俺たちつき合ってないから

俺たちつき合ってないから

川越のキャバクラに勤める一条ゆりかは、ある日、年収3000万円を自称するピュンピュンと出会う。ゆりかは周囲の誰よりもハイスペックな彼との結婚を夢見るが、ピュンピュンの本当の姿は、噓で塗り固められた妻子持ちのクズ男だった。人生に焦るあまりに破滅の一途をたどる女性の姿を描く、アラサー女の転落記。「コミックタタン」で2018年8月から掲載の作品。

正式名称
俺たちつき合ってないから
ふりがな
おれたちつきあってないから
原作者
宮崎 摩耶
作画
ジャンル
水商売
 
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あらすじ

年収三千万円の男

田舎のキャバクラに勤める一条ゆりかは、付き合っていた彼の浮気が発覚して別れたばかり。お金のない男性との恋愛に辟易(へきえき)していたゆりかは、女性の価値は彼氏の年収で決まるとばかりに、年収3000万円のハイスペック彼氏との交際を目標に掲げる。貯金も底をつきそうになる中で出勤した日、ゆりかは客の一人、ピュンピュンと出会う。ピュンピュンは年収3000万円を自称する、まさにハイスペック男子だった。彼が連絡先を教えてくれたことに感動し、自分を満たしてくれるのはこの人しかいないと感じたゆりかは、周囲の誰の彼氏よりもハイスペックなピュンピュンとの結婚を夢見て意気込む。安い女に見られたくないという気持ちから、ゆりかは自己投資とばかりに、カードのキャッシングを利用し、足りない分はリボ払いにして服や装飾品を購入し、ピュンピュンに見合う自分を作り上げていく。しかし、誰もが羨むハイスペック男子のピュンピュンは、噓ばかりで塗り固められた偽りの姿だった。本当のピュンピュンは妻も子供もいる既婚者で、ゆりか以外にも複数の女性と関係を持っていた。そうとは知らないゆりかは、ピュンピュンに呼び出されて、出張先の横浜のホテルまで出向く。しかし、高級ホテルを思い描いていたそのホテルは、安いラブホテルだった。

横浜のホテルに連泊したのち、帰宅した一条ゆりかは荒れ果てた部屋のベッドに横たわり、ぐったりとうなだれていた。それは、ピュンピュンと過ごした最後の日、それまでの不満が一気に噴出し、ピュンピュンにキレてしまったのだ。次の約束がしたいと言えば拒絶され、付き合うというキーワードを口にすれば嫌な顔をする。横浜まで足を運び、彼が不在のあいだはラブホテルで待機して食事の用意までして、献身的に尽くしたゆりかは、ピュンピュンの自分に対する態度に納得することができなかった。そして、自分の部屋で一人ぼっちになったゆりかは、自分が本当に欲しいのはピュンピュンのお金でも顔でもなく、ピュンピュンからの愛なのだということに気づく。ゆりかは、ピュンピュンから届くメッセージに一喜一憂し、自分の送ったメッセージが既読にならないことにやきもきしていた。脳内では、ピュンピュンは自分にムカついており、自分が悪かったに違いないと、ピュンピュンを思うあまりネガティブ思考にとらわれる。そんなある日、部屋のインターフォンが鳴る。そこには別れたはずのマサルの姿があった。

不動産王

マサルからピュンピュンに騙(だま)されているのではないかと、ピュンピュンとの関係を否定された一条ゆりかは、目を覚ませというマサルの言葉に聞く耳を持たなかった。そんな中、ゆりかは今月のカードの請求額が28万円を超えていることに気づき、青ざめる。ゆりかの稼ぎは月15万程度。このままではまずいと思ったゆりかは、声優の仕事も少ない中、あれだけ蔑んでいたキャバ嬢の仕事に本腰を入れるしかなかった。そんなある日、勤務先のクラブに常連客の後京介が来店する。京介は不動産王と呼ばれる、年収5000万円と噂される富豪だが、キャバ嬢に見境なく手を出したため、1か月間出入り禁止となっていた最低男だった。しかしゆりかは、アフターするだけで10万円やると、京介がキャバ嬢に言い寄る姿を目撃し、金になると目論んで京介に近づこうとする。当初は不穏な雰囲気の二人だったが、ゆりかが素の自分を出し、京介をジジイと呼んだことがきっかけで気に入られ、念願叶ってアフターに誘われることになる。その後、かにを食べに連れて行かれ、キレイに食べれば1万円をやると言われ、5万円をエサに京介のマンションに連れ込まれる。マンションに来たからには、一線を越える覚悟をするしかないと腹をくくったが、いざ年老いた裸の京介を前にするとゆりかの決心は揺らいでいた。すると京介は今すぐ服を脱げば3万円と、またしても現金をちらつかせる。そしてその後も金にものを言わせ、行為に及ぼうとする京介に抗(あらが)うことができないゆりかは、すべてはピュンピュンに似合う最上級の女になるためと心を決め、京介からの要求に応じる。

登場人物・キャラクター

一条 ゆりか (いちじょう ゆりか)

田舎のキャバクラに勤める女性。左目元にほくろがある。年齢は28歳。マサルと付き合っていたが、彼の浮気が発覚して別れたばかり。今まで付き合った男性は、総じて金のない夢追い人ばかりだった。月収15万円の彼氏では、誕生日に3万円の財布すら買ってもらえないと嘆き、男のステータスは金と地位と名誉であり、中身はどうでもいいと考えを変えることとなった。それ以来、結婚するなら年収3000万円以上の男と豪語するようになる。幼い頃から貧乏ながらも、一人娘として大切に育てられた。勝気でわがままな性格で、自己承認欲求が強いタイプ。インスタへの投稿は、自分を上げるものに限り欠かさずに行っている。昼は声優業、夜は川越にあるクラブ「Kronos」でキャバ嬢として働いている。声優として仕事をするようになってから、有名作品にも起用され、少しは名の知れた役者になったつもりでいた。しかし最近は声優としての仕事もめっきり少なくなり、収入のほとんどは夜の仕事に頼らざるを得ない状態となっている。それにもかかわらず、自分は選ばれた人間なのだというプライドに囚(とら)われ、水商売を蔑む気持ちが強くあり、キャバ嬢としての仕事に真剣に向き合おうとしていない。ある時、店にやって来たピュンピュンから好みだと言い寄られ、彼の年収が3000万円と知って、なんとか彼をモノにしようと奮起する。現状貯金も底をつき、お金がないにもかかわらず、ピュンピュンに気に入ってもらうための先行投資として、カードのキャッシングを利用して服や装飾品を購入。足りない分はリボ払いで凌(しの)ぎ、ピュンピュンから言われるがままに出張先のラブホテルまで足を運んだり、料理を作ってあげたりと、すべてにおいて彼に翻弄されていく。彼が「付き合う」という言葉を口にしないことや、次の約束をしようとしないことに疑問を抱きつつも、年収3000万という彼のステータスに魅力を感じ、離れることができない。ピュンピュンとのかかわりを持ち始めてから、つねに金欠状態となり、金を得るために客の不動産王、後京介と一線を越える覚悟をするまでに落ちていく。部屋は脱ぎ散らかした服やゴミであふれており、食事はもっぱらカップ麺や値引きされたおにぎり。部屋着は学生時代のジャージを着用している。

ピュンピュン

年収3000万円を自称する男性。一流企業「四菱商事」に勤めるエンジニアという名刺を持っているが、パチンコに興じていることも多く、年収を含めて真偽のほどは定かではない。本名は「草刈尊」だが、クラブなどでは本名を明かさず、通り名である「ピュンピュン」を名乗って遊ぶことを決めている。実は既婚者で、妻の草刈と長男の孝太郎がおり、家庭ではいつも笑顔の温和な夫を演じているが、裏では多数の女性と付き合っている。女性とは、基本的にラブホテルで直接待ち合わせをしている。中には出会って5年になる咲もいるが、どの女性にも付き合うという言葉は絶対に口にせず、自分の魅力の虜(とりこ)になった女性をいいように利用し、金銭を受け取るなどして、つねに自分が優位な関係を維持し続けている。裏の顔はかなりのモラハラ体質で、かつ神経質。家では決まった物は決まった場所に、きっちり寸分のズレもなく置かれていないと気が済まない。さらには、息をするように自然に噓をつくことができる。ある日、友人たちと川越のクラブ「Kronos」に行った際、ホステスの一条ゆりかと知り合い、強気な彼女に興味を持ち連絡先を交換。複数いる女性に加える形で、ゆりかとの関係をスタートさせた。自分には種がないからと言って、性交時にはコンドームを付けず、避妊は女性側に一任している。女性との時間は、ほとんどセックスのためだけに費やされる。高校時代からやり逃げの常習犯で、逃げ足が速いため、「ピュンピュン」と呼ばれるようになったという説や、精子を出す時に、高音でピュンという音が出るからという説もある。

マサル

一条ゆりかの元彼氏。月収15万円で俳優志望の劇団員。お金はないが、ゆりかへの愛情だけはある。別れた原因はゆりか以外の女性と浮気し、関係を持ったため。別れたのち、ゆりかのインスタを見て、新しい彼氏ができたかもしれないと感じながらも、ゆりかに会いたくて再びゆりかの部屋を訪れた。ドア越しに罵倒するゆりかを噓泣きで騙して強引に部屋に押し入り、酒を勧めたりして再び関係を持った。その後、ゆりかが年収3000万円のピュンピュンと関係を持ったことを知り、さらに彼が川越のクラブに来店した客だったことを知って、ピュンピュンの経歴が本当なのかと疑問を抱く。年収3000万円の人間が、田舎のクラブに来るはずがなく、クラブの客層から、彼が既婚の可能性があるのではないかと、あらゆる持論を展開。ピュンピュンにだまされているのではないかとゆりかを心配するが、ゆりかの心にはまったく届かなかった。

草刈 (くさかり)

「ピュンピュン」こと「草刈尊」の妻。夫が帰宅すれば笑顔で迎え、従順で物わかりのいい妻を演じている。しかし、実は夫の部屋にあるファイルに収められている女性の名刺を日々チェックしており、夫が複数の女性と関係を持っていることを把握している。そのため、最近になってファイルに追加された一条ゆりかの名刺を見て、また一人女性が増えたことに気づいた。長男の孝太郎を授かり、日常は息子との時間が主体で、よき母として日々暮らしている。

(さき)

ピュンピュンと関係を持つ女性の一人。彼とは出会って5年になるが、ずっとラブホテルでの密会を続けており、毎週会うごとに10万円の現金をピュンピュンに渡している。自分たちの関係を確実なものにしたい思いで、付き合っているのかという言葉をピュンピュンに投げかけてみるも、それを肯定されることはなく、逆に自分はどう思うのかと質問を返されている。自分は付き合っていると思うとピュンピュンに伝えると、その気持ちが嬉しいと言われ、うまくはぐらかされてしまった。ピュンピュンが既婚者であり、自分以外の女性と関係を持っていることも知っているが、それでもピュンピュンに惚(ほ)れこんでいる。

後 京介 (うしろ きょうすけ)

顔や体中シミだらけの老齢な男性。不動産会社の社長を務める。川越の不動産王との呼び声も高く、年収は5000万円と噂されている。クラブ「Kronos」に通い始めて10年以上の常連客であり、レジェンド的な存在。しかし、キャバ嬢に見境なく手を出す悪い癖があり、1か月の期限付きで出入り禁止になっていた。クラブの裏手にある7階建てのビルは、後京介の別宅で、そのビルに連れて行かれたキャバ嬢は、身も心もボロボロになって姿をくらますケースと、見違えるほど美しくなり、羽振りがよくなるケースの二つに運命が分かれるという噂がある。ある時、中古のドレスを着た一条ゆりかから、ジジイと呼ばれたことで彼女を気に入り、アフターに誘った。自分とアフターに行けば金をやる、美しく食べれば金をやるなど、すべて目の前に大金をぶら下げることで自分の欲求を承諾させようとする。ゆりかとは、自分が射精できたら大金をやるという条件をつけ、金にものを言わせる形で性交を強要しようとするが、年齢的に勃起せずにうまくいかなかった。

支配人 (しはいにん)

川越にあるクラブ「Kronos」で支配人を務める初老の男性。最近クラブ以外に副業としてデリヘルを始めた。自社のデリヘルコンパニオンとして、お金に困っているとこぼしていた一条ゆりかを口説こうとし、「かわいいし、体はエロいし」と褒めてみたものの、あえなく失敗。風俗なんて汚らわしいと逆に切れられてしまう。

友人A (ゆうじんえー)

一条ゆりかの友達の女性。年収300万円の男性と結婚している。子供に恵まれ、現在は主婦として育児に勤(いそ)しんでいる。小ぎれいにしてはいるが、よく見ると手はガサガサで、にじみ出る生活感はぬぐえない。焼き肉の食べ放題店でゆりかと友人Bの二人と食事しながら、ゆりかの恋愛話を聞いていた。結婚するなら年収3000万円以上の男がいいと豪語するゆりかに表面上は賛同するものの、お金はそんなになくても幸せだと感じており、今の生活に大きな不満はない。

友人B (ゆうじんびー)

一条ゆりかの友達の独身女性。年収200万円の彼氏と交際している。ゆりかからは、安いネックレスしか買ってくれないダサい彼氏と見下されている。焼き肉の食べ放題店でゆりかと友人Aの二人と食事しながら、ゆりかの恋愛話を聞いていた。結婚するなら年収3000万円以上の男がいいと豪語するゆりかを否定はしないが、お金よりも優しい男性と結婚したいと考えており、今の彼氏との結婚を匂わせた。交際中の彼氏はもともと童貞で、特にオシャレというわけでもなく、デートはイオンなど総合スーパーに行くだけ。しかし彼への気持ちは強く、大きな不満はない。

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