめなかった)。それまでとのギャップに最初は戸惑ってばかりだったが、特にめげることなくより良い生活環境を獲得するため誰も手を付けていなかった共用スペースの掃除に着手。 周囲を自分のペースに巻き込んでいった。そんな折、学生寮解体が決定される。自宅に帰れると喜ぶ石蕗に対し、残念がる他の寮生を見て、自身の立ち位置は変えないものの、学生寮の最期を看取るためのアイディアを提案。 また、かつて同じ学生寮で青春を過ごした祖父に話を回すことで、極秘裏に解体を撤回へと導くのだった。

坂本 (さかもと)

横浜学院大学建築科に通う男子大学生で、土神東也の友人。建築科に進んだのは、設計事務所を営んでいる父親の後を継ぐため。やや軽薄な面が見られるが、友人思いの好人物で東也が建物について調査する際、父親の伝手を使って協力してくれることがしばしばある。また、東也がアトリエ モリエでアルバイトするようになったのも坂本経由でだった。 高名な建築家だった祖父・土神拓西のプレッシャーにさらされ、また想いを寄せる深沢真百合との関係に東也が思い悩んでいたとき、彼に拓西が設計した建物が近々取り壊されることを教え、さらに東也がその建物に入れるように手配してくれる。

SHARE
EC
Amazon
logo