概要・あらすじ
無人島不承島にて姉・鑢七実とともに暮らす鑢七花のもとへ、ある日奇策士とがめと名乗る女性が訪ねてくる。彼女の目的は、伝説の刀鍛冶・四季崎記紀が鍛えた十二本の完成形変体刀の蒐集を虚刀流当主へ依頼する事だった。
とがめが頼ろうとしていた虚刀流先代当主は既に他界しており、突然の依頼に戸惑う七花たち。しかし、同じく完成形変体刀を狙う忍者集団・真庭忍軍の1人も、既に不承島へ向かっていた。
登場人物・キャラクター
鑢 七花 (やすり しちか)
虚刀流七代目当主。父・鑢六枝から刀を使わない剣術・虚刀流を受け継ぐ青年。奇策士とがめの依頼により、完成形変体刀と呼ばれる12振りの刀を集める旅へ出る事となった。幼少期より無人島で育ち、一振りの刀として教育された生い立ちから、善と悪の区別さえ付かない程人間的な感情に疎い青年であったが、共に旅をするとがめの影響もあり徐々に改善の兆しを見せる。 愛で動く人間を信用すると当初に述べたとがめに対し度々愛を囁くが、愛とは何かを良く理解していないようである。
彼我木 輪廻 (ひがき りんね)
奥州・陸奥の百刑場に住む仙人。相対する人物の苦手とする物を己の姿として見せる能力を持ち、人を煽り不愉快にさせる言動をする。七花ととがめが出会ったときは二人の苦手とする人物を織り交ぜた姿となった。 そのため見た目と年齢は比例しておらず、自称では300歳を数えるという。四季崎記紀より直接貰ったという「誠刀・銓」(せいとう・はかり)を所有している。
四季崎 記紀 (しきざき きき)
天才的な刀鍛冶で、千本の変体刀を作った人物。そのうちの12本は特に完成度が高く、完成形変体刀と呼ばれる。
錆 白兵 (さび はくへい)
まだ年若く、女性と見まごうほどの美しい青年でありながら、日本最強の剣士と噂される程の腕前の持ち主。七花より以前にとがめから完成形変体刀の収集を依頼されるが、収集した「薄刀・針」(はくとう・はり)に心を奪われ刀を持ち去ってしまう。 「拙者にときめいてもらうでござる」という口癖を持つ。
否定姫 (ひていひめ)
尾張幕府直轄内部監察所総監督。とがめとは天敵の間柄。名前の通りあらゆることを否定する。
鑢 七実 (やすり ななみ)
七花の姉で、ものぐさな弟とは違い働き者。細身な体格の穏やかな女性で、加えて非常に病弱である。しかし、父と七花の稽古を見ていただけで虚刀流の全ての技を習得してしまう程の才能を持ち、長期の動作は向かないものの、弟を軽く上回るほどの規格外の強さを持っている。
凍空 こなゆき (いてぞら こなゆき)
尾張幕府指定の壱級災害指定地域とされている蝦夷の踊山に住む、戦闘経験のない無邪気な少女。住んでいた村が何者かの手によって潰されて以来、洞窟に一人暮らしていた。随一の怪力を誇る凍空一族であり、通常の人間では持ち運び出来ない重量の「双刀・鎚」(そうとう・かなづち)を軽々と振るう事が出来る。 「双刀・鎚」は凍空一族の村長の家の跡から見つかった。
左右田 右衛門左衛門 (そうだ えもんざえもん)
否定姫の腹心にして懐刀の男で、「不忍」と書かれた仮面を付けているのが特徴。否定姫と共同所有という形で「炎刀・銃」(えんとう・じゅう)を持つ。会話には否定形の言葉を使う。
真庭忍軍 (まにわにんぐん)
『刀語』に登場する組織。暗殺専門の忍者集団。一般的な忍者とは違い、集団行動をせず個々で活動をする事が多い。そのため、12人の頭領よって統制されている。
校倉 必 (あぜくら かなら)
鎧海賊団を率いる船長。薩摩にある濁音港を根城に、その運営管理も一手に担っている。また、同港にある大盆(おおぼん)と呼ばれる賭博闘技場における人気の闘士でもある。西洋甲冑のような形状の「賊刀・鎧」(ぞくとう・よろい)の所有者で、生涯人前で脱がないことを心に決めている。
汽口 慚愧 (きぐち ざんき)
出羽の将棋村にある道場にて心王一鞘流十二代目当主を務める女性。四季崎記紀の変体刀を所有してもなお己を見失わなかった唯一の人間で、刀を懸けた対決の条件としてとがめに将棋での勝負を持ちかける。 ひょんな事から七花に刀の扱いを教える事となり、才能の全くない七花をまともに刀を振ることが出来るまでに成長させた。「王刀・鋸」(おうとう・のこぎり)を持つ。
宇練 銀閣 (うねり ぎんかく)
居合い抜きの達人である浪人。鳥取藩・下酷城が因幡砂漠に飲み込まれ、他の者がすべてその地を去っても住み続けている。銀閣が先祖から受け継いだ「斬刀・鈍」(ざんとう・なまくら)は、どんなものでも斬ることの出来る非常に優れた切れ味を誇る。
日和号 (びよりごう)
江戸の壱級災害指定地域・不要湖を徘徊する、かつて四季崎記紀が愛した女性を模して作ったとされるからくり人形。四本の腕を有し、それぞれに一本ずつ刀を携えている。日和号は射程内に入った人間を無差別に襲うよう設計されており、人が不用意に赴けなくなった不要湖は壱級災害指定地域に指定されることとなった。 この日和号そのものが「微刀・釵」(びとう・かんざし)である。
とがめ
七花に12振り存在する完成形変体刀の収集を依頼した奇策士を名乗る女性。尾張幕府家鳴将軍家直轄預奉所軍所総監督という非常に長い肩書きを持っている。奇策師を辞任するだけあり、類いまれな発想力を持ち、七花のサポートを務める。 度々間違った言動をすることがあるが、自尊心が高いため指摘されると羞恥のあまり非常に狼狽える。
敦賀 迷彩 (つるが めいさい)
出雲国三途神社の長を務める女性。背が高く、豪快で大らかな気質の持ち主。迷彩自身もつらい過去を秘めていることから、傷ついた女性たちを己の元で保護している。「千刀・鎩」(せんとう・つるぎ)を所有しており、この刀はその名の通り千本で一本と言われる。
真庭 蝙蝠 (まにわ こうもり)
{真庭忍軍}・頭領の一人。 七花たちの住む不承島までとがめ暗殺の任を受けやって来た。非常に柔軟な身体を持ち、己の体内に様々な武器を隠し持っている。「頑丈さ」に特化した「絶刀・鉋」(ぜっとう・かんな)の持ち主。
真庭 鳳凰 (まにわ ほうおう)
真庭忍軍十二頭領の一人で、鳥組に所属する実質的な真庭忍軍の頭。「神の鳳凰」と呼ばれ、非常に聡明であり、忍びとして高い実力を誇る。効率的な変体刀の収集のため、とがめに同盟の打診をした際には己の腕を切り落とし信用を得ようとしたが、その裏では決して奥の手は見せない狡猾さを持つ。 「毒刀・鍍」(どくとう・めっき)を持つ。
その他キーワード
虚刀流 (きょとうりゅう)
『刀語』に登場する流派。鑢一根を開祖とする、刀剣を使わない剣術流派。一根を始めとする鑢一族は血統的に刀を扱う才能にかけており、このため編み出された流派となる。当主は七代目となる鑢七花。