王様と少年は秘密を持っている

王様と少年は秘密を持っている

傲慢で横暴な性格が災いし、周囲から敬遠されている若き天才日本画家・幸坂梅壱のもとに、自分の居場所を見いだすことができず、取り巻く世界すべてに怯える一人の男子小学生・白河ひかりが訪れる。そして二人は事故に巻き込まれ、体が入れ替わってしまう。王様気質の日本画家と気弱で優しい小学生という、真逆な二人の姿を描いた切なくて笑えるチェンジコメディ。「Palcy」で2021年7月から配信の作品。

正式名称
王様と少年は秘密を持っている
ふりがな
おうさまとしょうねんはひみつをもっている
作者
ジャンル
職人・芸術家
 
その他ギャグ・コメディ
レーベル
KCデラックス(講談社)
巻数
既刊2巻
関連商品
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あらすじ

若き天才日本画家・幸坂梅壱は、作品の評価が高く才能も認められているものの、傲慢で横暴な性格から、家族親族にも絶縁され、画壇からも疎まれるなど、周囲から敬遠される人物だった。ある日、そんな梅壱の家の庭に、一人の少年・白河ひかりが無断で入り込む。ひかりは庭に咲く花の絵を描きたいがための行動だったが、梅壱に見つかったひかりは、怯えてしまい小さな体を震わせる。梅壱がひかりのスケッチブックを見ると、そこには中途半端に描かれた花の絵があった。そして梅壱は、逃げ出すように帰ろうとするひかりを引き止め、花を見て感動した気持ちはウソだったのかと問いかける。その言葉を聞いたひかりは、花を最後まで描かせてほしいと頼み込む。実はひかりは自分に自信が持てず、家でも学校でも自分の居場所を見いだすことができないでいた。取り巻く世界すべてに怯えるひかりは、絵を描くことが好きだという思いだけでなんとか気持ちを奮い立たせているところがあり、それに気づいた梅壱は、ひかりに自宅を訪れることを許可する。そして、ひかりが梅壱の家から自宅に帰ろうと敷地を出た瞬間、走ってきた車に轢(ひ)かれそうになる。梅壱は瞬間的に身を挺してひかりを守ろうとするが、二人は事故に巻き込まれてしまう。梅壱が次に目を覚ましたのは病院のベッドの上で、名前と年齢を確認されることになるが、彼はそこで違和感を抱く。自分の目の前に知らない女性がヒステリックに声をあげながら、ひかりの母親だとわめきちらしていた。恐る恐る鏡を覗くと、そこに映っていたのはひかりの姿だった。その瞬間、梅壱は自分がひかりになってしまったことに気づくと同時に、ひかりにも起きているであろう事態に思いを巡らせる。そんな中、ひかりの母親・千恵は自分と娘の保身ばかりを訴え、ひかりのことなど微塵も心配する様子がないどころか、当たり散らしていた。あとから駆け付けたひかりの父だけは、ひかりを心配している様子だったが、梅壱は千恵の態度からひかりが居場所を失っている状況にあることを知る。梅壱は、ひかりの様子を見に行くべく、ひかりの父親と二人で梅壱の病室を訪れる。するとそこには、意識なく横たわる梅壱の体があった。自分の体を見て逆上した梅壱の姿をしたひかりは、横たわる梅壱を乱暴に叩きながら、必死に呼びかける。すると目を覚ました梅壱の姿をしたひかりは、目の前に自分とそっくりの男子と父親が立っている姿を目の当たりにして混乱する。そして、鏡を見せられてようやく状況を理解するものの、梅壱とひかりは、まともに話し合う時間もないまま離ればなれとなる。その後、ひかりの体のまま一足早く退院することになった梅壱は、小学生として日常を送らなければならないことに絶望する。だが、梅壱はひかりとして日々を送るうちに、家庭や学校でひかりが抱える問題に直面し、問題の解決に向けて動き出す。

登場人物・キャラクター

幸坂 梅壱 (こうさか うめいち)

日本画壇が期待を寄せる画家の男性。年齢は30歳。高校生の頃から数々の賞を総なめにし、著名な賞を史上最年少で獲得した。その後、20歳で全国を巡回する大規模個展を成功させ、その勢いはとどまるところを知らないが、才能はあるものの性格は欠陥だらけ。王様気質な自信家で横暴なところがあるため、画壇からは疎まれ、親族とも絶縁状態となっている。実家は病院を経営しており、必然的に医者になることを求められて育てられたが、それに反して画家になることを決意。しかし、父親から許しを得ることができずに家を飛び出し、それ以来実家とも連絡を取っていない。仕事でも傍若無人ぶりを発揮し、さまざまな問題を起こしており、納期は守らずに自分が納得した作品しか世に出すつもりもない。一部のアンチ派からはミーハーなファンがちやほやしているだけだと、梅壱自身を酷評する声も少なくない。現在は野々森の依頼で絵を描いているが、3年かけて描いた作品は納得のいくものではなく、野々森と酒井がいる前で破り捨てた。新たに納得のいく作品を描くと約束したものの、野々森が自分の悪口を言っていることを知り、その約束を白紙に戻して野々森画廊に預けている自分の作品もすべて回収すると宣言した。そんな中、許可なく敷地に入り込み、絵を描いていた少年・白河ひかりとかかわりを持つことになる。絵を描くことに真剣なひかりを、語気は強めながらも励まし、帰宅しようと敷地から出たひかりが車に轢かれそうになったところを身を挺して助けることになった。その後、なぜかひかりの体で目覚めることになり、ひかりとして生活を送ることとなる。気弱な性格のひかりとのギャップは激しいものの、事故で障害が残っているということでごまかしている。逆に突然気弱になってしまった梅壱を心配しつつも、ひかりとして生活を始めたことで、家や学校での問題点を体感する。このまま元の自分に戻りたくないと言い始めたひかりを説得し、元に戻りたくなるような環境にするからと約束し、学校での問題を少しずつ解決していく。目下の目標は、ひかりをクラスの王にすること。北大路秋子とは、幸坂梅壱自身が「春の日本画展」で新人賞を受賞した際、選考委員を務めていた関係で知り合う。しかし10年ほど前、秋子の作品を酷評し、大喧嘩となって以来犬猿の仲となっている。

白河 ひかり (しらかわ ひかり)

気弱で内気な性格をしている小学校6年生の男子。年齢は12歳。自分に自信が持てず、家にも学校にも自分の居場所がなく、家庭では義母から虐げられ、学校ではクラスメートの村上からいじめられている。同じクラスの浅野翔太、中村叶空、松野悠誠と共に「どんぞこ4」と呼ばれている。絵を描くことが好きで、勝手に幸坂梅壱の家の敷地に入り込み、花の絵を描いていたことで、梅壱と知り合う。そんな中、帰宅しようと梅壱の敷地から出たところで車に轢(ひ)かれそうになり、梅壱に身を挺して守ってもらう。その後、病院に運ばれたあとに梅壱の体で目覚めることとなった。もともと気弱な性格だったのにもかかわらず、王様気質の梅壱の性格が引き継がれたため、周囲から心配される事態となった。その後、居場所のない白河ひかり自身に戻るよりも、周囲から必要とされる梅壱のままでいたいと思うようになるが、梅壱から他人の人生を生き続けるなんて死んでいるようなもので、ひかり自身が元に戻りたくなるような環境をつくるからと言われ、考えを改めることにした。それ以来、少し前向きに梅壱として過ごすようになるが、野々森の部下・酒井を必要以上に頼るようになる。ひかりの体と入れ替わった梅壱からは、元の梅壱らしく振る舞うために、「ダメだ」「帰ってくれ」「うるさい」の三言だけを言葉にし、対処するように注意を受ける。それがどうしてもできずにいたが、ひかりの優しい性格から、北大路秋子との歴史的和解をはじめ、梅壱の在り方を変えていくことになる。

酒井 (さかい)

野々森の部下の女性。野々森画廊に勤めており、野々森と共に幸坂梅壱のもとを訪れている。腹黒い野々森とは違い、気弱だが優しい性格をしている。家庭の事情で子供の頃から家事ばかりさせられ、つらい日々を送っていた時、梅壱の作品に出合って励まされて救われたことがあり、梅壱の作品に傾倒している。それ以来画廊の仕事を通じて、梅壱に恩返ししたいと考えており、梅壱の作品をたくさんの人に届け、そして梅壱に幸せになってほしいと願っている。梅壱が事故に遭い、以前とまったく人格が変わってしまったことを心配しているが、それもすべて後遺症のせいだろうと考え、梅壱を支える覚悟を決める。人格がまるっきり変わったことをきっかけに、これまで面識もなかった画廊の関係者が梅壱に群がり、全員が都合よく自分たちの仕事につなげようとしていることが見え見えだったため、タイミングを見計らって一掃した。

野々森 (ののもり)

野々森画廊の社長を務める男性。幸坂梅壱の絵を預かる約束をしているが、3年という長い期間を待たされた挙句、やっとできた作品を絵が気に入らないからと目の前で破られてしまう。直後にもっといい絵を描くと約束してもらったものの、完成までに5年かかると言われ、納期を守らずに王様気質で態度が大きい梅壱に対して、心底腹を立てている。そんな経緯から、梅壱が事故に遭って意識不明と聞いた際は、このまま死ねば作品価値が上がるかもしれないと発言し、部下の酒井を逆上させた。梅壱と契約して絵を手に入れるためだけに、表向きは梅壱の理解者のように演じている。

千恵 (ちえ)

白河ひかりの義母。ひかりの父と子連れ同士で再婚したが、夫の連れ子であるひかりの存在を全否定している。ひかりが面倒事ばかり起こし、何を考えているのかわからない不気味さを感じており、再婚したことを後悔している。何かにつけてひかりを目の敵にし、ワザと自分に迷惑をかけようとしているに違いないと、ヒステリックになってひかりに当たっている。家ではひかりが一人で部屋にこもって食事をとるように仕向け、家族と共に過ごさないようにしていた。基本的に千恵自身のことや、自分の娘であるひかりの妹のことしか考えていない。ひかりが事故に遭った際も、ヒステリックにわめき散らすばかりで、自分の保身を最優先して、ひかりを心配する様子はまったく見せなかった。

ひかりの父 (ひかりのちち)

白河ひかりの実父。ひかりのことを大切に思っているが、何かと後妻・千恵の言いなりになりがち。ひかりに対してヒステリックに当たる千恵に困惑しているものの、ひかりを虐げていると疑うこともせず、千恵の言うことを鵜のみにしている。

ひかりの妹 (ひかりのいもうと)

千恵の娘で、白河ひかりの義妹。まだ幼く、いつも千恵のそばにくっついている。事故に遭ったひかりが、それまでのひかりと違うことに気づいており、幸坂梅壱と入れ替わったひかりに対して、誰なのかと詰め寄った。だが、それを逆手に取ったひかりから、自分はひかりと契約した悪魔だとからかわれる、逆に怖がった。

村上 (むらかみ)

白河ひかりのクラスメートの男子。クラスのガキ大将的な存在で、ほかの男子と共にクラスで冴えない男子四人を、「どんぞこ4」と名づけ、理不尽ないじめを繰り返している。特にひかりには執拗な嫌がらせを続けている。実は、高橋美里のことが好きで、村上自身の力を誇示し、美里にアピールしたいという安直な考えで行っている。事故に遭って学校を休んでいたひかりに遭遇した際、幸坂梅壱が入れ替わったひかりであることを知らず、いつもどおり嫌がらせをしようとした。しかし、ひかりからスルーされたうえ、美里の前でズボンのチャックが開いていることを指摘され、冷静にやり返されてしまう。それ以来、学校でもこれまでのように嫌がらせができなくなり、逆に悔しい思いをさせられている。

高橋 美里 (たかはし みさと)

白河ひかりのクラスメートの女子。かわいらしい顔立ちで、穏やかで優しい性格をしている。男子からも女子からも人気のある学年のアイドル的な存在。教室の席はひかりのとなり。クラスメートの村上の行動には不快感を抱いている。また、事故後の幸坂梅壱と入れ替わったひかりに対して、好感を抱いている。

北大路 秋子 (きたおおじ あきこ)

幸坂梅壱が「春の日本画展」で新人賞を受賞した時、選考委員を務めていた画家の女性。梅壱の作品を推したとされている。10年くらい前、北大路秋子自身の個展に姿を現した当時20歳の梅壱から作品を酷評され、大喧嘩になったことがある。それ以来、犬猿の仲として一度も顔を合わせることはなかったが、画業50周年を迎えた記念パーティが開催された際に、再び顔を合わせることとなり、一触即発の状況となる。だが、白河ひかりと入れ替わった梅壱から、作品を褒められ、50年絵を描き続けてきたことへの賛辞をもらう。この言葉に梅壱も成長したのだと素直に解釈し、梅壱に握手を求めたことで歴史的和解と報じられることとなった。

集団・組織

どんぞこ4 (どんぞこよん)

白河ひかり、浅野翔太、中村叶空、松野悠誠の四人組のことで、村上が名づけた。村上が率いる男子グループに目を付けられており、ドッジボールでは集中的に標的にされている。彼らの遊びの餌食にならないように、常日頃から息をひそめるように過ごしている。特にひかりは村上から目をつけられているため、理不尽な扱いを受けることが多い。

書誌情報

王様と少年は秘密を持っている 2巻 講談社〈KCデラックス〉

第1巻

(2022-04-13発行、 978-4065273548)

第2巻

(2023-02-13発行、 978-4065306628)

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