あらすじ
警視総監の息子にして、筋トレが大好きなマッチョ系男子の朝緋智也は、6月某日、16歳の財閥令嬢、月ノ院瑠璃と見合いをすることになった。だが、政略結婚によって12歳も年下の彼女の未来を台無しにするわけにはいかないと、智也は会ったその日に破談を申し入れる。ところが、どういうわけか智也は瑠璃から再びデートのお誘いを受け、日を改めてデートをすることが決まってしまう。デートの当日、智也は改めて瑠璃とは結婚できないと返事をして、瑠璃の年齢にふさわしい相手を探すべきだと諭すが、何を言っても瑠璃の答えは智也の妻になりたいの一点張り。智也は、現役高校生の瑠璃に、万が一にも間違いを起こすことがないよう自分の気を引き締め、彼女を無事に家まで送り届けることを誓う。瑠璃の手作り弁当で昼食を済ませると、二人が暖かい日差しの中でのんびりと過ごしていると、突然智也は瑠璃から抱っこをせがまれる。驚きながらも智也が瑠璃の求めるままに彼女を抱き上げると、瑠璃は智也と初めて会った時のことを語り始める。実は二人は今から10年前、両親に連れられて行ったクリスマス会で顔を合わせていた。そして、当時まだ幼かった瑠璃が、両親とはぐれて一人で泣いていたところを助けてくれたのが、智也だったのだ。小さな瑠璃を肩に抱き上げ、いっしょに両親を探してくれた智也の優しさと大きな体に安心感を抱いた瑠璃が、大きくなったら智也の奥さんにして欲しいと伝えると、智也は快諾して再び会うことを約束してくれたのだ。そんなことはすっかり忘れていた智也だったが、瑠璃の話を聞くうちにすべてを思い出し、瑠璃が10年も一途に自分のことを思っていてくれたこと、そして素敵な女性に成長したことを感慨深く感じるのだった。その後、智也は瑠璃を無事に自宅に送り届ける。それ以来、瑠璃からは連絡がなく、自分のことをあきらめてくれたのだと智也が思い始めた頃、瑠璃は智也の自宅前に再び姿を現す。そして瑠璃は、これまで智也のことだけを思って生きてきたこと、高校を卒業したら結婚させられてしまうことを智也に明かし、自分が高校を卒業するまでのあいだ、交流を続けて欲しいと懇願する。瑠璃は、交流を通じて自分のことを知ってもらったうえで、高校卒業までに智也から妻として考えてもらえなかったら、その時はきっぱりあきらめることを約束する。そこで智也は瑠璃からのお願いを熟考して、三つの条件を付けることを提案。その条件を笑顔で受け入れた瑠璃に、智也はお嬢様は理解できないと眉間にしわを寄せながら、すぐその熱も冷めるだろうと、瑠璃の自分への思いを軽く見てしまう。
登場人物・キャラクター
朝緋 智也 (あさひ ともや)
警視総監の息子で、筋トレが大好きな青年。年齢は28歳で、身長は185センチ。マッチョ体型で体重は90キロ前後。庇護（ひご）欲が強く、何かしてあげたくなるような女性に弱い。そのため頼られると嬉しく感じるが、朝緋智也自身は人を頼ることが苦手で、何でも一人で決めてしまう癖がある。実家は資産家ながら、両親が自由主義だったため、祖父の代から続く会社も継ぐことなく独立している。現在は智也自身で立ち上げた事業が成功し、トレーニングジムオーナーとして、安定した生活を送っている。そんなある日、月ノ院財閥から月ノ院瑠璃との見合い話を持ち掛けられた。その詳細を聞かされることなく智也の母から呼び出され、だまし討ちのような形で見合いという名の政略結婚を進められそうになる。だが、自分の人生を人任せにはしたくないという強い気持ちから、見合い当日に破談を申し入れた。しかし、その後も瑠璃からデートに誘われる中で、彼女に惹（ひ）かれそうになる。一方で智也自身は、自分は瑠璃の相手としてふさわしくなく、12歳も年下の彼女の将来を潰すわけにはいかないと考えている。実は瑠璃とは10年前に一度会っており、まだ幼かった瑠璃が迷子になっていたところを助けたことがあった。当時の瑠璃から将来奥さんにして欲しいと言われて承諾したことや、瑠璃が大きくなったらまた会う約束をしたことは覚えていない。その後、瑠璃から高校を卒業すると同時に結婚させられるという事情を知り、瑠璃と交流を続けることになった。瑠璃のことを知ったうえで、高校卒業までに瑠璃を妻に選ばなければ、その時はあきらめるという提案を条件付きで受け入れる。一つ目の条件は、飾らないふだんの自分で接すること。二つ目は、瑠璃が智也を嫌いになったら伝えること。そして三つ目は、瑠璃を財閥令嬢として特別扱いせず、16歳の女の子として接することとなっている。元彼女である深海みうとは10年交際したものの、別れたり復縁したりを何度となく繰り返し、2年ほど前にプロポーズしたものの、本当はもう好きじゃないと断られた。しかしそれからも、友達として食事の管理をサポートし、体調管理や精神面に不安があるみうとかかわりを持ち続けている。今でも彼女には自分が必要だと考えているが、みうに対する気持ちが恋愛感情なのか、それ以外のものなのかはわからずにいる。
月ノ院 瑠璃 (つきのいん るり)
月ノ院財閥の一人娘の女子高校生。小柄で華奢な体型をしている。年齢は16歳。身長は155センチで、体重は38キロ。金持ち喧嘩（けんか）せずを地で行く極めて穏やかな性格で、いつでも他人を思う優しさを持っている。両親とお付きの運転手の五香が選んでくれた服装を身につけている。6月のある日、朝緋智也と見合いをしたが、見合い当日に智也から破談の申し入れを受けた。智也とは10年前にクリスマス会で出会っており、両親とはぐれて心細い思いをしていた自分を抱き上げ、いっしょに両親を探してくれたことがあった。その際、将来奥さんにして欲しいと申し入れると、智也からは快諾を得て、大きくなったらまた会う約束をした。その時から恋心を抱き続けたため、見合いは智也との念願の再会の場となるはずだった。破談の申し入れを受けるが、その後も智也をデートに誘ってアプローチを続けている。実は高校を卒業と同時に結婚を強いられており、智也に執着するのはそれも一つの要因となっている。これまで、10年前の約束だけを糧に、智也との結婚を夢見て生活を送っていた。考え抜いた末、自分が高校を卒業するまでのあいだは交流を続けて欲しいと頼み、自分のことを知ってもらったうえで、卒業までに自分を妻として選んでもらえなければ、その時はきっぱりあきらめると伝えた。その言葉を受けて智也からは条件付きで了承を得ることとなり、月ノ院瑠璃にとっては楽しい日々が始まることになる。いじめを受けているわけではないものの、家柄が凄（すご）すぎて友達と対等な関係を築くことが困難なため、学校ではほぼ孤立状態にある。そのため、自分と家柄関係なく人として対等であろうとする智也とのかかわりは、瑠璃にとって唯一無二のかけがえのないものとなっている。少々世間知らずところがあるが、時に意外な行動力を発揮することがある。しかし自らの努力が空回りすることが多く、母親からは背伸びをしないようにとアドバイスを受けている。また智也への思いが強すぎて、身辺調査や盗撮に留まらず、収集した各種データをもとに未来をスーパーコンピューターでシミュレーションするなど、ストーカー行為に及んでいた。だが、精神科医からのアドバイスを受けて今はやめている。智也の元彼女である深海みうの存在は認識しており、智也とみうの現在の関係性を気にしているものの、詮索はできずにいる。
朝緋 まどか (あさひ まどか)
朝緋智也の姉。年齢は29歳。黒髪ロングヘアの色気のある美人ながら、どことなく陰気な雰囲気を漂わせている。智也のことが大好きで、智也の部屋のベランダに侵入して手紙を渡そうとしたり、智也が入った居酒屋に偶然を装って現れたりと、何かと粘着質なタイプ。占い師のため、占いで自分の行動を決めようとするところがある。月ノ院瑠璃に対してはおおむね好意的に接している。
二宮 真穂路 (にのみや まほろ)
朝緋智也の高校時代の後輩の男性。年齢は26歳。美術大学を次席で卒業し、現在は壁画アーティストとして活動している。智也とは学生時代から仲がよく、智也の実家にもよく遊びに行っていた。細長い体型で、筋トレにはまったく興味がないため、会うたびに筋肉が増えて体格が大きくなっていく智也の気持ちは理解できないでいる。智也と現役女子高校生の月ノ院瑠璃との交際の噂（うわさ）を聞き、興味を持っている。智也の元彼女である深海みうのことも知っているため、今後の動向について面白がりながらも温かく見守っている。好きなものはパン。
深海 みう (しんかい みう)
朝緋智也の元彼女。現在は離職中で、年齢は26歳。智也とは交際10年の間柄で、別れたり復縁したりを繰り返しており、2年ほど前に智也からプロポーズされたものの断り、二人の関係は終えた。智也とは、恋人というよりも友達でいることを望んでいる。精神的に不安定なところがあり、さらに貧血で体も弱く、非常に痩せ細っている。健康的な体重の増加を目的として、智也には日々食事や運動に関するアドバイスやサポートを受けており、今でもかかわりを持ち続けている。しかし、体重を増やすことにはどうしても抵抗があり、もっと体重を増やさなければいけないとわかっていながらも、なかなかうまくいかずにいる。智也が月ノ院瑠璃と見合いをしたことは知っており、偶然にも瑠璃と顔を合わせたことがきっかけで、瑠璃から喫茶店に誘われることになった。喫茶店ではいっしょにパフェを食べ、二人だけの時間を過ごしたが、若々しくて健康的な瑠璃の姿に嫉妬に近い感情を抱く。パフェを食べることに抵抗を感じ、食べきれないことを覚悟したが、結局すべて食べきった。
智也の父 (ともやのちち)
朝緋智也の父親。現役の警視総監として忙しい日々を送っている。一見すると頑固に見えるが、意外にフランクな性格で、何かと知りたがりでおしゃべりが大好き。久しぶりに自宅に戻り、家族と再会した際には、智也や月ノ院瑠璃のことを知りたがり、瑠璃や同席した二宮真穂路を質問攻めにした。
智也の母 (ともやのはは)
朝緋智也の母親。いい肉があるから食べに来いという適当な理由をつけて智也を呼び出し、月ノ院瑠璃との見合い話を勧めようとした。以前から、何も相談せずに勝手に一人で決めてしまう智也を心配しているが、智也の母自身も自由奔放なところがあるため、あまり介入はせずに温かく見守っている。智也のことが大好きで、何かと知りたがりのおしゃべり好き。智也の父同様に智也の日頃の様子が知りたくて、遊びにやって来た二宮真穂路や瑠璃を質問攻めにした。
瑠璃の母 (るりのはは)
月ノ院瑠璃の母親。瑠璃が朝緋智也に好意を持っていることを知っている。もともと頑張り屋でまじめな性格の瑠璃が、何かと空回りしがちなことを心配しているが、そのままの自分でいるようにとアドバイスを送っている。智也との見合いをきっかけに交流を続けることになった瑠璃を見守っているが、智也への思いが強すぎて、智也の身辺調査や盗撮に留まらず、ストーカー行為を続けている瑠璃を心配している。
書誌情報
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