ヨアケモノ

ヨアケモノ

この世での栄達を求め、侍を目指した少年が新撰組の一員となって、人に仇を成す悪鬼羅刹と戦う和風ファンタジー漫画。「週刊少年ジャンプ」2014年第34号から第50号にかけて掲載された。

正式名称
ヨアケモノ
ふりがな
よあけもの
作者
ジャンル
和風ファンタジー
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概要・あらすじ

山中の古寺を住処にして数多くの侍を倒し、剣の腕を磨いていた暁月刃朗暁月銀の少年コンビは、名を揚げるため故郷を捨て、京へと出立。過激派浪士から京を守る新撰組に入隊し、侍として成り上がることを決意する。しかし、京に入った当日、長州藩が放った間者・松永主善が幕府の秘密情報を持ち逃げしたことで、入隊試験が一時的に延期となってしまう。

これを好機ととらえた2人は、主善を捕えて新撰組への土産物にすることを画策。京に潜伏する主善の居場所を血の匂いで突き止め、彼に勝負を挑む。しかし、主善の圧倒的な力の前に押しまくられ、激戦の最中、刃朗のピンチを救おうとした銀が討ち取られてしまう。怒りを爆発させ、猛烈な太刀筋で主善を追い詰めたものの、主善の持つ「再生能力」の前に力尽きる刃朗。

しかし、落命寸前に新撰組の土方歳三から渡された獣刃を掴んだことで、刃朗は獣の力を得た能力者として生き延びることに成功する。紆余曲折の末に新撰組へと入った刃朗は、志半ばで倒れた銀が残した言葉を胸に、世にはびこる悪鬼たちと戦いを繰り広げていくのだった。

登場人物・キャラクター

暁月 刃朗 (あかつき じんろう)

朱色の髪を持ち、額に「犬」と彫られた刺青がある、孤児出身の少年。年齢は14歳。侍を目指している。流山中の廃寺を住処とし、暁月銀とともに侍を倒し続けて剣の腕を磨いていた。そのため、近隣では敵知らずの腕前となり、「峠の侍狩り」「山犬」の異称で恐れられる存在となる。俊敏な動きから2本の刀を繰り出す、野性味溢れる二刀流を得意としていた。 山犬によって育てられた過去を持ち、人里に下りた際に「獣の仔」として排除され、額に罪人彫りという刺青を入れられてしまう。その際に知り合った銀から人間の言葉を教えられ、ともに助け合って生きてきた。侍になるために京に出向き、幕府御用達の隊・新撰組に入ろうとするが、幕府の秘密情報を持ち逃げした松永主善を討とうとして返り討ちに遭い、銀を失ってしまう。 自身も致命傷を負うが、死の間際に土方歳三から獣刃を渡され、獣の力を持った能力者として生き延びることになった。獣の能力は「山犬」で、底なしの体力で延々と戦い続けることができる。純粋かつ素直な性格をしており、感情表現も豊かだが、警戒心が強く、心を許した人間以外にはその素顔を見せることはない。

古高 俊太郎 (ふるたか しゅんたろう)

侍の男性。「枡屋嬉右衛門」という偽名を持ち、表向きは京にある老舗商店の主をしている。その正体は京に出入りする長州浪士を操る、長州藩の浪士の大元締め。各地から大量の武器や火薬を買い付け、御所に火をつけて天子様を長州へ連れ帰る計画を立てていた。使い勝手のいい手駒として岡田以蔵を使役する。実在の人物、古高俊太郎がモデル。

暁月 銀 (あかつき ぎん)

白い肌と銀色の髪を持ち、額に「犬」と彫られた刺青がある、孤児出身の少年。年齢は15歳。侍を目指している。長刀を巧みに扱う優れた剣士。幼い頃に盗みを働き、村人に捕まっていたところを暁月刃朗に助けられ、無二の親友となる。暗い生い立ちとは裏腹にとても明るい性格で、初対面の相手とも気兼ねなく話せる社交的なタイプ。村を追い出された後に刃朗とともに山中の廃寺に移り住み、侍を倒して剣の腕を磨いていたことから、「峠の侍狩り」「山犬」の異称で、近隣では恐れられる存在となる。 徒手空拳の自分たちが成り上がるには剣の道しかないと考え、刃朗と一緒に京へ移り住み、新撰組に入隊しようとするが、幕府の秘密情報を持ち逃げした松永主善を討とうとして致命傷を負い、志半ばで命を落としてしまう。 死に際に残した「負けんなよ」という言葉は、刃朗の生き方に強い影響を及ぼすことになった。

土方 歳三 (ひじかた としぞう)

侍の男性。新撰組の副隊長を務めており、新撰組を作った中心メンバーの1人。年齢は29歳。狼の獣刃を持ち、恐るべき速さで敵をズタズタに切り裂くことができる能力者。その苛烈な太刀筋と規律に厳しい性格ゆえに「鬼の副長」「壬生の狼」の異名を取っている。幼少の頃に近藤勇の道場で天然理心流を学んだが、基礎になっているのは喧嘩でならした我流の剣術。 松永主善との戦いで瀕死の重傷を負った暁月刃朗に獣刃を渡し、彼を生き残らせた。厳しい態度と苛烈な姿勢で隊士の行動を律する生まれながらのリーダーだが、実は俳句や金勘定といった、庶民的な趣味の持ち主。ただし、その姿を刃朗や一般剣士に見せることは決してない。実在の人物、土方歳三がモデル。

沖田 総司 (おきた そうじ)

侍の男性。弱冠20歳にして新撰組の逸番隊組長を務めている、中性的な風貌をした天才剣士。いつも飄々としているが、一度剣を抜けば新撰組でも一、二を争う恐るべき剣豪。実戦においても本気を出すことは滅多になく、その実力は底が知れない。新撰組の入隊試験では剣術師範として、入隊希望者の技量を見極める役割を担っていた。獣刃の持ち主で、猫の力を得た能力者でもある。 両刃の刀身に3倍の柄を持つ「菊一文字」という特別な刀を自在に扱い、神速の突きを得意とする。中身は天真爛漫な子供そのもので、常に遊び相手や玩具を探している。暁月刃朗が新撰組に入隊してからは、刃朗をイジるのが趣味となる。なお、猫の獣刃の影響により熱いものが苦手で、またたびにも弱い。 実在の人物、沖田総司がモデル。

近藤 勇 (こんどう いさみ)

侍の男性。新撰組のすべての隊士をまとめる筆頭局長を務めており、新撰組を作った中心メンバーの1人。年齢は30歳。右目に眼帯をしているのが特徴。2メートルを越える長身で、隕鉄から作った刃のない大剣「長曾祢古鉄」を片腕で悠々と振るえるほどの怪力を誇る。髑髏を魔除けの印として気に入っており、稽古着や眼帯にも髑髏をあしらっている。 隊士のことは家族と思っており、遠方へ出たときにはたくさんのお土産を持ち帰るが、基本的にセンスが悪いため、隊士から喜ばれたことはない。しかし、そのことに本人はまったく気付いていない。実在の人物、近藤勇がモデル。

市村 鉄之助 (いちむら てつのすけ)

侍の男性。新撰組で土方歳三付きの小姓をしている15歳の少年。近藤勇の言いつけで、新人の暁月刃朗を世話役を任されることになった。年齢が近い刃朗とは口喧嘩が絶えなかったものの、いつしか互いの実力を認め合う、終生の友となる。一緒に新撰組に入った兄の辰之助を岡田以蔵によって惨殺されており、辰之助が授かるはずだった獣刃を土方から託され、雪豹の力を持つ能力者となった。 そのため、土方には強い恩義を感じており、忠誠を尽くしている。雪豹の力によって自らの気配を完全に絶つことができる。身長が低いことを気にしており、毎晩こっそり背を伸ばす訓練をしている。実在の人物、市村鉄之助がモデル。

坂本 龍馬 (さかもと りょうま)

土佐藩を脱藩した浪士で、すべての反幕府勢力を影で操っていた男性。古高俊太郎や岡田以蔵を手駒として使っていた危険人物だが、表面的には飄々としており、殺気を感じさせない独特な雰囲気の持ち主。日本を「洗濯」し、新しい国にするという壮大な野望を抱いており、その手始めとして「朱の獣刃」を使い、京に黒死病を蔓延させようとしていた。 他の能力者から獣刃を奪うことで、自身を強化しており、複数の獣の力を発現できる強者。古臭い因習にとらわれている頑固な侍を激しく憎んでおり、土方歳三と暁月刃朗を同時に叩き潰そうとする。実在の人物、坂本龍馬がモデル。

岡田 以蔵 (おかだ いぞう)

侍の男性。土佐の脱藩浪士で、長州藩の手先となり、京で百人以上の人間を斬り続けていた凄腕の剣士。そのあまりの強さと凄絶さゆえに、新撰組からは「人斬り以蔵」という異名で呼ばれていた。幼少期の頃の病で視力を失っているが、獣刃によって蟒蛇(うわばみ)の力を得ており、視覚以外の感覚で敵の位置を完璧に察知し、攻撃することができる。 さらに、一度手合わせした人間の気配を記憶し、縄張りに入った瞬間から手に取るように位置を把握してしまう。人を斬ることに自身の生きる意味を見出しており、どんな相手を敵に回しても一切躊躇することがない。過去に市村鉄之助の兄である辰之助を惨殺しており、鉄之助にとっては因縁の剣士だった。実在の人物、岡田以蔵がモデル。

松永 主善 (まつなが しゅぜん)

新撰組の元隊士で、左目に傷が入っている侍の男性。長州藩の間者となり、京都の新撰組の屯所から幕府の秘密情報を持ち逃げした裏切り者。弱者にも容赦は一切しない、冷酷非情な性格。彼の首を新撰組への手土産にしようとした暁月刃朗と暁月銀に命を狙われるが、剣術で2人を圧倒し、銀を討ち取った。イモリの再生能力を持つ能力者の1人で、体の一部を切り落とされても、すぐに再生することができる。 刃朗の攻撃で大きなダメージを受け、再生中に土方歳三によって細切れにされて絶命した。実在の人物、松永主善がモデル。

山崎 烝 (やまざき すすむ)

新撰組の監察を務めており、情報の収集や潜入任務を行っている侍の男性。「へのへのもへじ」と書かれたお面を常に被っている変人で、その素顔を知るものは土方歳三と近藤勇以外に存在しない。監察としての能力は極めて優秀で、実質的に土方の右腕と呼べる存在。針医師の家系の生まれで、幕府御典医の松本良順より授かった救急医療法を裏芸にしている。 なお、お面の下はかなりムレているとのこと。実在の人物、山崎烝がモデル。

吉田 稔麿 (よしだ としまろ)

侍の男性で、長州藩の活動家。獣刃によって火喰鳥の力を得た能力者。柳生新陰流剣術と宝蔵院流槍術を学んでおり、必殺の突き技「姑獲鳥穿」は沖田総司の突き技すら上回る威力と速度を誇る剣の達人。幕府の役人や遊郭の女性を喰らって力をその強大化させている。弱い幕府が上に立つ現状を国家存亡の危機と認識しており、強い者が国の舵取りをするべきだと考えているため、非道な行いに対する罪悪感はまったくない。 実在の人物、吉田稔麿がモデル。

島田 魁 (しまだ かい)

新撰組の監察を務めている侍の男性。年齢は36歳。筋骨隆々たる巨漢で、新撰組一の力持ち。見た目に似合わない繊細な仕事ぶりが評価されており、土方歳三からも厚い信頼を得ている。料理の腕も新撰組No.1で、炊事はすべて彼が担当していた。相当な甘党なため、自分用に大鍋たっぷりの汁粉を作って食べることもある。実在の人物、島田魁がモデル。

尾関 雅次郎 (おざき まさじろう)

新撰組の監察を務めている侍の男性。年齢は20歳で、隊のシンボルである「誠」の旗を持つ旗役を任されている。体は小さいが、不屈の闘志を内に秘めた優れた隊士。重量のある旗を乱れなく持ち続けるため、常に筋力を鍛えている努力家でもある。面倒見の新人である暁月刃朗にも目をかけていた。実在の人物、尾関雅次郎がモデル。

永倉 新八 (ながくら しんぱち)

新撰組の弐番隊組長を務めている侍の男性。年齢は25歳。だらしなく顎鬚を生やし、どこかやる気のない雰囲気を漂わせているが、実は沖田総司と並ぶ剣の実力者。煙草をこよなく愛しており、常に煙を燻らせているヘビースモーカーでもある。実在の人物、永倉新八がモデル。

原田 左之助 (はらだ さのすけ)

新撰組の什番隊組長を務めている侍の男性。年齢は24歳。2メートルを越える巨漢で、とにかく声が大きい新撰組のムードメーカー的存在。自由気ままな性格で、食事と睡眠、女性が大好き。ただし、彼女がいたことは一度もない。過去に武士との諍いで切腹しており、一命は取り留めたが、今でも腹に大きな傷跡がある。実在の人物、原田左之介がモデル。

中村 半次郎 (なかむら はんじろう)

目元に奇怪なお面を付けた薩摩藩士の男性。「人斬り半次郎」の異名をとる凄腕の剣士で、岡田以蔵に並ぶ腕前の持ち主。坂本龍馬の配下となって、五重塔の水の間に陣取り、やって来た新撰組に勝負を挑む。新撰組でもっとも強い者と戦うことを望み、その結果斉藤一と戦うことになった。実在の人物、中村半次郎がモデル。

河上 彦斎 (かわかみ げんさい)

目元に奇怪なお面を付けた薩摩藩士の男性。「人斬り彦斎」の異名をとる凄腕の剣士で、岡田以蔵に並ぶ腕前の持ち主。坂本龍馬の配下となって、五重塔の水の間に陣取り、やって来た新撰組に勝負を挑む。新撰組でもっとも強い者との立ち合いを望み、その結果斉藤一と戦うことになった。実在の人物、河上彦斎がモデル。

藤堂 平助 (とうどう へいすけ)

新撰組の叭番隊組長を務めている侍の男性。年齢は20歳。新撰組きっての若手組長。普段は臆病だが、戦場に踏み込むと好戦的な人格に豹変。ただし、戦闘が終了するとその時の記憶はほとんどない。仲がいい沖田総司からは好戦的な人格を「キレ助」と呼ばれていた。実在の人物、藤堂平助がモデル。

斉藤 一 (さいとう はじめ)

新撰組の参番隊組長を務めている侍の男性。年齢は20歳。髪で目元を隠した寡黙な剣士。喜怒哀楽の感情表現に乏しいため、何を考えているのか理解しにくい部分はあるが、本人は新撰組を居心地の良い場所だと思っている。酒と静電気が苦手。実在の人物、斉藤一がモデル。

宮部 鼎蔵 (みやべ ていぞう)

京の池田屋を拠点にしていた肥後の脱藩浪士で、首に数珠を巻いている男性。幕府を倒し、新しい国を立てようと画策する倒幕派の一員。池田屋に踏み込んだ新撰組を迎え討つが、近藤勇に圧倒され、完敗してしまう。実在の人物、宮部鼎蔵がモデル。

新堀 松輔 (にいぼり まつすけ)

長州藩の藩士である長髪の男性。五重塔の風の間で新撰組の隊士を待ちうけていた。二条城の牢から助け出した後に力を暴走させ、ただの異形と成り果てた吉田稔麿を新撰組にぶつける。実在の人物である新堀松輔がモデル。

集団・組織

新撰組 (しんせんぐみ)

幕府転覆を狙う過激派の浪士から京を守るため、近藤勇と土方歳三が結成した日本最強の治安維持組織。誠の武士を求めており、京の屯所には入隊を希望する腕に覚えのある猛者が日本各地から訪れるものの、入隊試験に合格しないとその一員になることはできない。首尾よく入隊した者であっても、最初の任務で大半の者が死ぬといわれている。

場所

五重塔 (ごじゅうのとう)

京にある楼閣形式の寺院で、五層の屋根を持つ大きな仏塔。下の階層から地、水、火、風、空の5つの世界を現している。京の破壊を企む坂本龍馬の一味が、ここを拠点として活動していた。新撰組が乗り込んだ際は、各階層に藩士が待ち構えていた。

長州藩 (ちょうしゅうはん)

現体制では国が維持できないと考え、幕府の転覆を狙っている地方の藩。京に反幕府の浪士を密かに送り込み、テロまがいの行為を繰り返して世を混乱へと導いていた。対抗する組織である新撰組とは、血で血を洗う、激しい抗争を繰り広げていた。

その他キーワード

獣刃 (じゅうじん)

1853年の黒船来航とともに日本に持ち込まれた呪われた刀。人体に刃を突き立て、受け入れることができた者だけに恐るべき獣の力を与える。新撰組を擁する幕府側勢力が十一振りを所持しており、副長の土方歳三が見込みのある者に獣刃を手渡していた。残る半数は反幕府勢力が所持している。「朱の獣刃」という特殊なタイプもあり、通常の獣刃とは比べ物にならない凶悪な力を宿しているとされていた。

能力者 (のうりょくしゃ)

獣刃を受け入れ、獣の力を得た者。体の一部が欠損しても瞬時に再生したり、視覚以外で敵の位置を性格に把握できるようになるなど、人知を超えた能力が発現させられる。能力の発現時は、能力者の容姿がもとになった獣に近い姿に変化する。

黒死病 (ぺすと)

500年前に西洋の国々で総人口の半数を死に至らしめた疫病で、「朱の獣刃」の熊鼠が持つ力。坂本龍馬は「朱の獣刃」を利用して京に黒死病を巻き散らしたうえで、御所を焼いて天子様を長州藩へ連れ去ることを計画していた。

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