下から、甘噛み。

初村朱莉は彼末兄弟と小さな頃からの幼なじみ。どちらの家も両親の帰りが遅かったことから、三人は兄弟のように仲良く育った。兄の彼末匠は大学進学を機に家を出ることに。高校1年生の朱莉は匠が家を出るという話を聞いたとき、初めて自分は匠に恋をしていたのだと気付いた。寂しそうにしている朱莉のことをつらそうに見ていたのは弟の彼末巽。彼はずっと朱莉のことが好きで、朱莉が兄の匠を好きだということも知っていた。中学3年生の巽は受験を控え、朱莉に勉強を教えてもらっていたが、それは朱莉と会いたいための口実だった。勉強中、朱莉が「匠兄がいなくなってさびしくなる」と話をすると、「兄貴のことばかり。ほんとに朱莉は兄貴のことが好きだ」と言い、朱莉の指を甘噛みする巽。弟のように思っていた巽の男の顔を見た朱莉は驚いて部屋を飛び出してしまう。以来、気まずくなった二人は匠の見送りの時も顔を合わせず、そのまま季節は過ぎていった。夏のある日、巽は何事もなかったように朱莉の前に現れ、以前と同じように登下校したり、一緒にカレーを作ったりしていた。月日が経っても未だに匠のことを気にしている朱莉に「なんで自分じゃないんだ」と憤りを感じつつ、巽は朱莉の首筋に甘噛みをしてしまう。巽の気持ちに応えられないと思いながらも、自分が匠に言われたらつらい言葉を巽に告げられない朱莉。そんな中、巽と出かけた花火大会で、朱莉は地元に帰ってきた匠が彼女とキスをしている姿を目撃してしまう。つらい時に自分を支えてくれたのはやはり巽だった。