おやすみシェヘラザード

おやすみシェヘラザード

女子高に通う二都麻鳥は、ひょんなことから超美人で映画オタクの先輩・箆里詩慧と出会う。映画にまったく興味のない麻鳥に対し、詩慧やほかの登場人物たちが映画のストーリーや感想を語る映画レビューコメディ。また、麻鳥や橋山槇音が詩慧をめぐって争う姿を描いた百合展開もあり、ラブコメ要素も含まれる。「やわらかスピリッツ」で2018年3月から2020年4月にかけて配信された作品。

正式名称
おやすみシェヘラザード
ふりがな
おやすみしぇへらざーど
作者
ジャンル
その他
レーベル
ビッグ コミックス(小学館)
巻数
既刊5巻
関連商品
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あらすじ

ある夏の日、千夜学園に通う二都麻鳥戸付ふらんは、教室で蔵広まおから、女子寮に伝わる13号室の前を通ると髪の長い女性に部屋に招かれ、瞬く間に絡め取られて夢見心地で失神してしまうという噂を聞く。その内容は怖い話というよりもエロい話で、三人は橋山槇音から注意されてしまう。話題を変えようと、麻鳥が自室のエアコンが壊れていることを口にすると、まおはエアコンが直るまで寝る時は自分の部屋に来ればいいと誘う。こうして麻鳥は、その日の夜からまおの部屋で寝ることになり、麻鳥はまおの部屋へ行く途中で寮母が見回りしている姿を見かける。寮の消灯時間後は部屋の移動は原則として禁止されており、見つかれば自室に強制送還されてしまうため、麻鳥は物陰に隠れてやり過ごそうとするものの、近づいて来る寮母に見つかるのは時間の問題であった。だがその時、麻鳥の背後の13号室の扉が開き、箆里詩慧から部屋の中へと引きずり込まれる。驚いた麻鳥は部屋の花瓶の水をぶちまけ、詩慧はびしょ濡れになってしまう。シャワーを浴びると言い残して詩慧は部屋を出ていき、麻鳥は一人13号室で詩慧を待つこととなる。待っているあいだに部屋の様子を見ていた麻鳥は、間違えてテレビのリモコンを触ってしまうが、画面に映し出されたのは何かの映画の濡れ場シーンだった。焦る麻鳥の前に、シャワーから上がってセクシーなネグリジェに身を包んだ詩慧が立っていた。お互いに自己紹介したことで詩慧が先輩だと知った麻鳥は、恐縮しながら友達の部屋に行く途中であったことを打ち明け、部屋を出ようとする。そんな麻鳥に詩慧は、一人寝が寂しいからこの部屋に一晩泊まってほしいと言い出す。麻鳥は昼間に聞いた寮の噂話を思い出し、詩慧の申し出を性的な誘いだと考えながら、期待半分不安半分で詩慧の部屋で一晩過ごすことにする。そして麻鳥は、詩慧に誘われるままにベッドに入るが、そこでおもむろに詩慧の口から語られたのは、映画『裏切りのサーカス』の話だった。麻鳥は戸惑いながらも、詩慧の話を眠らずに最後まで聞いていられたら秘密のご褒美をあげるという言葉にスケベ心を刺激され、最後まで話を聞くことを決意する。(エピソード「裏切りのサーカス」)

橋山と詩慧を仲直りさせるため、二人に話す機会を設けた麻鳥は、橋山がいじめられていたという過去を聞いて力になりたいと考えていた。麻鳥はその話を聞いた時に、橋山から顔が似ていると言われた映画『スターウォーズ』の登場人物・スノークをネットで検索し、その醜い外見に驚愕する。そして麻鳥は、橋山から実はバカにされていたことに気づき、彼女の不実さに憤慨する。さらに以前、詩慧から使用済み下着を貰ったことがあり、それも橋山が詩慧にウソのおまじないを吹き込んだことが原因だったことを知る。橋山をまったく信用できなくなった麻鳥は、今夜13号室で行われる予定の仲直りの会で、橋山から詩慧を守ることを決意する。やがて夜になり、それぞれが13号室に集合する。麻鳥は詩慧から離れようとせず、橋山は瞬時に麻鳥が詩慧をガードしていることに気づく。二人が火花を散らす中、詩慧は麻鳥がパジャマパーティーに浮かれているとカンちがいしていた。突然スケスケのエロ下着姿になった橋山を気にもせず、それぞれの思惑を何も理解していない詩慧は、場を盛り上げるべく『マッドマックス 怒りのデスロード』の話を始める。この映画をすでに観ていた橋山は、詩慧の機嫌を取るために「サウンドエフェクト兼ガヤ担当」を申し出る。初の試みに戸惑いながらも、詩慧は映画の世界観を説明する。詩慧が改造車で走る様子を語り出すと、橋山は「ぶろろろろ、だばだば」という効果音を、敵のボスが現れるシーンでは「ジョー!!ジョー!!イモータンジョー!!!」と声を張って手を振り上げ、詩慧がボスの台詞をしゃべる際には「V8!V8!V8!」と頭を振りながら叫ぶ。話の途中で突然入るエフェクト音と、ガヤエキストラの叫びに呆然とする麻鳥をよそに話は進み、水が降り注ぐシーンでは橋山が狂ったように転げ回り、次のシーンでは橋山が自らの乳房を持ち上げ「おっぱい、びゅー!!」と叫ぶ。すると詩慧は、それを受けて「んー、ンまい!!」とサムズアップ。何がなんだかわからずに呆然とする麻鳥を前に、映画の敵役・イモータンジョーになりきった詩慧を、橋山は恍惚の眼差しで見つめるのだった。(エピソード「マッドマックス ~怒りのデスロード~」)

十吹心は休日にもかかわらず仕事に追われ、千夜学園からかなり離れたファミリーレストランで持ち帰った仕事をしていた。そこに麻鳥、詩慧、まお、ふらんの四人が偶然来店し、十吹の背後の席に陣取る。四人はフカヒレや北京ダックを食べた帰りらしく、十吹は仕事に忙殺されている自らの現状と比較して苛立ちを隠せない。そんな中、まおは詩慧に、まおの母親が感動した泣ける映画のタイトルを教えてほしいと尋ねる。頭に消しゴムが付いていたとのまおの言葉に、聞き耳を立てていた十吹はすぐに『私の頭の中の消しゴム』であることに気づくが、詩慧は『イレイザーヘッド』に間違いないと言い切る。詩慧は初めてこの映画を見た時、怖くて泣いたと説明し、物語の導入部を話し始める。詩慧の背後に座る十吹は、ハリウッド随一の変態監督として知られるデヴィッド・リンチ作品の中でも、特に気持ち悪いとされる『イレイザーヘッド』が、「泣ける映画」として挙がったことに驚愕する。詩慧の話は続き、作中でチキンが踊ったり、仔犬が母犬の乳を吸ったりするシーンがおかしかったと語るため、聞いていた麻鳥とまおはディズニーのようなミュージカル風の場面を想像していた。しかし十吹が思い出すのは、ローストチキンがウゾウゾと動き、不気味なサウンドエフェクトで仔犬が母犬の乳を吸うシーンであった。さらに詩慧は、作中で生まれた子供がムーミンとスヌーピーの中間みたいな姿だったと語り、麻鳥とまおはさらにアニメテイストな絵面を想像する。だが、十吹はその子供の姿が異常にリアルでトラウマとなり、さらに監督のデヴィッド・リンチのインタビューでも、このシーンの撮影方法は語られなかったことを思い出す。赤ちゃんの母親は泣き声に耐えられず家を飛び出し、父親も育児ノイローゼになったと詩慧が話すと、麻鳥は本当に感動的で泣ける作品なのかと疑問を覚える。ここに至り、麻鳥とまおは、この映画が自分たちが望んだ作品ではないと気づくものの、ずっと黙っていたふらんが口を開き、育児ノイローゼを患った父親が暖房用のラジエーターを使うことで『マッチ売りの少女』的な展開になると述べる。ふらんに勢いづけられ、感動的な話の体裁を取り戻した『イレイザーヘッド』であったが、十吹はそのシーンの究極に不気味な幻覚を思い浮かべながらふらんに戦慄する。(エピソード「イレイザーヘッド」)

詩慧はモデルの仕事でやって来たテレビ局の控室で、別の番組の収録に来ていた催眠術士と遊んでいた。催眠をかけられ、親指と人差し指がくっついて離れない状態を詩慧は無邪気に喜び、その様子に気をよくした催眠術士は、詩慧が偶然思いついた「マルコビッチ」という単語を聞くのも、口にするのも恥ずかしくてたまらなくなる暗示をかける。そこに楠間愛生がやって来て詩慧を連れ帰る。帰り際に指が離れるように催眠術を解除してもらった詩慧だったが、もう一つの暗示を二人ともすっかり忘れていた。一方の麻鳥は、橋山が詩慧にきちんと謝りたいという思いを聞いていた。友人のために一肌脱ごうと考えた麻鳥は、橋山を今夜向かう予定の13号室へ誘う。橋山は麻鳥の優しさに感激し、通販で買ったお茶を勧める。麻鳥は出されたお茶を飲み干し、思惑どおりに事が進んでいる現状に橋山はほくそ笑む。そして夜になり、二人は13号室に現れるものの、麻鳥のろれつが回っておらず、ベッドに着いた瞬間眠ってしまう。橋山は詩慧に、これまでの自分自身のセクハラ行動を謝りたいと口にしながら、パジャマを脱いでセクシーな下着姿になる。言葉と行動が伴わない橋山に、貞操の危険を感じた詩慧は映画の話でこの場の空気を変えようと試みる。しかし、よりによって詩慧が今日話そうとしていた作品は『マルコヴィッチの穴』だった。昼間にかけられた暗示のせいで「マルコヴィッチ」という単語を卑猥なものと認識している詩慧は、タイトルさえまともに口にすることができない。詩慧が話さないならと橋山が話をしようとするが、そうすると詩慧の貞操が危ないのは明らかであった。自らの純潔を守るため、詩慧は暗示に負けずに映画の話へと戻し、橋山に黙って聞くように説得する。話を聞いていた橋山は、相変わらず詩慧の説明が下手すぎると感じるものの、物語の途中で「マルコヴィッチ」という単語を言わなければ説明できないシーンとなり、恥ずかしさのあまり悶絶する詩慧を欲情した表情で見つめる。そんな二人の横で麻鳥は目を覚ますが、橋山に盛られた薬のせいでエロスの神様の幻覚を見ていた。(エピソード「マルコヴィッチの穴」)

楠間は寝具メーカー「シャリヤル」からの使いの男性と話をしていた。詩慧の後輩に「二都麻鳥」という女子がいるが、もしすでに付き合いがあるなら離れるように楠間からそれとなく詩慧に伝えてほしいとのことだった。社長であり詩慧の父親からの伝言だと察した楠間は、使いの男性を睨みながら「娘が心配なら自分で伝えろ」と言い放つ。加えて、楠間自身の仕事は「詩慧を芸能界で一流にする」ことであり、余計な些事はいっさい拒否する姿勢を見せる。場面は変わり、詩慧は今度公開される漫画原作の実写化映画の発表記者会見に出演していた。司会からCiel(詩慧)に対して、実写化に際してどのように期待しているかと話を振られ、その問いに詩慧は「ゲロのようになればいい」と答える。予期せぬ答えに会場の空気が固まると、とっさに詩慧は映画『スタンド・バイ・ミー』の紫色のゲロだと説明するものの、さらに会場を困惑させる。詩慧は自らの説明で内容が伝わらなかったことに落胆し、「だったらまぁ、別にいいです」と話を打ち切り、さらに会場の空気を凍りつかせる。楠間は白目を剥きながら意識が遠のきながらも、スタッフからCielの態度を詰められていた。当然ながら帰りの車の中で、詩慧は楠間に激怒される。罰として楠間自ら施術する美容を受けさせられることになった詩慧は、エステに連れて行かれる。施術中、詩慧は痛みに耐えられずに絶叫し続けるが、そのかいあってまるで後光が差しているような美しさで部屋から出てきた。しかし別室に入るや否や、詩慧は楠間に土下座をし、先ほどの自身の失態を詫び、痛い美容を勘弁してくれと懇願する。そんな詩慧に楠間が公演記者会見でのゲロ発言の真意を詩慧に問うと、詩慧は小説が原作である『スタンド・バイ・ミー』を実写化するにあたり、最も感動すべき点は主人公・ゴーディの作り話に出てくる「紫色のゲロ」にあるのだと語る。(エピソード「スタンド・バイ・ミー」)

登場人物・キャラクター

二都 麻鳥 (にと あさと)

千夜学園に通う高校1年生の女子。肩の下まである髪を三つ編みにしている。胸が小さいことを気にしており、周囲の友人たちに巨乳が多いため、女同士であっても裸を晒すことに抵抗がある。恋愛経験はなく、ノンケを自称しているが、箆里詩慧の色香に勝手に惑わされて同性愛に目覚める。初めは二都麻鳥自身の性癖を否定していたが、成り行きで橋山槇音と関係をもってからは自らが百合属性であると自覚し、以前よりも詩慧を性的な目で見るようになる。実は詩慧とは異父姉妹で、詩慧の父親からはひそかに詩慧との付き合いを心配されているが、麻鳥本人は知らない。詩慧と姉妹だと知ったあとも自らの性欲を抑えきれずに思考がおかしくなり、詩慧を妊娠させたいと考えるようになる。橋山の励ましによって最終的に「姉妹百合に障壁なし」という倫理を無視した結論にたどり着いてメンタルを持ち直す。橋山からは「惑星レベルのドスケベ女」と評され、煩悩を払うために山にこもって滝に打たれても効果はなかった。中学時代はいじめを受けて学校に友人がおらず、通っていた塾でなかよくなった戸付ふらんと蔵広まおに支えられ、中学校をなんとか卒業した過去を持つ。そのため、いじめられている人間に敏感で、橋山がウソのいじめ体験を告白した際にも、心から心配して力になろうとした。映画だけでなく創作物全般に疎く、まともに観た映画は『マイティ・ソー』と『君の名は。』だけである。詩慧が語る映画の話をすべて聞いたらもらえるという「ご褒美」に期待して、夜な夜な女子寮の詩慧の部屋を訪れるようになるが、睡魔には勝てず最後まで話を聞いたことはない。眠気覚ましのドリンクで夜に備えるなど、地味に努力家ながら学力は低く、みんなからは千夜学園に合格したのはまぐれだと思われている。詩慧と付き合いが長くなるにつれて遠慮がなくなり、彼女の性格や考え方に呆れ、外見以外のスペックの低さに気づく。それからは何かと世話を焼いてくれる詩慧にまったく期待を寄せなくなるが、自らのその心境を詩慧本人に伝えたことはない。詩慧からは「あーちゃん」と呼ばれている。

千夜学園に通う高校2年生の女子。長い黒髪とスタイル抜群の絶世の美女で、ノンケにもかかわらず男性だけでなく、女性も惑わす色香をまとっているが恋愛経験はない。寝巻きはスケスケのネグリジェや、Tバックなどの... 関連ページ:箆里 詩慧

橋山 槇音 (はしやま まきね)

千夜学園に通う高校1年生の女子。寮で生活しており、二都麻鳥のクラス委員を務めている。ショートカットの髪型で、巨乳の持ち主。クラスに友人は一人もいないが、つねにクールで知的なため、まじめな性格だと周囲からは思われている。しかし中学3年の受験を控えた頃、偶然箆里詩慧と出会ってあこがれを抱いて千夜学園に入学したのち、13号室に足しげく通うという経緯を経て、現在ではガチレズとなっている。自室には詩慧の写真が壁一面に貼られ、まるでストーカー部屋のようになっている。詩慧に気に入られたいがために一日二本は映画を観る習慣をつけ、成績はガタ落ちしたがまったく後悔はしていない。詩慧に体の関係をせまり、絶交されてからも度々アタックし続けるという、不屈の精神力を持っているが全敗している。詩慧の影響から寝る際には、紐のようなセクシーな下着を好んで着ている。麻鳥に嫉妬してウソ情報を流したり、薬を盛ったりして麻鳥と詩慧の関係を邪魔しようとするがうまくいかず、ついには二人に素直に謝ることを決意する。だが、謝ろうと思った日に、橋山槇音自身が仕掛けた薬物によって理性を失くした麻鳥から、半ば強引にレズ処女を奪われる。しかも麻鳥は薬の影響で覚えておらず、自らの初体験を奪った麻鳥を逆恨みし、一度周囲と決別した。のちに偶然映画の影響で攻撃的になっていた際、不審者から攻撃を受けて負傷した麻鳥を見て、その不審者を怒りに任せて殴って撃退したことで仲直りする。しかし学校にはムカついたから殴ったと報告し、自らの行動を美談としない頑固な一面もある。詩慧に惚れているが、あとから現れた麻鳥にその立場を奪われ、物語途中からは「寝取られ属性」と「ドM属性」が追加され、悔しいながらも二人の進展を応援して興奮する変態に進化する。ちなみに詩慧から気に入られるためには、彼女の眠たい話に耐えるだけでなく、知ってる映画の話であれば、ナレーションやガヤの合いの手を入れるが、動きや叫びが全力過ぎて詩慧や麻鳥に引かれている。同じ中学出身の蔵広まおからは「ハッシー」と親しみを込めて呼ばれているが、橋山本人はまおと親しいとは思っていない。

戸付 ふらん (とつけ ふらん)

千夜学園に通う高校1年生の女子。ショートカットの小柄な体型ながら、胸は二都麻鳥よりも大きい。頭脳明晰で、話を的確に伝える能力に長けている。礼儀をよくわきまえているが毒舌家な一面がある。中学時代は麻鳥や蔵広まおと同じ塾に通っていたことで知り合い、現在もクラスメートとしてなかよくしている。箆里詩慧を先輩として扱う一方で、表現力と語彙力にまったく信頼を寄せていない。反対に詩慧からは頼りにされ、失敗できないスピーチの際には、要点と注意書きをまとめたカンニングペーパーを依頼されるほどである。同性愛にも理解があり、麻鳥と詩慧の進展を煽りながらも応援している。漫画や映画などの創作物に造詣が深く、麻鳥と共に詩慧の映画の説明を聞くことがあるが、煽る質問を話の途中で入れたり、間違っていてもわざと訂正しなかったりなど、その場その場を楽しむ悪癖がある。その様子を見ていた十吹心からは、バカばかりの場の会話をコントロールしていると恐れられている。

蔵広 まお (くらひろ まお)

千夜学園に通う高校1年生の女子。身長が高くショートカットの髪型で、身体能力が非常に高い。橋山槇音と出身中学が同じだったが、中学時代はかかわりがなかった。また、中学時代に通っていた塾で二都麻鳥と戸付ふらんと親しくなり、高校に入学してからも同じクラスで仲がいい。だが勉強の成績は絶望的に悪く、ふらんからは「千夜学園に入れたのは奇跡」と評されるほどである。誰に対しても物おじしない豪気な性格で、厳しくクールに注意してくるクラス委員の橋山にもあだ名で接するほどなれなれしい。寮のエアコンが壊れた麻鳥を不憫に思い、蔵広まお自身の部屋で寝るように勧めるなど面倒見がいい。小学生の弟と妹がおり、二人の世話をかいがいしく焼くなど、お姉ちゃんらしい一面を見せる。映画にまったく興味はなく、麻鳥から箆里詩慧を紹介されるまでは映画をほとんど観たことがなかった。詩慧とつるむうちに映画に興味を持つようになり、面白い映画を発見しては麻鳥に伝えようとするが、生来の記憶力の悪さから主人公やヒロインの名をはじめ、タイトルすら正確に覚えていないことが多い。高校ではラクロス部に入部しようと思っていたが、間違ってクリケット部の扉を開けてしまったことで、クリケット部に所属している。ちなみにクリケット競技のマイナーさから、全国で部活として活動しているのは三校のみで、トーナメントで一勝しただけで優勝となる。

楠間 愛生 (くすま あい)

「Ciel」の名でモデル活躍をする箆里詩慧のマネージャーを務める黒人女性。編み込んだ髪を後ろでまとめ、骨太な体型をしている。詩慧の専属マネージャーとして公私共にサポートしているが、実は「アイ」という名で、エステの世界大会において初の三連覇を成し遂げた人物。「美の大魔神」とも評され、美容業界でその名を知らない者はいないほどで、世界中のセレブから引く手あまただった。ちなみに、楠間愛生がCielのマネージャーを務めていることは一般的には公表されていない。実はスラムの孤児だった頃に詩慧の母親に拾われ、面倒を見てもらった恩があり、現在に至っている。人並みに映画は観ているため、詩慧の話にもついていけるうえに長年の付き合いから、詩慧の取り留めもない話を聞いて、何を伝えたいかを的確に察することができる。つねに詩慧のことを考えており、例え雇い主である寝具メーカー「シャリヤル」の社長にして詩慧の父親からの命令であっても、納得できない命令に従うことはない。詩慧の容姿以外の無能さを憂いており、学校などで友人ができても、愛想を尽かされないかと心配している。

十吹 心 (とぶき しん)

千夜学園で教師を務める女性。年齢は25歳。最近は通常業務と残業に忙殺され、まったく映画を観ていなかったが、もともとは年間200本もの映画を観るほどの映画狂だった。ファミリーレストランで持ち帰りの残業をしていた際に、二都麻鳥らがやって来て映画の話をする場面によく出くわしていた。映画知識が豊富なために箆里詩慧の話に突っ込みたい衝動に駆られるが、大人として耐える理性を持ち合わせている。しかし、作品に対して十吹心自身と同様の理解度を持つ戸付ふらんが詩慧の語りを煽る様子を見て、他人が理解することを二の次にして自らが楽しむことを優先させるスタンスに驚愕する。また、愚痴専用のTwitterアカウントを持っており、サービス残業やプライベートの愚痴を発信しているが、ふらんに特定されたことで弱みとなり、のちに詩慧が発足する「映像研究会」の顧問となることを強制される。蔵広まおをはじめとする生徒からは「こころちゃん」と呼ばれて親しまれているが、自らは生徒との距離感を考えて、その名で呼ばれることを拒絶している。

書誌情報

おやすみシェヘラザード 5巻 小学館〈ビッグ コミックス〉

第1巻

(2018-07-30発行、 978-4098600908)

第2巻

(2018-12-27発行、 978-4098601943)

第3巻

(2019-05-30発行、 978-4098603510)

第4巻

(2019-10-30発行、 978-4098605057)

第5巻

(2020-06-11発行、 978-4098606726)

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