多聞くん今どっち!?

推しの意外な本性

大人気アイドルグループ「F/ACE」のセンターで、セクシー&ワイルド担当を務める福原多聞の追っかけを人生の糧とするアイドルオタクの木下うたげは、ハウスキーパーのアルバイトをしながら、推しアイドルである多聞を応援する「推し活」に力を入れている。そんな中、うたげの新たなアルバイト先として決まったのは多聞の自宅で、予想外の事態に困惑する彼女が目にしたのは、アイドルとして活動するオンの姿とは真逆な、根暗でジメジメとしたオフの多聞の姿だった。仕事中は爽やかな笑顔を振りまく多聞はオンとオフの落差が激しく、プライベートでは自虐の激しいネガティブな「陰キャ」そのもので、彼の自宅にも重い空気が漂っていた。そんな多聞の本性を知ってしまったことに戸惑いつつも、アイドルとして完璧な彼を「イケ原さん」、オフモードの根暗な彼を「ジメ原さん」と呼び、どちらの姿も全肯定して推し続けることを誓ったうたげは、多聞のファンをやめることなく推し活もアルバイトも続ける。どんな姿や性格でも多聞のことを受け入れようとするうたげだったが、事あるごとに自虐に走る彼を励ましたり、一ファンでありながら推しアイドルのプライベートに介入することに罪悪感を覚えたりと、混乱や葛藤に苦しむ機会が増えた彼女は気苦労も絶えない。多忙で生活力もない多聞の食事作りや掃除だけでなく、自己肯定感の低い彼を精神的にも支えるうちに、うたげは多聞の本性であるジメ原モードの彼の本音に触れ、プライベートでの仕草や言動にもときめく機会が増えていく。そんな中、CD発売を記念するF/ACEの握手会の日が近づき、以前から楽しみにしていたうたげも運よく当選。当日を楽しみに待つファンの期待をよそに、今まで握手会をはじめとする接触イベントを避け続けていた多聞は、引退してアラスカで暮らしたいと言いながら握手会を拒絶する。多聞はただでさえ苦手とする他人との接触に対する緊張に耐えられずにボロが出て、アイドルとしての自分とは真逆な本性が、ファンに知れ渡る可能性を恐れていたのだ。いつも以上にネガティブ発言を繰り返す多聞を説得するうたげは、彼の今までの発言をすべて綴った写経ノートを提供したうえで、握手会当日に向けたイメージトレーニングに付き合うことになる。

新曲センター争奪戦

一人のファンとして、そしてハウスキーパーとしても福原多聞のサポートを続ける木下うたげは、相変わらずネガティブな多聞の本性に翻弄される日々を送っていた。そしてうたげは、多聞の本性を見る度に彼をあこがれのアイドルではなく、一人の男性として見ることも増えていく。そんな中、アイドルグループ「F/ACE」の新曲は失恋バラードに決まるが、そのセンターは多聞ではなく、新番組内で開催されるメンバー同士の争奪戦を経て、新たに決められることとなる。うたげはセンターポジション再獲得に自信を持てない多聞が、5回の過酷なバトルを乗り越えられるよう、彼のハウスキーパー兼ファンとして全力で応援することになる。しかし、F/ACEの王子様担当である坂口桜利に出会ったことで、状況が一変。アイドルとしては優しく繊細なイメージが強く多聞とも仲睦まじいはずの桜利は、オフの時は暴力的なうえに多聞のことを見下して暴言を吐くような人物だった。そんな桜利の本性に不快感を覚えたうたげは、彼のことを無視して多聞だけの応援を続けるが、1回戦のシチュエーションバトルでは、新曲に合わないパフォーマンスをしてしまった多聞が敗北という、予想外の結果に終わってしまう。ますます多聞が自信をなくす中、桜利に再び遭遇したうたげは、センターが桜利に決まったら自分のハウスキーパーになるよう、勝負を持ちかけてくる。多聞のことを持ち出されて挑発に乗ってしまったうたげは、桜利が争奪戦に勝利してセンターに決まったら多聞のもとを去って桜利のハウスキーパーになるという、厳しい条件の中に立たされながらも、多聞の勝利を信じて争奪戦を友人たちと共に見守る。一方、シチュエーションバトルを通して恋愛や失恋に対する疑問を抱いた多聞は、それらのイメージを見極めるためにもいっしょに夏祭りに行ってほしいと、うたげに頼んでくる。一ファンという立場を超えて推しアイドルとデートをするわけにいかないと、一度は断ろうとするうたげだったが、多聞の熱意を受けた彼女は恋愛探求サポートの名目で、二人きりの夏祭りお忍びデートに出かけることになる。しかし、人混みに耐えられなくなった多聞が帰りたいと言い出したり、彼とのデートに悶えるうたげが混乱してしまったりと、肝心の恋愛探求はなかなかスムーズに進まない。その様子を変装してこっそり見守りながら、二人が付き合っているのかが気になって仕方がない桜利は、うたげが一人になった途端にナンパ男のフリをしながら彼女に声をかける。