三十路飯 肉

晴山業務店に勤める間宮律は、長身のクールビューティーだが、並の職人の三倍以上の仕事をこなすことで有名だった。愚痴や無駄口を一切こぼさず、ストイックに仕事に集中する姿に、周りの男性たちは感心と同時に心配もしていた。何か楽しみはあるのだろうかと。しかし、当の間宮には至上の楽しみがあった。それは、美味しい肉を食べること。例えば一人で人気の焼肉店に行き、念入りにリサーチした肉を頼む。そして慎重に肉を焼き、ここしかないというタイミングで口に運ぶ。それは彼女と肉の真剣勝負。肉に対する愛情と敬意に満ちた神聖な行為だった。全身の細胞で肉の旨味を堪能した後、間宮は、そのレポートをブログに綴る。肉を愛する三十路女のブログには、多くのファンがいた。彼らの温かいコメントに間宮は癒やされる。肉は燃料であり、彼女を突き動かす原動力なのだ。築地場外の鳥弁当や浅草老舗店の煮込みなど、間宮の肉を求める旅は終わらない。