蒼穹のファフナー

蒼穹のファフナー

TVアニメ『蒼穹のファフナー』のコミカライズ作品。TVアニメ放送から10年経ってからのコミカライズという事もあり、小説版の内容なども織り込まれ、原作のTVアニメ版とは大きく内容が異なる。男子中学生の真壁一騎は、巨大ロボットのファフナーに乗って、突如襲来した謎の金属生命体、フェストゥムと戦う事になる。激しい戦いの中、一騎をはじめとする多くの人々の交差する思いを描く群像劇。「月刊少年シリウス」2014年11月号から2018年4月号にかけて掲載された。

正式名称
蒼穹のファフナー
ふりがな
そうきゅうのふぁふなー
原作者
XEBEC
漫画
ジャンル
その他SF・ファンタジー
レーベル
シリウスKC(講談社)
巻数
既刊9巻
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

日本の片隅にある離島、竜宮島で平和に暮らしていた真壁一騎は中学3年生になり、将来は島を出る事になるだろうと漠然と考えながらも、同級生達と穏やかな日々を過ごしていた。そんなある日、島に警報が鳴り響く。なにが起きているのかわからず一騎達は困惑するが、島の大人達は手際よく一騎達を避難させ、突如現れた異形の怪物であるフェストゥムと戦い始める。フェストゥムに島が破壊される中、一騎は親友の皆城総士に、ファフナーのうちの一機「マークエルフ」に搭乗するように告げられる。クラスメイトの蔵前果林が目の前で犠牲になるという惨事に遭いながらも、辛うじて機体にたどり着いた一騎はマークエルフに搭乗し、フェストゥムと対峙する。心を蝕むフェストゥムの異質な能力に翻弄される一騎だったが、過去の傷に向き合った一騎は辛うじて正気を取り戻し、フェストゥムに一撃を与えるのだった。

第2巻

フェストゥムに一撃を加えたものの、マークエルフの武装は壊れ、真壁一騎は危機に陥ってしまう。圧倒的な窮地の中、皆城総士の父親、皆城公蔵が命を賭して武器を届けた事でフェストゥムは倒され、一騎は辛くも勝利を手にする。戦いが終わったあと、一騎が総士から聞かされたのは、フェストゥムとの戦いで日本列島は消滅し、世界もすでに滅び去っている事実だった。今は辛うじて生き残った者達がフェストゥムと戦うための力を蓄えている状態だが、敵に発見された事でこれから深刻な戦いが始まると総士は話す。事情を聞かされた一騎は、仲間を守る事を決意し、総士と共に戦う事を誓う。こうして竜宮島の平和な日常は終わり、急速に変わる事を余儀なくされる。一騎のクラスメイト達もファフナーのパイロットとして選抜され、環境の変化に戸惑いつつも、一騎はクラスメイト達と共にフェストゥムと戦うための訓練を行うのだった。

第3巻

フェストゥムと戦う訓練を行う真壁一騎達だったが、急な環境の変化で戸惑う仲間達は足並みが揃わず、それぞれ衝突してしまう。一騎も小楯衛を心配して、つい近藤剣司に辛く当たってしまうが、怖いながらも仲間達と共に戦おうという衛の勇気を知った事で己の非を認め、改めて仲間達と共に戦う決心を固めるのだった。そして一騎は、ファフナーとして戦うパートナーとして選ばれた羽佐間翔子と訓練を重ねていく。訓練で驚異的な成績をたたき出していく翔子に驚く一騎だったが、翔子と交流していく内に病弱な彼女の生い立ちを知る。そして同時に自分の存在が彼女の支えになっている事に気づいた一騎は、一人で戦おうとしていた自分の意志を改め、翔子を守り、仲間達と共に戦い抜く覚悟を固める。少しずつ仲間同士で結束を強めていくファフナーパイロット達だったが、そんな彼等のもとに、島の大人達が竜宮島を動かすという決定を下したという知らせが届くのだった。

第4巻

竜宮島の敵はフェストゥムだけではなかった。同じ人類勢力である新国連も竜宮島の力を欲し、それを狙っていたのだった。戦いに勝つためならば手段を選ばない新国連から逃れるべく、竜宮島は秘密裏にその位置を変えようと動き始める。しかし、そのタイミングでフェストゥムが襲来。目の前で新国連の探索機がフェストゥムに襲われるのを見捨てられない真壁一騎は、命令に背いてフェストゥムと戦闘してしまい、島の位置が新国連にバレてしまう。危惧した通り、新国連は竜宮島に居丈高に振る舞い、彼等の建造したファフナーを要求する。人類と戦う訳にはいかない竜宮島は、この要求を苦渋の判断で受け入れ、彼等にファフナーを渡す決断をするのだった。一方その頃、羽佐間翔子は体調不良から倒れるが、遠見真矢春日井甲洋、一騎達との交流によって絆を深め、楽しい時間を過ごす。和気藹々とした空気の中、翔子は未来への希望と島を守る決意を抱き、真矢にその思いを伝える。

第5巻

新国連ファフナーを受け渡す当日が来たが、その時、フェストゥムの襲撃を受けてしまう。真壁一騎は新国連の艦を助けるべく出撃するが、その直後、竜宮島もフェストゥムの奇襲を受けてしまうのだった。一騎が竜宮島から離れて防衛力が低下しているのもあり、竜宮島はなす術もなく破壊されていく。破壊される島を見ながら羽佐間翔子は人知れず、島を守る決意を固める。新種のフェストゥム相手に、翔子は満足に武器も使えないファフナーに乗って戦う。圧倒的に不利な状況で危機に陥る翔子だったが、一騎の帰る場所を守るため、己のすべてを懸けて立ち向かう。傷つきながらもフェストゥムの行動を封じた翔子は、己ごとフェストゥムを島から引き離し、自爆装置「フェンリル」によってその命を散らしてしまう。そして目の前で翔子が散った事で心に大きな傷を負う一騎、翔子の死に涙する遠見真矢、翔子を守れなかった一騎に怒りを向ける春日井甲洋と、ファフナーパイロット達のあいだに不協和音が生まれ始める。

第6巻

竜宮島の大人達は竜宮島と同じく「アーカディアン・プロジェクト」で建造された島を新たに発見した。人が死に絶え、廃墟となった島を調査するため、真壁一騎春日井甲洋はタッグを組み、調査隊の護衛として同行した。パートナーとして任務に臨む一騎と甲洋だったが、羽佐間翔子の死を原因として仲違いをしており、任務中も二人の仲は険悪なままだった。しかし、そこに突如として現れるフェストゥムを前に、二人は否応なく応戦する。島はすでにフェストゥムに乗っ取られており、調査隊を守るため先行した甲洋を守るため、一騎はたった一人で多数の敵と戦うのを余儀なくされる。圧倒的な窮地の中、指揮官である狩谷由紀恵は島の自爆装置「フェンリル」を時限起動する指示を出す。制限時間が迫る中、間一髪、甲洋は調査隊の入ったカプセルを一騎に託す事に成功するが、甲洋はフェストゥムに同化されてしまう。助け出された甲洋を見舞いに行った一騎達は、同化された者の末路を知り、フェストゥムとの戦いの厳しさを改めて実感するのだった。そして一騎と皆城総士の思いは大きくすれ違っていく。

第7巻

羽佐間翔子の死、春日井甲洋の意識喪失によって心が揺れる真壁一騎は、皆城総士にその真意を問いただすが、その答えは「パイロットよりもファフナーが大事」というものだった。総士の思いが理解できない一騎は、総士が変わったのは「島の外」でなにかを見たのだと狩谷由紀恵に諭され、彼女に誘われるままファフナーで竜宮島を抜け出してしまう。そして島の外で一騎が目にしたのは人が存在せず、廃墟と化した町並みだった。自分の中の常識とあまりに違う光景に、心が整理できない一騎だったが、そこに突如としてフェストゥムが襲来、戦闘に突入してしまう。一騎は総士がおらずいつもと勝手の違う戦闘に手こずるものの、未知のファフナーが2機現れ、フェストゥムをあっさり倒すのだった。しかしフェストゥムが倒れた次の瞬間、2機のファフナーは一騎に襲い掛かる。訳もわからない状況に戸惑う一騎はそのまま2機のファフナーに敗れ去り、新国連の兵士達によって囚われの身になってしまうのだった。

登場人物・キャラクター

真壁 一騎 (まかべ かずき)

竜宮島中学校3年生の男子。黒髪の少年で、実家は「真壁食器店」という陶芸の食器専門店を営んでいる。母親とは死別しており、父親の真壁史彦と二人暮らし。父親が不器用なため、家事はほとんど一人で行っている。皆城総士とは幼い頃は親友同士という間柄だったが、幼い頃、小枝で誤って総士の左目を傷つけて以降、彼に対して強い罪悪感を抱いている。 フェストゥムの襲来によって、世界の真実、島の大人達の正体を知り、否応なく戦いに巻き込まれていく。自覚していないが、天才症候群から来る優れた運動神経を持ち、その身体能力はオリンピックで全種目金メダルが取れるといわれるほど。またファフナーへの高い適応力を持つため、即戦力として「マークエルフ」に搭乗し、フェストゥムとの戦闘に投入された。 総士との一件から強い自己否定の感情を持ち、その意識は戦闘中、自分だけ戦えばいいという自己犠牲の行動につながっている。この部分は、必要があれば躊躇(ためら)いなく、自身の命すら犠牲にするとして総士から危うく見られている。

皆城 総士 (みなしろ そうし)

竜宮島中学校3年生の男子。色の薄い髪を長く伸ばした少年で、島の有力者である皆城公蔵の息子。左目の部分には幼い頃に事故で負った傷が存在し、左目の視力はほとんどない。大人びた性格で、大人達にもその能力を認められ、中学校の同年代の中で唯一、島の外にも出ている。フェストゥムに竜宮島が襲われた際にも、その脅威の事を予め知らされており、真壁一騎をファフナーに乗せる指示を下した。 戦闘ではジークフリート・システムに搭乗し、パイロット達の指示、サポートを主に行う。パイロット達には非情な判断や危険な戦闘を強い、羽佐間翔子の死や春日井甲洋がフェストゥムに同化された際も冷たい言葉を投げかけており、一騎達とは徐々に意識の違いが浮き彫りになっている。 実は翔子が死んだ際に、彼女についての心無い噂を流した張本人。本心では翔子の健闘を評価しているが、彼女の戦いを認めたが最後、犠牲を強いる戦いを仲間達に指示しなければいけなくなるという、指揮官ならではの憂慮を抱いている。そのため一騎達には本心を見せず、非情な指揮官として接している。

羽佐間 翔子 (はざま しょうこ)

竜宮島中学校3年生の女子。長い黒髪の少女で、生まれつき肝臓に障害を抱えているため病弱な体質をしている。しかし体育以外の全科目でトップを取る、優秀な頭脳を持つ才媛でもある。遠見真矢とは本音を語り合える親友同士。ファフナーの適正が真壁一騎に次いで高いため、フェストゥムの襲撃以降、ファフナーのパイロットとして訓練を積んでいく。 ファフナーの適正に肉体の虚弱さは関係なく、また病気の経験から死の間際の痛みにすら耐えられるため、訓練でも一騎が驚愕するほどの成績を叩き出した。一方で入学式の時に助けてもらって以降、あこがれていた一騎とパートナーになれた事を恥ずかしがりながらも喜んだり、いっしょに帰るのに一騎を誘ったり、年頃の少女のような面を見せている。 一騎のいない状況でフェストゥムに竜宮島が襲われた際には、母親の制止を振り切ってファフナー「マークゼクス」に搭乗。満足に武器も搭載していないマークゼクスで、新種のフェストゥムと互角以上の戦いを繰り広げ、最期は一騎の帰る島を守るためフェストゥムもろとも自爆した。彼女の早過ぎる死は仲間達に多くの影響をもたらしている。

遠見 真矢 (とおみ まや)

竜宮島中学校3年生の女子。栗色の髪をしたおかっぱ頭の少女で、穏やかでやさしい性格をしている。遠見千鶴は母親、遠見弓子は姉で、島で唯一の診療所である「遠見医院」の次女。実家が診療所という事で、患者である羽佐間翔子とも仲がいい。同年代の中でもファフナーの適正は低いため、フェストゥムの襲撃以降はオペレーターとして訓練を積んでいる。 自覚はないが、天才症候群から来る優れた観察眼、洞察能力を持ち、物事の本質を「何となく」察してしまう。このため翔子の死以降、心無い噂を流したのが皆城総士であるという、彼の真意に最も近づいた。翔子に対して遠慮していたが、一騎には特別な感情を抱いており、なにかと気に掛けている。 趣味はロッククライミングで、優れた観察力を活用する事で、登山装備もなしに岩山をあっさり登頂するほどの腕前を持つ。

春日井 甲洋 (かすがい こうよう)

竜宮島中学校3年生の男子。少しウェーブのかかった髪形をしている少年で、気さくな性格と優しげな甘い風貌から女子人気が高い。成績も優秀で、学年トップの羽佐間翔子に次ぐ優秀な頭脳を持つ。実家は島唯一の洋食喫茶「楽園」で、母親と死別した真壁父子は店の常連客であった。そのため、真壁一騎とは幼い頃から交流があり、現在は親友同士となっている。 また翔子に思いを寄せているが、翔子本人が一騎に思いを寄せているのを知っているため身を引いている。翔子が拾ったが、家庭の事情で飼えなかった「ショコラ」という犬を引き取って実家で飼っている。フェストゥムの襲来によってファフナーパイロット候補として集められるが、適正は実戦基準に満たなかったため投入は見送られた。 実戦を見て恐怖を感じるなど、パイロットの中でも人一倍戦いの恐ろしさを実感していたが、翔子の死以降、翔子を守れなかった一騎への憎悪と対抗心から、積極的に「マークフィアー」に搭乗して戦いに参加するようになる。滅びた島の戦いで仲間の救出作戦を遂行したものの、海中に潜んでいたフェストゥムの同化によって自我を消滅させられてしまった。

要 咲良 (かなめ さくら)

竜宮島中学校3年生の女子。黒髪をショートカットにした少女で、実家は道場を営んでいる事から勝気で活発な性格をしている。近藤剣司、小楯衛からは「姉御」として慕われており、三人でいっしょに行動する事が多い。父親を敬愛しているが、フェストゥムの襲来で死別。その後は本来の勝気な性格もあって、フェストゥムへの復讐に燃え、非情に刺々(とげとげ)しい性格になっている。 ファフナーのパイロット候補に選抜されたが、適正値の低さから実戦は見送られている。ファフナーの訓練では3番機である「マークドライ」に搭乗。搭乗中は「ファフナーになる」事による変性意識の関係で、さらに苛烈な性格になる。戦えない事へのもどかしさに不満を抱いており、指揮官である皆城総士にも反抗的。 しかし、春日井甲洋が同化によって意識が消滅したのを目の当たりにした際には、自分がもっと早く助けていればと後悔するなど、根は仲間思いのやさしい性格をしている。

近藤 剣司 (こんどう けんじ)

竜宮島中学校3年生の男子。短髪の少年で、お調子者な性格をしている。皆城総士や春日井甲洋など、同年代に優秀で有名な人物が多くいるため、その陰に隠れがちだが、実は竜宮中学校の生徒会長を務めている。しかしいつものお調子者な言動から、周囲からは生徒会長である事を知られておらず、また後輩からもまったく尊敬されていない。 小楯衛と仲がよく、要咲良を慕っているため、三人いっしょに行動する事が多い。フェストゥムの襲撃以降はファフナーのパイロット候補に選抜されたが、適正値の低さから実戦は見送られている。ファフナーの訓練では8番機である「マークアハト」に搭乗。「ファフナーになる」事による変性意識の関係で、搭乗中は極度に臆病な性格になる。

小楯 衛 (こだて まもる)

竜宮島中学校3年生の男子。丸刈り頭の少年で、おとなしくやさしい性格をしている。近藤剣司と仲がよく、要咲良を慕っているため、三人いっしょに行動する事が多い。フェストゥムの襲撃以降はファフナーのパイロット候補に選抜されたが、適正値の低さから実戦は見送られている。気の弱い性格ながら友達思いで、戦いは怖いものだと知りつつも、仲間だけに危険な思いをさせる訳にはいかないと、自らも戦う意志を見せている。 その姿勢は秘かに真壁一騎にも大きな影響を与えている。ファフナーの訓練では5番機である「マークフュンフ」に搭乗する。「機動侍ゴウバイン」という漫画の大ファンで、戦闘では勇気を奮い立たせるべく、ゴウバインのヘルメットをかぶって戦う。 その際には「ファフナーになる」事による変性意識の影響で「機動侍ゴウバイン」の熱血主人公になりきって戦うため、二重人格ともいえるレベルで性格に変化が起きる。

真壁 史彦 (まかべ ふみひこ)

「真壁食器店」の店主を務める中年男性。真壁一騎の父親。妻である真壁紅音とは死別しており、男手一つで一騎を育てた。陶芸家で、店の売り物の食器類はすべて彼が作っているが、不器用で形が歪んだものばかりになっている。家事も不得意であるため、食事はほとんど一騎が作ったものか、外食で済ませている。実はAlvisの一員で、司令官である皆城公蔵の補佐を務めている。 フェストゥムの襲撃で公蔵が亡くなったため、それ以降は繰り上がる形で司令に就任した。島の中では穏健派の立ち位置で、フェストゥムの殲滅よりも子供達の身の安全や島の安全を優先し、人類勢力ともなるべく戦いたくないと考えている。そのため、時に非情な決断をする事もあるが、表に出さないだけで、内心では葛藤や罪悪感を抱えている。

皆城 公蔵 (みなしろ こうぞう)

竜宮島の名士で、皆城総士の父親。眼鏡をかけて髭を生やした中年の男性。ふだんは竜宮島の大人達のまとめ役や、竜宮島中学校の校長を務めている。実はAlvisの司令で、島の意思決定に重要な役割を持つ存在。フェストゥムが襲撃した際には竜宮島の大人達を指揮し、フェストゥムを迎撃。さらに真壁一騎をファフナーに乗せる決断を下した。 島の未来を守るためなら我が身を犠牲にするのを厭わない人物で、フェストゥムとの戦いでは敵に狙われる危険が高いのを承知で、ファフナーに武器を届けるが、フェストゥムに気づかれ、攻撃されて死亡した。皆城公蔵が死亡したあと、司令の後任には彼の補佐を務めていた真壁史彦が就任する事となった。狩谷由紀恵とは愛人関係を築いているが、彼女が自分を利用するために取り入っている事に気づいており、新国連の目的がはっきりするまで泳がせておくつもりだった。

溝口 恭介 (みぞぐち きょうすけ)

Alvisの一員である中年の男性。髪を角刈りに整え、たくましい筋肉を誇り、マイペースで不まじめな言動が目立つ。しかし、その正体はAlvis司令の真壁史彦の懐刀の特殊工作員。竜宮島内部に紛れ込んだ不穏分子や新国連のスパイの調査を秘かに行っており、狩谷由紀恵もマークしていた。汚れ仕事を主に担っているが、司令ゆえに個人的な意志を表に出す事ができない史彦の真意を汲み、子供達の安全を第一に考えて行動している。 「蓬莱島」での狩谷一派の行動をマークしながら、遠見真矢と行動を共にした。

蔵前 果林 (くらまえ かりん)

竜宮島中学校3年生の女子。髪をセミロングに伸ばした少女で、真壁一騎達の同級生で、皆城公蔵の養子。皆城総士と同じく、早いうちから島の真実やフェストゥムの事を知らされており、Alvisでファフナーのテストパイロットとしてさまざまな訓練や実験を行っていた。ファフナーに乗るために必須な「シナジェティック・コード」の形成値は高くはないが、平均的で「物差し」として最適だったため、ファフナーのテストパイロットに抜擢された。 使命感が強く、フェストゥムの襲撃の際には真っ先に出撃しようとしたが、形成値が最も高い一騎が選ばれたため出撃が許可されなかった。その事に反発していたが、一騎との話し合いで自分の存在を認められて安堵した。 その後、フェストゥムの攻撃から一騎をかばって死亡する。

遠見 千鶴 (とおみ ちづる)

竜宮島唯一の診療所である「遠見医院」の院長を務める女性。遠見真矢、遠見弓子の母親ながら非常に若々しい姿をしている。Alvisでは子供達の出生に深くかかわるアルベリヒド機関研究の主任で、パイロット達の体調管理を担当している。フェストゥムに対抗するためとはいえ、子供達に多大な負担を課す現状に強い罪悪感を感じている。

遠見 弓子 (とおみ ゆみこ)

竜宮島中学校の養護教諭を務める女性。長い黒髪をポニーテールにしている。島唯一の診療所である「遠見医院」の長女。遠見千鶴の娘で、遠見真矢の姉にあたり、狩谷由紀恵とは同級生。子供の頃はアイドルになる事を夢見ており、実は東京にあこがれていた。Alvisではオペレーターを担当し、真矢の教育を行っている。

狩谷 由紀恵 (かりや ゆきえ)

竜宮島中学校の女性教師。遠見弓子とは同級生で、妖艶な雰囲気を漂わせている。Alvisではパイロット達の上官を務め、彼等に厳しく接する。実は新国連に秘かにつながっており、情報を流したり、潜ませた手勢と共に独自の行動をしたりと暗躍を続けている。皆城公蔵に対しても隠れて肉体関係を持ち、取り入っていた。 一方で真壁史彦や溝口恭介からはその行動を怪しまれ、秘かにマークされていた。狩谷由紀恵自身の目的が周囲にバレつつあるのには気づいており、「蓬莱島」での戦い以降、皆城総士と仲違いした真壁一騎に目をつけ、彼を諭してファフナーと共に島外へと逃走する。もともとはファフナーパイロット候補だった事もあり、「リンドヴルム」の操縦もできる。

集団・組織

Alvis (あるゔぃす)

フェストゥムとの戦いで国を消された日本人の生き残った人達が作った組織。人類の肉体や文化を保存する事を目的とし、そのための手段としてフェストゥムへの対抗手段を研究する計画「アーカディアン・プロジェクト」の遂行を主目的としている。日本壊滅は同じ人類である新国連もかかわっているため、人類勢力の中からも孤立し、独自の行動を取っている。 日本壊滅後、辛うじて国土が残った北海道に日本人の生き残りが集まり、「竜宮島」「蓬莱島(ほうらいじま)」「海神島(わだつみじま)」の3隻のファフナー運用巨大潜水要塞艦を建造。生き残った者達はそれぞれの島に乗り、行動している。島同士での連絡手段は持たされていないため、お互いが現状どこで、なにをしているのか知る手段はない。 竜宮島、Alvisの司令は皆城公蔵が務めていたが、フェストゥムの襲撃で公蔵が死亡したあとは真壁史彦が司令に就任した。

新国連 (しんこくれん)

フェストゥムに対抗するための人類組織。しかしその実態は、人類を守るためなら手段を選ばない強硬派で、必要であれば同じ人類に対しても核攻撃をするなど非情な組織となっている。日本に対しても核攻撃を行い、その国土の大部分を消失させた過去を持つ。また現事務総長のヘスター・ギャロップは、生き残りである竜宮島の存在を血眼になって探しており、彼らの持つ力を取り込もうと考えている。 その強硬な姿勢を危険視してAlvisは新国連から距離は取っているものの、彼等の戦いが人類を守る役割を果たしているのも確かなため、表立って敵対はしない方針を掲げている。

場所

竜宮島 (たつみやじま)

日本を離れたところに存在する小島。最も大きな本島と「向島」「紅蓮島」「慶樹島」をはじめとするいくつかの小島で構成されており、2000人ほどの人々が暮らしている。本土から離れているため新聞は4日遅れ、雑誌は2週間遅れで届くとされている。平和な離れ小島とされていたが、フェストゥムの襲来に伴い、本来の役割を発揮する。 その正体は「Alvis」の活動拠点にして、同組織が「アーカディアン・プロジェクト」で建造したファフナー運用巨大潜水要塞艦である。その規模は非常に巨大で、竜宮島は、居住区として艦の上部に作った人工島となっている。艦には強力な重力層のバリアである「磁冠(ヴェル)・シールド」、偽りの景色を映し出す「擬装鏡面」が搭載されており、島の守りは非常に堅牢。 ただし「磁冠・シールド」と「擬装鏡面」は、エネルギー消費の関係から併用は不可となっている。また島の地下にある艦の内部には、海底のレアメタルを採掘する施設や、ファフナーの開発および整備、フェストゥムに対抗するための研究設備など非常に多岐にわたる設備が存在している。現在は消息不明になっているが、「蓬莱島(ほうらいじま)」「海神島(わだつみじま)」という同型艦が2隻存在する。

その他キーワード

ジークフリート・システム (じーくふりーとしすてむ)

ファフナーを指揮、管理するための全統括システム。電波を傍受し、人間の思考を読む能力を持つフェストゥムに対抗するため、ジークフリート・システム搭乗者とファフナーパイロットの脳神経を直接接続(クロッシング)し、遠隔・無線で意志疎通や感覚の共有を行う事ができる。ファフナーの搭載した装備やシステムへの介入も可能で、システムを介する事で指揮官としてパイロットのフォローを行える。 ただし脳を直接接続するという関係上、システム搭乗者は複数の人間の心象風景を統合したり、戦闘では痛みや感情を共有したりなど多大な負担が伴う。フェストゥムとの戦いでは皆城総士が指揮官としてジークフリート・システムに搭乗し、真壁一騎達、ファフナーパイロットに指示を下している。 また竜宮島のファフナー「ノートゥング・モデル」は、ジークフリート・システムを使う事を前提で開発されているため、搭載している通信設備は有線のもののみとなっている。

ファフナー

対フェストゥム用に開発された人型有人兵器。盛り込まれた技術やコンセプトによって幾つか種類が存在し、Alvisで製造されたものは「アーカディアン・プロジェクト」に則って製造された「ノートゥング・モデル」と呼ばれるもので、数は少ないものの非常に高性能な機体となっている。特筆すべき点は、「ノートゥング・モデル」への搭乗は厳密には「ファフナーに乗る」ではなく「ファフナーになる」というもので、自分と別の存在へと変化する事でフェストゥムの読心能力への対抗力、およびファフナーとの一体化による高度な操作能力を獲得している。 一方で、それを行うには「シナジェティック・コード」と呼ばれるコードの形成値が高い事が必須条件となっている。また「ファフナーになる」という過程で「変性意識」と呼ばれる現象がパイロットに起きるため、一部のパイロットはこの変性意識によってファフナー搭乗中は性格が豹変する。 敵に通信を傍受されるのを避けるため、僚機への通信は「ジークフリード・システム」を介して行う事を想定されており、通信設備は有線のものしか積んでいない。

マークエルフ

Alvisが「アーカディアン・プロジェクト」で建造した「ノートゥング・モデル」のうちの1機。型番は11番目の機体を表す「Mk.ⅩⅠ」で、濃紺色の機体となっている。パワータイプの汎用格闘機だが、搭乗者の真壁一騎の優れた運動神経もあって、その動きはパワフルでありながら機敏。また支援航空機の「リンドヴルム」と背中部分で連結する事ができ、限定的に空中戦も可能となっている。 ただし単独で飛行可能な空戦型の「マークゼクス」に比べて、空中戦での自由度は低い。一騎が狩谷由紀恵に諭されて竜宮島を出た際に、共に島外に持ち出された。その後、一騎が新国連に囚われた際に、いっしょに回収された。

天才症候群()

ファフナーのパイロット候補生に見られる症候群。特殊な因子を要因として発症し、発症した者は平均を遥かに超えた天才性を発揮する。竜宮島の子供達は、発症した能力に合わせて「催眠学習(メモリージング)」を施されており、無意識のうちに最適な学習法を行って自らの才能を伸ばしている。これらが合わさった結果、真壁一騎の運動神経はオリンピックの全種目で金メダルを取るほどの実力があるとされている。 また一騎以外にも遠見真矢の観察眼など、島の子供達はなにかしら抜きん出た才能を発揮している。

フェストゥム

肉体がシリコンで形成された謎の生命体。種類によって形状は違うが、基本は金色の結晶体が人型を象ったかのような美しい姿をしている。周囲の者を同化、もしくは破壊する存在で、人類はフェストゥムとの戦いを長年続けている。肉体を変化させて格闘戦を行ったり、「ワームスフィア」と呼ばれる、空間を破壊する黒い球体を発生させて周囲を破壊する。 美しい声で「あなたはそこにいますか?」と質問して来るが、これは質問に答えた相手を同化侵食するための手段で、意思疎通は基本的に不可能。肉体をいくら攻撃しても再生してしまうため、倒すためには「結晶核」と呼ばれるものを破壊する事が必要となっている。種類は質問をして来る「質問(スフィンクス)型」、獣のような姿をした「怪物(グレンデル)型」、怪物型を無数に生み出す「アルヘノテルス型」、同化現象のみに特化した「コアギュラ型」のほか、羽佐間翔子が戦ったような新種が確認されている。

同化 (どうか)

フェストゥムが他者と一体化し、個体としての存在を消滅させる恐ろしい現象。人間がフェストゥムと接触する事で引き起こされる。同化が行われると徐々に体がフェストゥムのように結晶化し、心も侵食される。症状が進行すると、なにも考えない、なにも感じない意識不明状態へと陥る。さらに同化現象の症状が深刻化すると体中に結晶化が行き渡り、肉体が消失し、存在がフェストゥムそのものと化してしまう。

機動侍ゴウバイン (きどうざむらいごうばいん)

小楯衛の大好きな漫画。作者は大粒あんこで、「少年冒険キング」という雑誌で連載されている。衛はフェストゥムと戦う際、勇気を奮い立たせるために、この漫画の主役ロボットであるゴウバインのヘルメットを自作して乗り込んだ。その際には「ファフナーになる」事による変性意識の関係で、漫画の主人公のような性格へと変貌している。 雑誌類は本来は本島から仕入れている事になっているが、実はAlvisによる出版。作者である大粒あんこも実は衛の父親、小楯保その人で、衛には秘密にしながら漫画を描いている。

クレジット

原作

XEBEC

書誌情報

蒼穹のファフナー 9巻 講談社〈シリウスKC〉

第1巻

(2015-02-09発行、 978-4063765250)

第2巻

(2015-07-09発行、 978-4063765595)

第3巻

(2015-11-09発行、 978-4063765847)

第4巻

(2016-06-09発行、 978-4063906318)

第5巻

(2016-11-09発行、 978-4063906639)

第6巻

(2017-09-08発行、 978-4063907087)

第7巻

(2018-04-09発行、 978-4065113011)

第8巻

(2021-02-09発行、 978-4065223628)

第9巻

(2021-11-09発行、 978-4065257371)

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