仕事一筋のアラサー女性の癒し
建築事務所で働く高山は、少々優柔不断ながら仕事に真摯に向き合い、自分が納得するまでとことん突き詰める性質。そのため連日残業続きだが、そんな彼女の疲れを癒すのは、美味しいものを食べること。退勤後にふらりと入ったお店で振る舞われる料理を食べると、高山の妄想として擬人化された食材が姿を現し、彼女を諭したり、元気づけたりしてくれる。こうして心も体も癒された高山は、いつもの日常へと戻っていく。本作のそんなほっこりと心温まるエピソードは、人生に悩む読者にも勇気と癒しを与えてくれる。
作中に登場するのは実在の有名店
物語の中で高山が訪れる店は、いずれも実在の有名店となっている。作中で高山が食べている料理も、それらの店で実際に食べることが可能。各エピソードの最後には、店の紹介をはじめ住所や電話番号、定休日、営業時間、席数までもが紹介されており、聖地巡礼をしながら美味しいものを食べられる情報が完璧に整えられている。ただし、情報はいずれもコミックス刊行時のもので、中にはすでに閉店してしまっている店や、提供メニューが変わっている店もある。
幼なじみとの恋愛物語
すでに年齢が32歳ということもあり、高山は仕事の成果を上げるだけではなく、結婚をはじめとした人生設計にも焦りを感じている。遠距離恋愛中の彼氏と破局を迎えてからは、その傾向がさらに顕著になっていく。そして高山の中で、少しずつだが確実に異性としての存在感を増していくのが、幼なじみで腐れ縁の料理人、景。一方の景は、学生時代から高山の笑顔に心を奪われていたが、互いの関係性から彼女に明確に思いを伝えられずにいた。だが、高山の会社の後輩、森下や、高山の初恋の相手で彼女とお見合いをすることになった上条の後押しにより、高山と景は急速に距離を縮めていく。そんな二人のじれったくも爽やかな恋物語が、本作の見どころの一つとなっている。
登場人物・キャラクター
高山 日向 (たかやま ひなた)
建築事務所で働いている女性。年齢は32歳。肩までのセミロングヘアで、スレンダーな体型をしている。ふだんは少々優柔不断だが、これと決めたことは即断する思い切りのよさがある。猫の「お花」と二人暮らしで、大学時代から10年付き合っている彼氏がいるが、現在は彼が大阪に赴任しているため遠距離恋愛中。のちに彼が家に女性を連れ込んでいることが発覚し、破局を迎える。幼なじみの景とは今でも親しく、しばしばいっしょに食事をする仲。景に好感を抱いているが、すでに家族同然の関係のため、告白してふられることで家族と親友を同時に失うことを恐れて一歩を踏み出せずにいる。ちなみに景が働く鶏料理専門店「竹内」の内装は、高山が初めて手掛けた仕事である。
景 (けい)
江古田の鶏料理専門店「竹内」で働いている男性。年齢は32歳。襟足を長く伸ばした男らしいイケメン。高山とは保育園からの幼なじみで、現在も親しく、しばしばいっしょに食事をする仲。優しい性格の好漢で、若い頃から料理を得意としており、当時から高山によく料理を振る舞っていた。実は昔から高山に思いを寄せているが、その気持ちは彼女に伝わっていない。景自身は高山から家族同然に見られていると認識しているため、思い切って一歩を踏み出すことができずにいる。
続編
三十路飯 肉 (みそじめし にく)
体力勝負の工事現場で働く、三十路のクールビューティー間宮律が主人公。人の三倍以上働く彼女の楽しみは、美味しい肉を食べること。間宮が、実在の焼肉店や弁当屋を訪れ、最高の愛情と敬意で「肉」を食べる、ハート... 関連ページ:三十路飯 肉
書誌情報
三十路飯 全3巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2016-02-12発行、 978-4091873798)
第2巻
(2017-02-10発行、 978-4091893604)
第3巻
(2017-12-12発行、 978-4091897664)