バイオテクロノジーの夜明け
本作は、遺伝子研究を行う「エイス研究所」を舞台にしており、主人公のナオヤはその施設で保安警備員をしている。21世紀に入ってバイオテクロノジーは急速な発展を見せており、それに伴って莫大な富が生み出されていた。ナオヤは研究所を守り、研究員を護衛する役割を担いながら、バイオテクロノジーの世界に関与するようになる。しかし、ナオヤはあくまで警備員で研究者ではないため、バイオテクノロジーに関する知識は乏しく、読者は彼の視点を通じてこの分野を学ぶことができる。また、本作に登場するバイオテクロノジーの要素は実在するものであり、遺伝子界隈の深い事情にも触れられている。
不思議な力を持つ少女
ナオヤは「エイス研究所」で多忙の日々を送っていたが、ある日、所長補佐の真理から少女、セルシアの保護を依頼される。セルシアは生命体の成長を促進するという不思議な力を持っており、その力に目を付けた企業によってバイオテクロノジー関連の研究所に監禁されていた。ナオヤは首尾よくセルシアを助け出すことに成功するが、彼女を守るためにエイス研究所に連れ帰ることを決意。しかし、所長はセルシアをそのまま受け入れることは問題であると判断し、ナオヤがセルシアをナンパして連れ帰ったことにする。そしてナオヤは、セルシアと予期せぬ同居生活を始めることになる。
多様化する遺伝子研究とその問題点
本作の世界において遺伝子にまつわる研究は多岐に渡り、目覚ましい進展を遂げている。病原体の遺伝子解明による特効薬の開発や、遺伝子細胞の培養による移植技術が成功し、一昔前は夢物語と言われていた技術が現在では現実のものとなりつつある。しかし、遺伝子研究には大きな問題があり、特に実施検証に多くの時間を要することが挙げられる。遺伝子の培養や安全性確認には膨大な時間が必要であり、人体実験前には動物実験を行う必要もあるため、実験のための実験が求められている。また経過観察も不可欠であり、技術が完成しても実用化までに10年単位の時間がかかることが一般的である。このため、セルシアの持つ生命成長促進の力はバイオ産業において非常に価値が高く、世界中のバイオ産業から注目されている。さらに、バイオテクノロジーは医療分野だけでなく、遺伝子組み換え作物など農業分野にも大きな影響を与え、莫大な富を生み出すと同時に問題も発生しており、本作はそんなバイオテクロノジーに関してさまざまな角度から切り込んでいる。
登場人物・キャラクター
ナオヤ・グラフィコ
「エイス研究所」で保安警備員(セキュリティガード)を務める青年。エイス研究所所長の甥でもある。黒髪を短く切りそろえ、がっしりした体格をしている。「みんなを守りたい」という信念からこの職業を選んだが、バイオテクロノジーに関する知識は乏しく、専門的な議論にはついていけないことが多い。医療業界特有の問題に直面し、葛藤を抱えることもあるが、それでも「みんなを守りたい」という思いを貫き通している。そのため若手の中では期待されており、所長直々に複雑な案件を任されている。また、年相応に女性に興味があり、巨乳とお尻が大好き。所長補佐の真理(まり)と仲がいいが、彼女の色仕掛けに騙されて毎回面倒な仕事を押し付けられている。
セルシア
イタリア人の少女。年齢は16歳。ふわっとした金髪をストレートロングに伸ばし、碧眼と巨乳の持ち主。お淑(しと)やかで敬虔深い性格で、幼少期は平凡な生活を送っていたが、ある日、生命の変化を促進する特殊な力に目覚める。この力で人の傷を癒やしたり、植物の育成を速めたりすることができ、「奇跡の少女」と呼ばれるようになる。しかし、その力は世界中の研究機関に狙われる原因となり、現在はとあるバイオテクロノジー関連の研究所に囚われている。セルシアの力は、バイオテクロノジー産業において巨万の富を生み出す可能性があるため、彼女は人権を無視された状態で研究に協力させられている。幼少期からの厳しい境遇により、セルシアは自らの運命を受け入れ、自分のせいで争いが生まれるのを何より嫌っている。そんな中、ナオヤに助けられ、エイス研究所に身を寄せているが、そこで自分の力を使わずに過ごすことに罪悪感を抱くようになる。のちに所長の提案で、エイス内部の礼拝堂で働くようになる。セルシアの力は一見万能に見えるが、実際には「促進」であるため、成長に必要なエネルギーは別途必要となる。そのため命にかかわるような大ケガを治そうとした場合、ケガが治る前に体力が尽きてしまうことがある。