笠寺 千秋

猫千谷高校1年3組に在籍する男子。芹沢天の友人で「星野下宿所」の一員でもある。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした、赤毛のストレートショートカットヘアにしている。入学式の日から注目されるほどの美形だが、無類の本好きで、つねに本を携帯して読んでいる。そのため自分が女性から人気があるという自覚がなく、日々マイペースに暮らしている。

性格は穏やかで心優しく、名作の一文や、作家の名言をよく引用しながら話す。一方で、純粋さゆえの天然気味な発言が多く、周囲を困惑させる事もある。芹沢天とは、高校入学から約1か月後、こっそり「星野下宿所」に遊びに来た天が、管理人の星野蘭に見つかりそうになっていたところを助けたのがきっかけで知り合った。そこで下宿生活に関心を持っている天に、ツルゲーネフの「乗りかけた船にはためらわず乗ってしまえ」という言葉を引用して背中を押し、それが天の入居の決め手になった。

その後は天と友人として親しくなり、水原理久が天に思いを寄せているのもあり、天とは適度な距離で接そうと考えていた。しかし高校1年生の初夏に、水原鈴が理久に嫌がらせをするために天を利用しようとしているのに気づく。

そこで、天は自分と交際しているので近づかないでほしいと噓をつき、当面のあいだ、天と交際しているふりをする事になってしまう。しかし、実際はその時点で天に惹かれ始めていたため、理久とは天を取り合う関係になってしまい、高校1年生の夏、理久にライバル宣言をする。その後は自分の思いを隠しながら天と接しており、天に対して恋愛相談をするなど、ほかに好きな女性がいるかのように振る舞っていた。

しかし高校1年生の秋、理久と大野葵が通う猫千谷商業高校の体育祭へ天と遊びに行った際、天への思いを止める事ができず、天にキスをして告白した。しかし即座にふられてしまい、それ以降は天への思いを無理に断ち切る事はしないが、天と理久の関係は応援するという、独自のスタンスを取る事になる。

理久の事は唯一の友人として大切に思っているが、理久にはそっけない態度を取られる事が多く、淋しく思っていた。だが高校1年生の冬、白岡信玄から、少しそっけなく意地悪なくらいが理久の素の姿であると教えられ、友人として少し自信を持つようになる。

天同様、理久と鈴の複雑な関係を案じており、どうにかして理久の力になりたいと思っている。「星野下宿所」に来るまでは友人らしい友人はおらず、本だけが友人のような暮らしをしていた。しかし、天達となかよくなった後も読書好きは相変わらずで、車に乗っている時も本を読んでいる。だが非常に車に酔いやすく、毎回車酔いしては、移動中くらいは読書をやめろと周囲からたしなめられている。

地元は美々瀬町(みみせちょう)にあり、3歳年上の過干渉気味な兄がいる。兄の事は煙たがっているが、兄なりに笠寺千秋を思って行動しているらしい事は理解しているため、拒絶しきれずにいる。実はヘアカットが得意で、ある日から美容院代を節約するために自分で自分の髪を切り始めたところ、密かな特技になった。