史実を基に描かれる、少年期の沖田総司
本作の舞台となるのは幕末の武蔵国多摩郡日野宿と江戸。嘉永五年(1852年)から七年(1854年)までの、少年期の沖田総司(惣次郎、後の新撰組一番隊組長)の二年間を描いている。剣術に天賦の才があった惣次郎は、日野宿で土方歳三(後の新選組副長)と出会い、村を襲った火つけ盗賊を共に撃退する。また、日野宿名主の佐藤彦五郎の道場で、天然理心流の若先生・嶋崎勝太(後の新選組局長・近藤勇)に見込まれ、剣術修行のために江戸に行くことになる。本作は史実を基に、後に新選組の中枢となる3名の運命的な出会いや、江戸での惣次郎の活躍をアクション満載で描いた剣客時代劇である。
SF要素を含んだ異色時代劇
本作は、惣次郎の不思議な夢から始まる。それは見知らぬ男が、「近藤さんも死んだ。新撰組は壊滅だ」と語る夢だった。その男は、後に河原で出会うことになる土方(トシ)だった。その後も、惣次郎は青い目の黒猫と出会ったことがきっかけで、たびたび幻影を見るようになる。例えば「青い羽織をまとった大勢の新選組隊士」や「西洋の部屋でドレスを着ている美女」「血まみれの坂本龍馬」などである。本作は本格的な時代劇でありながらSF要素を含んだ異色作であり、幻影の謎は物語終盤に明かされることになる。
登場人物・キャラクター
沖田 惣次郎 (おきた そうじろう)
武蔵国多摩郡日野宿に住む少年。白河藩藩士で足軽の沖田勝次郎の嫡男。初登場時は9歳。両親は亡くなっており、3年前に江戸から移り、姉のみつ、義兄・林太郎と暮らす。月に一度、日野宿名主の佐藤彦五郎の道場で剣術稽古をしていたが、江戸から来ていた天然理心流宗家三代目・近藤周助やその息子・嶋崎勝太に剣の才を認められ、姉の反対を押し切って江戸の試衛館の内弟子になる。歴史上の実在人物・沖田総司をモチーフにしている。
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
武蔵国多摩郡の農家出身の青年。初登場時は18歳。沖田惣次郎の夢に出てきた青年で、後に河原で惣次郎と出会う。日野宿名主の佐藤彦五郎は姉の夫で、彦五郎の道場にもしばしば顔を見せていた。そこで嶋崎勝太と出会い、江戸の試衛館で天然理心流を学ぶことになる。剣術に優れており、その腕前は勝太に引けを取らないほど。愛称は「トシ」。歴史上の同名実在人物をモチーフにしている。
嶋崎 勝太 (しまざき かつた)
天然理心流宗家三代目・近藤周助の息子。初登場時は19歳。日野宿名主の佐藤彦五郎の道場で沖田惣次郎に出会う。惣次郎の剣才に惚れ、彼を試衛館で預かることになった。天然なところもあるが真っすぐな性格で肝が太い。剣を取れば鬼のように強く、日本一の道場を作ることを夢見ている。歴史上の実在人物・近藤勇をモチーフにしている。