概要・あらすじ
大学4年の冬、中園麻里の周囲では従妹の妊娠に結婚、矢野美根子の妊娠とおめでたい話題が続いていた。しかし麻里は、卒業論文で忙しい毎日を送る武来杏と、2人の時間をなかなか持つことができず、彼との間に距離を感じるようになる。まるで麻里を突き放すようにも感じられる彼のしぐさや言葉に不安を感じるなか、夏に武来と2人きりで旅行に行ったことが麻里の母親に知られてしまう。
登場人物・キャラクター
中園 麻里 (なかぞの まり)
武来杏の彼女。引っ込み思案で思ったことの半分も口にできないが、本当に伝えたい大切なことは伝える努力ができる芯の強さを持っている。自分に自信が持てずいつも不安な想いを抱えているが、武来を信じる気持ちから、数々のライバルにも引けを取らない武来への想いの強さが感じられるようになった。大学4年になり養護学校の教員を目指して勉強やボランティアに忙しい毎日を送っている。
武来 杏 (ぶらい きょう)
中園麻里の彼氏。ハッキリした性格だが口数は少なく、麻里とは反対に肝心なことを言葉にできないタイプ。言葉足らずのためなかなか伝わっていないが、夏に行った旅行を境に麻里への想いは増すばかり。母親の墓参りに麻里を連れて行ったり、在りし日の母親を語るなど、麻里に対する心の変化が窺える。就職も内定し、現在は卒業を目前に控えて卒業論文制作に忙しい毎日を送っている。
花井 律子 (はない りつこ)
武来杏の実家である「武来酒店」の近所にある肉屋の娘で、武来の幼なじみ。気が強く自信家で、武来のことを一番よく知っているのは自分だと自負している。中園麻里を武来の彼女とは認めず、ライバル意識を燃やしている。麻里と武来が2人だけで旅行に行くことを知って、武来をあきらめきれずに旅行先の2人の部屋に押し掛けるという暴挙に出る。
新堂 香 (しんどう かおり)
武来杏の就職が内定している自動車会社に勤務するキャリアウーマン。武来の義姉の友人で、武来の元彼女。かつて武来の兄に報われぬ想いを寄せていたことがあり、彼の弟で当時高校生だった武来杏と付き合うことでそのやり切れぬ想いのはけ口としていた。その結果、武来に心から惹かれるようになっていったが、彼とは未来を感じられず、短期間で別れたことを麻里に明かす。
ママ
中園麻里の母親。優しいが決して甘いだけではなく、いつでも麻里に寄り添っている。麻里の良き理解者でありたいと思っており、麻里の幸せを一番に願っている。武来杏の存在を知り、母親として複雑な心境を吐露する。
矢野 美根子 (やの みねこ)
中園麻里の高校時代からの親友で、いつも麻里の恋愛相談に乗っている。麻里にとっては何でも話せるかけがえのない人。麻里と武来杏の幸せを誰よりも願っており、いつも麻里の心の後押しをする大切な役割を担っている。会社の先輩と結婚し、吉祥寺の社宅に住んでいるが、夫はドイツに単身赴任中のため一人暮らし。現在妊娠3ヵ月。
川崎 由布子 (かわさき ゆうこ)
中園麻里と同じ大学のボランティアサークル「街に出よう会」の代表を務める女性。中学2年生の頃からボランティアを始めるが、その頃に彼女にとっては後ろ暗い思い出があり、それを払しょくするため意地になってボランティアを続けたという過去がある。現在では何でもできる人として周囲からは一目置かれる存在となっている。
正志 (まさし)
中園麻里がボランティアに通っている病院に入院している少年。母親が仕事で忙しいため、誰も見舞いに来ない日々を寂しく思っている。それでも気丈に振る舞い、大好きなお母さんが病院に来てくれる日を心待ちにしている。
お母さん (おかあさん)
正志の母親。未婚で子供を産み育てているため頼る者もなく、生活費を稼ぐのに精いっぱいで、毎日仕事に追われている。そのためなかなか入院中の正志に会いに行くことができず、子育てに対して自信を失いかけている。
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